大地の声
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  1998年5月某日

大地の声

    僕らはどうなるんだろう?

    仲間を守ることも、

    自分の命を守ることもできない。

    こわいよ。いたいよ。

    どうしてこんなことするの?

    君達は、

    仲間を守ることも、

    愛することも、

    自分の命を他の命に託すことだって、

    できるのに。

    僕らは長い時間を使って

    隣の仲間に触れることができる。

    知ってる?

    土の中で起こってるコト。

    足が触れるくすぐったさと恥ずかしさと、

    それを楽しむために頑張って分裂するんだよ。

    僕らの足は伸びるんだ。

    いいだろ?

    これが僕らの絆なんだ。

    僕の足をたどってごらん。

    隣の足と支え合って、

    隣は隣の隣と支え合って、

    ずっと遠くの国までつながってる。

    僕の逆隣の足にまで。

    前だって後ろだってそうなんだ。

    でもこの間からあちこちが途切れてる。

    せっかくつないだのに、

    一瞬だった。

    何だったの?あれは。

    また起こるの?

    パパは相変わらず回りっぱなしで

    ”大丈夫さ。俺が明日を迎えてる”って。

    ママは相変わらずお空とパパの間を行ったり来たりで、

    ”大丈夫よ。私が潤いをあげてるもの”って。

    だから僕らは君達を信じるんだ。

    僕らは君たちが生まれたときから知ってる。

    僕らも君たちも、

    パパに抱かれ、ママに愛されてるんだ。

    君達もきっと仲良しに愛し合えるさ。

    パパを…仲間を傷付けないで。

    僕、聞こえちゃった。

    TVってやつが言ってたんだ。

    ”フタタビカクジッケンガオコナワレマシタ”

    ”カク”ってやつがどうやらあやしいらしい。

    みんなに言ったらね、

    パパは何も言わない。

    ママは優しく笑った。

    仲間はキョトンとする奴もいれば、

    ため息つく奴もいた。

    違うのかなって思ったけど、

    パパが耐え切れず揺れた後には、

    ママがこわい顔になった後には、

    遠くの仲間が消えたって知らせが来て、

    おびえる仲間を勇気付けてて、

    TVから聞こえてくる。

    ”ソクホウデス カクジッケンガオコナワレマシタ”

    ”カクニヨ...” ”カクノタメ...”

    ”カクジッケンハヒツヨウデアルトイ...”

    ”カクコクノ...”

    ”カク”がどんなにエライのか僕は知らない。

    でも、君達は知っているんだろう?

    強いんだろう?

    でも僕らにとってはその価値が分からない。

    だって命を傷付けるものなんだろう?

    そんなヤツ、エラくも、強くも、カッコ良くもないさ。

    あそこで笑ってるタンポポは可愛いよ。

    太陽に恋し続けるヒマワリは気高いよ。

    僕は大好きだ。

    みんなパパとママに育てられた仲間だよ。

    君達もそうだろう?

    カクってやつのイイ所を引き出してやってよ。

    傷付けてばかりじゃ悲しすぎるじゃないか。

    カクだって本当は仲良くしたいんだよ。

    分かるだろう?

    僕らは走っていって抱きしめてやれないんだ。

    カクの心を。

    君達には走るっていう能力があるじゃないか。

    手をつなげたら、

    優しい笑顔を見せてくれたら、

    きっと仲良くなれる。

    分かり合えるよ。

    パパがカラカラに乾くと、

    ママが潤いをあげるんだ。

    ママの機嫌を損ねるとなかなかくれないこともあるけどね。

    パパの渇きが潤うと僕らにくれる。

    僕らはそれで大きくなる。

    カクにもあげて。

    パパとママの優しさを。

    そうすれば分かってくれるよ。

    周りを傷付けなくったって、カクがいることを知ってるって。

    お腹すいてたら、分けてあげようよ。

    ダメなら僕があげるさ。僕はちょっとしかないけど...

    でもちょっとだって分けることができるんだ。

    だからバカにすんなよな。

    忘れないでよ。僕らがいつもそばにいるよ。

    君達だっているんだよ。

    君達の仲間だっているんだ。

    命は大切なんだよ。

    カクは自分の命を泣きながら捨てて、

    たくさんの命を奪って、

    たくさんの仲間を傷付けてる。

    そうなんだろ?なら悲しすぎるよ。

    仲良くしよう。

    そしたら一緒に生きてゆける。

    ケンカしたら、仲直りすればいい。

    お腹がいっぱいになったら、お腹減ってる仲間にあげればいい。

    敵でなくて味方だよ。

    みんな味方。

    パパも、ママも、タンポポもヒマワリも、僕も君も、仲間も、カクも、...

    パパは言ったよ。

    ”みんなの中の優しいキモチを捨てない限り、明日を迎え続けるさ”

    ママは言ったよ。

    ”みんなの中の寂しいキモチがある限り、潤いをあげるわ”

    だからみんな、

    一緒に生きようよ。

    僕らは君達を愛してる。

    忘れないで。

    愛がいつもそばにある。

     


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