540.簡単な台詞
簡単な台詞
僕はいつも言わない
簡単な台詞
僕はいつも言えない
高台のコンクリートのかごの中
毎日くり返している　言葉
毎日くり返す　言葉
簡単な台詞　言わない
言えない・・・・・

539.模様
街には色々な模様が舞っていた
自然に生まれたものでは無く
生まれるべくして生まれてきたもの
街の模様には　各々に訳があった
訳を必要としていた
意味が無い事さえ知らずに
僕が　ここにいる訳
街の模様がかき消していった・・・・・

538.僕のいる場所
僕は昔から　ここにいる
僕はずっと昔から　ここにいる
この街に
この風景に
自然に
ごく自然に　紛れ込んでいた
騒音が邪魔をする
何かの邪魔をする
風が吹き抜けると
時が止まった
見えていないものが
見え始める
僕は　ここだよ・・・・・

537.引き目
なんだか憂鬱な夕方
引き目　見えた
ブラウン管に映ってた
退屈な引き目
どうも　おかしい
どこか　おかしい
ブラウン管を見ていた
チャンネル変えようか
もう少し見ようか
どう見ても　引き目・・・・・

536.見知らぬ猫
窓の外で鳴いていた
暗闇の中で鳴いていた
姿は見え無かった
布団の上の猫は
丸くなっていた
気にもとめていなかった
気になった
いつの間にか消えていた
見知らぬ猫・・・・・

535.片翼の天使／泣き声
黒い猫が鳴いていた
黒い闇の中で鳴いていた
片翼の天使は目を凝らしていた
見つけようとしていた
見つからずにいた
黒い猫　暗闇の中で鳴いていた
夜が来る前に見つけたかった
見つからなかった
黒い猫の泣き声だけが
聞こえてた・・・・・

534.流星
小高い丘の上
闇の中　流星が降りしきっていた
冬の空は　空気が澄んでいた
時間を気にしないでいると
星は全て流星になっていた
聞こえない音を立てて
流星が降りしきっていた
闇の中　海の中・・・・・

533.すきま風
すきまが　あいてる　すきまかぜ
ちょっぴり　さむい　すきまかぜ
しめてしまうと　とおれない
あけてしまえば　さむすぎる
すきまが　あいてる　すきまかぜ
ちょっぴり　さみしい　すきまかぜ・・・・・

532.独り言
これ　見た事あるね
返事は無い
これ　前に見たよ
返事は無い
答えない
答えが帰ってこない
独り言ではない言葉が
独り言になった瞬間だった・・・・・

531.動かない
動かない影
動かない街
動かない人
動かない空
街の片隅で鳴いていた
ダンボールの子猫は
もう　いない
動かない
動けない
動けるさ・・・・・