80.道標
ペガサスが呼んでいた
僕は人々をかきわけ 走っていた
ペガサスは翼を広げ 僕を待っていた
時代というさざ波の中に輝く星々は ペガサスを呼んでいた
暗闇の中に真っ白なペガサスが 淋しそうにしていた
真直ぐな道は どこまでも続いているような錯覚に陥る
僕は叫んでいた
僕の声は果たしてペガサスに届いたのであろうか
ペガサスは僕の声と同時に飛び去った
僕に道標を残して・・・・・
79.魚眼レンズ
空が輝いていた
雲は白からグレーに時と共に 変化してゆく
街は鮮やかだった
モノクロからカラーに時と共に 変化してゆく
ゆがんだ 空気の中に僕はいた
1つの扉は閉じらるが 必ず別の扉が開く
扉の向こうには扉があった
いくつもの扉は色を変え 形を変えていた
熱帯魚は踊っていた 水の中で 交差点で 空の上で
空間は反射していた・・・・・
79.ほのか・・・・・
暗闇の中を無数のライトが泳いでいた
街の風景はプラスティックの月によって映し出されていた
人々は歌を口ずさんでいた
花の色は紫だった
クラクションはいつまでも響き
紺色のゾウは通りを歩いていた
街は ある意味 ジャングルだった
白い橋があちこちで 消え初めていた
ほのかに、星の薫りがした・・・・・
78.き・つ・ね
白い狐は眠れない
静かな月がまぶしくて
白い狐は眠れない
ささやく星がまぶしくて
白い狐は眠れない
さざ波の雨が愛しくて
白い狐は眠れない
緑の木の葉が歌うから
白い狐は眠れない
湖の色を覚えてる
白い狐は眠ってる・・・・・
77.美的空間
暗闇の中に雨が振り始めていた
僕は足早に家に向かっていた
ふと 視線に気付き 足を止めた
マネキンはこちらを見ていた
ショーウィンドはきらきらと輝いていた
人間が作ったものは 美しく見せるために作っていた
果たして それは美しいのであろうか
美しく見せるために作っているものは 美しいのだろうか
僕は きれいだね とつぶやいた
ショーウィンドウについた 雨粒に向かって・・・・・
76.深海魚
明りを読んでいた
明りの中には いろいろな人がいた
僕は 少しだけ 窓をあけて
涼しげな風を向かい入れた
居場所の無い 街が泣いていた
青と赤と緑のブロックは 無造作に並べられていた
芝生の色が変って行くように
湖の色も変って行く
深海魚は浅瀬に向かっている
再び深海に戻る事を知りながら・・・・・
75.夏色の秋
記憶をたどると 夏の風が吹いていた
体にまとわりつくような風は 柔らかく吹き抜けて行く
白いブラウスは もう長袖になっていた
ちょっとだけ けだるい日差しが 雲の向こうにあった
飛行機雲は 細く どこまでも続いていた
青空は何も無かったように そこにある
振り向くと小さな子供達が 遊んでいた
ひまわりは寂しそうに うつむいていた
秋が僕に話しかけていた
元気かい？・・・・・
74.切なさの・・・
空を見上げると 紫だった
シグナルは点滅していた
真っ白な橋は まっずぐのびていた
音がこだましている
立ち止まると 僕の回りの空間は一瞬 時を止めた
行き交う人々の群れから 僕ははぐれていた
足元にはアスファルトがあるだけだった
瞳はシグナルを映している
空は切り裂かれていた
切なさの・・・・・
73.千年の空
もうすぐ 冬が来る
一瞬 静かになる街並みは 何かを語っていた
ふと見上げた空には 真っ白な雲が いくつも浮かんでいた
何も知らない青空は 何処までも青かった
凍心の風が軽く 体をすりぬけて行く
風の行方を目で追いながら ふと振り向くと
今まで そこにいた君は いなくなっていた
幻想は幻想を呼んだのか
その時 空の色も 雲の色も意味をなくしていた
意味があるものは意味を無くし
意味の無いものが意味を映し出して行く・・・・・
72.出会い〜偶然の永遠〜
雨は永遠に振るかのごとく 街に 海に 森に 降り続いていた
森の中 黒い服をまとった少女は 一人 木のしたで たたずんでいた
少女の歌は雨にかき消されていた
少年は街並みを不機嫌そうに眺めていた
少年の歌も 雨にかき消されていた
古めかしい街並みと 森の中の風景
それぞれの風景の中で 歌は聞こえない
雨がやんだときに 気が付くのだろうか
それが 同じ歌であることを
擦れ違い様に気づくのだろうか
出会いは この地上にいる 人数分の1という事を・・・・・
71.音楽
音楽を聴いていた
昔 好きだった音楽を
そして 今も好きな音楽を
秒針は12をさしながら止まっていた
音楽は音の無い部屋に風景を映し出していた
僕はコーヒーを飲みながら 真っ白な部屋にいた
音楽は流れている 流されている
僕と同じ様に
秒針が動き出すと いつしか音楽は消えていた
白い部屋は形を変えていた
そして コーヒーも無くなった・・・・・
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