読書日記 2003年3月 ああー前半忙しかったのだ・・ |
「検察捜査」 中嶋博行 講談社文庫 前読んだ短篇集が面白かったので、長編にも手を出してみた。 今度は女性検察官が主人公。第40回江戸川乱歩賞受賞作品。 なんというか・・・スケールのでかいリクルートと縄張り争いの話だった・・。 こういってしまうと身もフタもないが。 やはり前回同様目の付け所がおもしろい。法曹界全体の話なんだもんね。 そうきたか〜と。そうか、よく考えたらアメリカと違って、ネタにはしづらいよね、 日本の司法制度は。さすが現役の弁護士さんならではの視点で、 面白く読みましたぞよ。主人公と事務官・伊藤君との掛け合い、関係性も面白く。 男性作家の書き方にしては珍しい書き方してたな、と思った。 しかし、一つ難を言うとしたら、オチがあっさりしすぎかな・・と。なんだかでかい 状況の隠れ蓑でごまかされそうだが、流れが安易・・という印象を受けた。 実際ならそんなことあっさりせんやろ〜と思ってしまった。いや、これはもっとうまく 書かれたら、そう思わされないですんでいた、と思うのだが。 でもトータルとしては面白かった。作者の長編は、続き物ではないけど3部作構成で 書かれているらしくって、一番評判がいいのが3弾目の「司法戦争」だそうな。 楽しみ楽しみ。でもその前に「違法弁護」いきます。 あーなんか他の法律ものも読みたくなってきた・・。海外ものとか、名作多いんだよね。 ・・・いかん!また浮気癖が・・! 2003.03.09 「天使な小生意気」1〜17 西森博之 小学館サンデーコミックス ・・・・とうとう感想まで書くとは・・。 いやぁ、最近の日記に書いていた「生まれて初めて自分で買ったサンデーコミックス」 とはこれのことです。前々からタイトルで気にはなっていたのですが、とうとう 読んじゃった・・。この作者の漫画は初めてですが。確か前作のヤンキー漫画が有名な 人じゃなかったかな?まあそれはおいといて。 私は昔っから、こういうめちゃくちゃかわいい女の子がひたすらもてまくる話が 大好きなのだ!そのあらすじと言っても・・天使恵という死ぬほどかわいい女の子 と、めぐ団(ヤンキーが代表。武士やヘンタイや美木ちゃんや普通の藤木もいるぞ) の愉快な仲間達との明るく愉快なオハナシ・・としか。(なんじゃそら) んでこれ笑えるんだよー。間&つっこみが面白いの!絵もすっきりしてて好み。 なんつーか、少年マンガ!の王道って感じだ・・。おもろい。なんか賞も受賞してたかな? 現在17巻まで出ています。正統派な少年漫画を読みたい人にお薦め。 てかこれ読んだよ〜おもちれ〜て話をしてたら 「・・・・ほんとふゆちゃん(仮名)って守備範囲広いよね・・・」 と、しみじみ呟かれたとさ・・。えへへ。(←きもっ) 2003.03.09 「エロイカより愛をこめて」28巻 青池保子 秋田書店 私としたことが、新刊チェックから漏れていたわ・・。と言うことで、今日お出かけがてら 発見、即購入。有名な作品ですが、以前はその絵柄から敬遠していました。が、 友人宅でちらっと読ませてもらったらすーーーごく面白かった(笑えた)のですよ。これが。 未読で、絵柄で敬遠されてる方は是非!この笑いのセンスは素晴らしい・・。 今回は番外編「メテオラな日々」と「ビザンチン迷路 パート1」の2本。 ・・・ジェイムズくんは、いつ頃からか(いや、かなり前からか)手下の働きをいっこも 果たしてないが、伯爵はなぜ雇ってるんだろうか・・謎だ。 本編は、今回トルコが舞台だが、高橋由加利の「トルコで私も考えた」でも書いて あったけど、トルコの人たちって本当に親愛の情の表現が濃くて熱いらしい。(笑) そんなトルコは私が近年最も行きたい国No.1だ。ああ〜まじでいきてぇ〜。 今回のみどころは、 「ロレンスのベッカムヘア」 「黒目がちなトルコ親父兄弟にトルコ式挨拶をされる少佐」 「伯爵のトルコ式挨拶>少佐」 といったところでしょうか。ぷぷ。 「彼らは有能だ。難点は———濃くて熱い」 133P 2003.03.15 「エジプトが好きだから。」 k.m.p(ムラマツエリコ なかがわみどり) 日本交通公社 k.m.pというプロジェクトの2人組が作ったエジプト旅行記。この人たちは イラストレーター&キャラクターデザインの仕事のほか、最近では絵本の創作もしている。 一般的にはやはり旅行記の方が有名かな? とってもかわいらしくほのぼのとしたモノを創られてます。 私はこの人たちの旅行記、とても好き。 本書ではエジプトでの100日間(!)を綴ってます。100日ってすごいよなー・・ 女2人旅で。体壊しそうだ・・。 かわいいだけじゃなくて、すんごく内容の濃いぃ一冊です。読み応えばっちり! これからエジプトに旅行考えてる人にとっては、かなり実用性の高いガイドブックにも なるのでは。ほんと、かゆいところに手が届くっていうか・・。ホテル情報とか、 現地で日本人が遭遇しやすい犯罪・またその対応策なども載ってます。 おもしろいのは、「本気でキレた瞬間」とかの感想を、きたない走り書きのメモとともに 綴ってるところ。臨場感溢れててよろしい。現地の人たちの、いいところだけじゃなくて むかつくところも書いてて、その描写がどちらも面白い。あと、食事のこと、トイレのこと、 各ホテルのお風呂レポ(このへんめっちゃおもろい!)、チカン対策、文化のこと、 旅行中に出会った人たち、忘れられない情景、おかしかったこと・・。ほんとたくさん。 (旅でのひと工夫なんかもすごいためになる!水出し麦茶のパックもっていって、 現地でミネラルウォーター買って麦茶作ることとか!海外に長期で旅行の時はすごい ナイスアイディアだ〜それ!) エジプトの子供たちってこわーい。って事もわかったよ・・。 あと、ボールペン好きってことも(笑) なんか、しみじみと、旅行行きたいなぁ・・って思わせられちゃう。 訪れた国への、愛憎ひっくるめた、親愛の情溢れる1冊。 ええもん読まさしてもらいました。 k.m.pのHPはこちら 2003.03.15 「訪問者」 萩尾望都 小学館文庫 表題作の「訪問者」は、「トーマの心臓」のオスカーが主役。学園にくる前の、幼少時の オスカーと、その父との旅のお話。この作品についての感想は、そこかしこに溢れ返って いるので、いまさら私ごときが書くものでもないと思います。 多分、リアルタイムで「トーマ」を読んでいた人にとってはものすごく思い入れのある 作品では。これにかんしては、いやというほど前評判や書評を目に入れていたため、 気負いがあって素直に読めなかったのです。いや、勿論作品としては好きなのですが。 再読時に改めて味わうことができそうな作品です。私にとっては。 この短篇集、むしろ同時収録の「城」そして「エッグ・スタンド」が素晴らしかった。 特に「エッグ・スタンド」は、萩尾作品の数ある名作短編の中でも1,2を争う特別な 話となりました。 ■「城」 汚いものも綺麗なものも見つめて、黒い石白い石で自分の中の「城」を築き上げる。 ありのままの自分を直視しつづけることの難しさ、辛さ。ラストの余韻がなんともいえない。 こういう少年の心の動きを描かせたら本当にうまい。 ■「エッグ・スタンド」 戦時下のフランス。ユダヤ人の娘と、地下活動家の青年、娘に拾われた少年。 少年にとっては愛と殺人は等価。この少年像・・常に生と死の境界線に立っている かのような、ある種の怪物性を帯びているこの感性を書き出す表現に圧倒された。 もうこれは全編、詩として読まれてもよいのではないか。始まりから終わりまですべての 表現が、絵が、ひとコマひとコマが独立した作品のようにすら思える。 全編暗い中にも透明感があるのが不思議だ。 とてつもなく「深さ」を感じさせる作品です。約100Pの作品とは思えない。 (きっともっと深く洞察できる、色んな意味を持った作品なのだが、初読の今回では 所感を述べるのが精一杯!) 「半神」の時も、短編にしてこの完成度!と驚愕したものだが、その時と匹敵するぐらいの 驚愕と余韻を残した。一本の映画を見たようで、とにかく絶賛するしか他ない作品。 (時事的なことですが・・ 昨日、アメリカによるイラクへの攻撃が始まり、戦争がはじまっているこの状況下で 読んだこの作品の中では、戦争について 「戦争は 人間の心の中にある欲望か何かの炎が 狂ったように次つぎと人から人へ 引火して とめどなく燃えひろがる大火事だ」と語っています。 そのあと少年は「・・・・・大火事は すっかりもえつきないと 消えないね」 と続けるのですが・・・。状況が状況だけに、切実な意味を持って迫ってくる言葉でした。) ■「天使の擬態」 珍しく日本が舞台。教師と生徒がうまくいくまでの物語。と書くといやに通俗的だが・・。 さすがに作者の手にかかると一味違った作品に。進化論の話をちりばめてあるのが 面白い。ラストもよし。 この3篇、殆ど発表が同時期。1年かそこらの期間でこれだけの完成度の作品群を 生み出すとは、驚嘆に値しますね。この時期絶好調だったんだろうなぁ・・ 絵柄も、「ポーの一族」からこのあたりの時期のものが一番好き。 2003.03.21 「よるねこ」 姫野カオルコ 集英社 おっと、これまでとちがって幾分ホラー色(とまではいかないか?)を帯びた短篇集と なっています。しかしやはりこの人の特性がよく出ている、摩訶不思議〜な作品集に なっていて面白いです。こわさ、で言うなら「よるねこ」「X博士」「ほんとうのはなし」 あたりが。「ほんとうのはなし」なんかは都市伝説入ってますが、やっぱりなんかこわい・・。 「よるねこ」は、ある意味百閒ぽいかな。いや、うまいです。 そして私が、「やっぱりこの人面白いなあ」と思ったのは「探偵物語」という話。 結婚まで考えていた彼女に突然別れを切り出され、混乱のうちに探偵事務所を訪れ その理由の調査依頼をしにきた男。探偵は、依頼を受けるが何週間たっても女の素行に おかしなところが見受けられない。しかし調査期間も終わりに近づいた時、探偵は女の ある奇妙な行動に気が付く。・・・といった感じのあらすじなのですが、真相がなかなかね、 「え!?」て感じで。姫野さんらしい。 あと、らしいといえば「心霊術師」が一番「らしい」ですね。妙味。これはかなり好き。(笑) いつもと違った感じで楽しめた、また著者の新たな可能性をみせてくれた(←なんて月並み な表現だ!)一冊でした。うーん、やっぱり面白い・・・。 2003.03.27 「のだめカンタービレ」 1〜5 二ノ宮知子 講談社 おおおおおお・・・!二ノ宮知子いつの間にこんな話を・・! 私この人の本で既読って「トレンドの女王ミホ」と「平成よっぱらい研究所」(←名著) だけだったからな・・・。いや、面白いんだけどさ。 この話は指揮者を目指す天才音大生・千秋とこれまたごっついピアノを弾くのだめちゃん の「クラシック音楽コメディ」(って帯にあいてあったんだ!)。 これはね〜・・オケの場面が素晴らしい!特に5巻はSオケもAオケもかっこよかった! いやぶっちゃけ千秋のラフマニノフが。これは、音楽やってる人には色々と意見があるとこ らしいんだけど、そんな解釈の問題でどうこういう事はないね!要するに漫画って どうみせるか、だもんね。その場で聴いてるみたいに、高揚させられるかどうかだ。 いやーかっこよかった!のだめのピアニカでラプソディー・イン・ブルーは聴いてみたい! (ガーシュインのこの曲は、一回山下洋輔の生演奏《しかも指揮佐渡さん》を聴いてから ものすごく好きになってしまい、そのあとラベック姉妹のも聴いたけどこれもよかった〜v お薦めの曲です!誰でも一回は聴いたことがあるはず・・) あとやっぱ思うのは、このひと脇キャラでもめっちゃ存在感あるように描くので、 そのへんもいいなあ、と。笑えるところはきっちりわらえるし。 (笑いのある絵を描くのがうまい!と思っているので、シリアス部分とかはしっくりこない 感じが、他の作品ではしてたんだけど、今回はあんま違和感ない。 うまいこといっとるな〜。5巻ばっかでアレなんですが、彩子さんのCOSI FAN TUTTE! のとこは感動してしまった・・。) 私のように音楽わからんちんな子にも十分おもしろい。てかやっぱ二ノ宮知子面白い! ああー読後感が・・なんかわくわくするわぁ〜。 2003.03.31 |
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