優しい手

 

 

「ただいま・・・」

新一の声に、哀は読んでいた雑誌から顔を上げた。

リビングのドアを開けて入ってきた彼は、ネクタイを緩めるとそのままカバ

ンと上着をソファに放り投げる。

哀は、少し眉をひそめてその行動を見つめた。が、何も言わず立ち上がると、

そのカバンをきちんと立てかけ、上着をハンガーにかけてやった。

「・・・お帰りなさい」

「おう」

新一は、軽く返事を返すと、冷蔵庫からビールを取り出した。プルトップを

開け、おもむろに飲み干す。

・・・まったく。

哀は、彼には見えないようにこっそりため息をつく。

どうやら、今日の仕事で何かあったらしい。さして好きでもないビールを、

あんな風に飲んでいるのがその証拠だ。

世界に名高い名探偵として。28歳の工藤新一は、相変わらずの活躍ぶりだ。

しかし、彼は昔の高校生探偵として、もてはやされた頃よりは格段に変わっ

ていた。

・・・事件の裏の悲哀。

コナンとしての経験を経るごとに、それをどんどんと知る羽目になっていっ

た。

黒の組織が解体して、工藤新一が戻ってきて。

それでも、もう以前のように好奇心だけで事件を解決することは出来なかっ

た。

「・・・疲れた」

ぽつり、とつぶやくと。そのまま、ソファに倒れこむ新一。

目を閉じて、深々とため息をつく。

そのままの姿勢で、どれくらいたっただろうか。

ふと、新一は自分の頭の上に置かれた手に気がついた。

ゆるやかに、優しく。

そっとその手は、新一の頭を撫でる。

少しだけ頭を上げてみると、雑誌を眺めている哀の横顔と、テーブルに置か

れたコーヒー。

視線は、あくまでも雑誌におとして。時々、考えこむような表情も見せて。

それでもその左手は、新一の頭の上に置かれている。

・・・ったく、よ・・・。

新一は、自然にわきあがってくる暖かい感情に身をゆだねる。

いかにも、片手間のようにみえるその仕草。

だけど撫でているその手が、自分のことを心配していると告げている。

 

いつも、自分のそばにいてくれる。唯一無比の存在。

 

「哀〜」

「・・・何よ?」

「いつも、ありがと、な」

「・・・どういたしまして」

 

END


 

久しぶりの新哀です。しかも、なんか短いです()

実は、ものすごく落ち込んだ出来事がありまして。で、ある人になぐさめて

もらいまして。

その成り行きで、出来た話です()

頭撫でてもらうのって、なんか幸せですよねえ(^^)

・・・え?私だけ?

だって私、「なでなで愛好会 会員番号32番」なんですもの♪

↑わかる人には、わかる()

 

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