読書日記 2003年11月 わーマイブームが止まらない・・・誰か私を止めてぇ〜 |
「ヴァイオリンと翔る」 諏訪内晶子 NHK出版 諏訪内さんは、1990年のチャイコフスキー国際コンクールで史上最年少の18歳で 優勝した(もちろん日本人初)と言う経歴と、その美貌でクラシックに興味がない方でも ご存知の方は結構いらっしゃるのでは。 私もあんまり知らなかった頃でも、ショップでジャケットみて「美人だなー」と思ったことが 記憶に残ってるくらいですもん。 これは彼女の自伝 (それにはまだ早すぎるか・・書いた時点でまだ25歳くらいだったと言うし) ・・・というかエッセイと言うか。 演奏家には、岩城さんみたいにプロ顔負けの文章書く人とか、全く「ですます」調の 特徴のない文章を書く方とか色々いらっしゃいますけど、 この諏訪内さんの文章といったら・・・ 久しぶりに見ました・・こんな几帳面と言うか生真面目な文章を。一時彼女は批評で 「優等生的な演奏」と評されることがあったようですが、まあこの文章だったらさもあらん・・ という感じ。やはり文章には人となりって出ますからねえ。佐渡さんなんか人柄丸出し って感じだったし! でも,決して悪い印象を受けたわけではなく・・むしろ好印象を抱きました。彼女の演奏、 聴いてみたいなって。私はこの本を読み始めた時点でCD一枚も聴いてなかったんで。 (で、ちょっと話が横道行くんですが,読んでる間に気になったんで,彼女のコンクール 優勝時の記念ガラ・コンサートのCD買って聴いたんです。曲はもちろんチャイコフスキー Vn協奏曲。・・・・・これが全然予想とは違っていました。どこが優等生的演奏!? あまりにも私好みの演奏だったので,ますます興味を持って本書を読み進めることが 出来たわけですが・・) 構成としてはコンクールについての私見と体験談、楽器について、ベルクの曲について, 留学生活についてそれぞれ章わけして書いてます。 日欧のコンクールの違いなどや、それにまつわる所感・体験談が読んでいて面白かった。 (しかし,真面目な小学生やなー。まあ,こんな語彙で物事考えてたわけでは ないんだろうが・・) とりわけ、ベルクに関しての章は感動してしまった。是非彼女の演奏するこの曲を聴いて みたい。他、ベートーヴェンのVn協奏曲に関しての話にははっとさせられた。なるほど、 聴いてみて感じた違和感(マイナスの意味でなく)を自分では表現できなかったんだが、 そういうことだったか・・。うーん。これは腰を据えて聴かんと・・(←ひとりごと・・) しかし、普通海外のコンクールで優勝したら、そのままホールで演奏する生活にどっぷり 漬かっちゃうと思うんですが、あえて(ひょっとしたら忘れ去られてしまうかもしれない 危険も承知の上で)そこから一旦降りて、勉強しようと留学するあたり、本当に感心して しまう。とことん真面目だ・・・。結果的に絶対プラスになったと思うが。結局復帰して現在の 活躍があるわけだし。 これは彼女の音楽に対する姿勢に、読んでいる自分の姿勢まで正されてしまう 一冊です。はっとするような表現が何箇所もあり、別に音楽の道を志していなくても 読む人に何らかの感慨を与えるような、いい意味で不器用な誠実さ。 確かに、真面目な印象を与えるので、演奏もそうかなと考えがちになりますが、 (私には執筆時の20歳前半の彼女の生演奏を聴いたことがないので説得力ないかも, なんですが) 先月出たベスト盤を聴く限りでは、確実にテクニックだけではない何かが 彼女の演奏には備わっていたと思います。 この人は、これから先まだまだの可能性を秘めている人だ、と思うと同時に、そんな 人の生演奏をこれからは聴く機会に恵まれるのだ、と思うとうれしい限りです。 まあでも、ベスト盤にミニ写真集や、インタビュー映像の特典DVDがつくなんて この人くらいなものだろうなあ・・(なんか前トリビアにも出させられてたのには吃驚した・笑) 音楽をかなり長くやっていた私の友人は、 先生に「見た目・容姿は演奏家にとって才能のうち」と言われたらしいが、これはほんまに そう思いますね。音楽の才能に見た目なんか関係ないやんけ!といわれるかも 知らんけど、勿論顔の造作のみのことではなくて、内側にある何かが顔に出ていて、 はっきり言って不細工な(失礼!)顔の人でも美しく見える人はいて、そういう意味も 含めてのことですが。 実力なくて顔だけよかったら、実演に接した人は心をうたれないのでは・・と思うので、 顔だけで人気出るってことはクラシック界ではないと思います。 そう考えると彼女の美貌は手放しで賞賛できますね。まだ実演に接したことはないん ですが、さぞかし美しいことでしょう。ああ・・やはり今週末のコンサートは行くべきだな・・ (いや、もう立ち見かS席12000円しか残ってないので躊躇していたのだ・・ でもやっぱ行きたい!シベリウスやるしなー。チケットまだあるかな・・) 2003.11.09 「No.6」 あさのあつこ 講談社 講談社がヤングアダルト(中学校高学年向け?)路線で 新レーベル「YA!ENTERTAINMENT」を設立したようですが、これはその 創刊シリーズの第一弾。野球ものの児童書「バッテリー」とはうってかわって 近未来SFもの!ちょっと驚きました。 しかし読んでみるとあさのさんらしいお話だなあと。これは全6巻予定らしいです。 (間違ってたらごめんなさい・・なんか挟んであったチラシに書いてあったと思うんだけど) テンポよく出して欲しいな!そして新書サイズでもよかったのにな! 950円はちと高め。 2013年の未来都市が舞台なんですが、2013年は本当に近未来だな・・。 10年後に果たしてこんなか?と思うとそうではないような・・。 ドロップアウトした天才少年と、最初っからアウトサイダーの少年の2人のお話。 でもなんかまだ背景に色々あるものが出てきてないので、続きが楽しみ。 しかし・・・あさのさんまたえらい設定にしましたね・・児童書らしからぬ・・へヴィーな。 (これは舞台設定のことではありませんよ) まあこういうきわどいところがこの人の特色 ですかね。続き物なんであんまり色々語れないんですが。最終巻読んでからトータルな 感想かけるかなって感じ。でも2巻目くらいでなんか「おっ」と思うところがもっと 出てこないとありきたりな物語になる予感もします。 うん、そういう意味でも次巻かな注目は。 (なんてえらそうな・・) 2003.11.09 「本棚探偵の冒険」 喜国雅彦 双葉社 著者の本は「月光の囁き」しか読んだことのなかった私・・・ (それってきっとおかしな入り方なんだよね?だって基本的にギャグ漫画家だもんね。 ちなみに「月光の囁き」は、普通の女子中学生が付き合った男の子が実は超マゾで、 女の子が次第にSになっていくって話。実は最後まで読んでない。かなり濃い話でっせ。 面白くなかったから途中で止めたんじゃくて、濃かったんで一休みしてたのだ。 また読もうっと。映画化もしてます。) え?なんでハードカバーなんてだしてんの?と思って図書館で借りて、途中まで読んで 「これは自分で買おう!」と思い購入。 そっか・・・この人こんなに濃い古本収集家になっていたのね。いつのまにやら。 ということでこの本では、著者が思うさま古本(探偵小説に限る)への愛を叫んでいます。 ・・・・こんな本を読んで、本を愛するものの気持ちが高ぶらずにおれようか。 私は興奮しながら読みましたね。まず最初の章は、ダ・ヴィンチの取材に便乗して 乱歩邸に赴くところから始まってるんですが・・・もう文章になってないくらい興奮 してるんですよね・・それが面白くって!後当然のごとく挿絵は自分で書いてて、 それがまたいいんだ〜。他、デパートの古本市に並んでる人のこととか、横溝正史の 角川文庫コンプリ過程とか、貼雑年譜(絶対これ出てくると思った)について、 本棚設計の話、函作り、豆本作り(ものすごい器用!)についてなどなど・・・ もうこの執念ハンパじゃないね!マニア魂炸裂! 小説「兄嫁の寝室」なんかはこの人らしいなあ・・(笑)。 まったく、マンガも書いてなおかつ文章もうまいとは! 私が一番面白かったのは「底無沼」「底無沼?」の章。これは、一度は作家の生原稿を 手に入れたいと思っていた喜国さんが、角田喜久雄の生原稿「底無沼」を手に入れた! 入れたはいいがじっくりと眺めるうちに偽物疑惑が湧いてきて・・・。結局、話は違った ところに着地するのですが(笑)、その追跡過程がすっごい面白かったんですよ! オチもよかったねえー。うまいっ!て感じ。この人センスいいっちゅーか頭ええよなあ。 この話についてはあとがきでさらに言及していて、結局真相は解明されてないんだけど、 そこが古本ならではのミステリーですねほんとに。 いやもう大満足の一冊でした。でもこんな本読んでしまうと、私が近年自分に立てている 誓いが揺らぎそうです・・。それはなにか。私は年をとるまで自分が古書街に本格的に足を 踏み入れることを禁じているのです。(この場合の古書街とはブックオフとかのことでは ありません)なぜなら私には分かっているのです。自分が古本の魅力にとりつかれるで あろうことが。現代書だけでも手一杯なのにそんなことになったら私は破産してしまう・・・。 でも私という人間を20年ともにょもにょ・・年やっていると、自分の未来の行動は大抵読める。 ・・・だからこそ私が本当に年寄りになるまで古書街に姿を表さないかというと、 それは断言できん!というしかないのだね。 (威張るな) あ〜にしても面白い本だった!ちなみにこれ、すっごいこった作りになってまして。 検印付・函あり・月報付。初版限定らしいので、確実に欲しかった私はアマゾンの ユーズドストアで買いました。このへん、素質がありそうな感じです・・。収集者の。てへ。 (どうでもいいが、買った本には月報が2つ入ってた。謎。) 2003.11.30 「ラブ・クラシック」 比古地朔弥 太田出版 全く初買いの漫画家。名前も聞いたことありませんでした。これはジャケ買い・・というか 帯買い。明治から大正にかけて、文学の香り高い麗しの和風ロマンス!ときては。 ツボだわ。 なんか絵が独特。ちょっと高橋葉介みたいなとこが気に入った。 筆で描いてたりするんですもの。 で、お話。私は巻頭作の「背中合わせのリルケ」が一番お気に入り!良いです。 てかかなり名作かも。今年読んだ短編の中では一番。リルケの詩集読みたくなった。 「薬屋小噺」もお気に入り。こういうの描ける作家は貴重だなと思うし、好きです。 愛らしいおじいちゃんv 「ゆく春の」も秀逸。著者の言うとおり、女の子が美形じゃない ところがポイントです。 今年も終盤になって気になる作家が出てきたなあ。太田出版の単行本はコミックでも ちょっと高めで、この本も本体680円なんだけど、買う価値ありですわ。 2003.11.30 |