読書日記 

 2002年12月

今月はあきまへん・・忙しい〜。少ししか読めてないよう・・(泣)



 「記憶の技法」吉野朔実 小学館フラワーコミックス ISBN 4-09-167001-6  
 本体価格505円 


 自分には小さいころの記憶が一切ない————
 ふとした切欠で自分が両親の本当の子供ではないと知った少女が、
 真実を探る旅に出る。


  著者には珍しい(ともいえないか・・?)全編ミステリー仕立ての作品。
 やはり読ませる。謎が解けていく過程は、そんなに吃驚させられる仕掛けが
 あるわけではないが、書き方がうまいので怖さを感じさせる。
 しかしやはりこの人の作品は、登場人物の微細な心の揺れの表現や、
 心理描写にその真価があるというか・・うーん、やっぱ好きだな。
 ラストなんて・・いいねえ。こういう余韻はこの人ならでは。唸るわ。

 2002.12.16




 「自立日記」 辛酸なめ子 洋泉社 ISBN 4-89691-690-5 本体価格1,500円 

  私がこの本を読んだきっかけ・・それは著者の名前・・辛酸なめ子・・。
 こんなPN・・。すごすぎる。
 帯もすごい。「ブリジット・ジョーンズよりも、みじめな女の3年間」。
 これは著者が本名でWeb上連載している日記3年分を編纂・収録したもの。
 作家なのかと思ったら奥付を見ると漫画家さんなのですね。どうやらアート系のようす。
 でも単行本は青林堂から出ている・・。はっとみると最後の方の広告に根本敬の
 単行本が。ぬう・・ガロ系であるとともに電波もちょっとはいってんのか・・?
 (漫画は怖そうだが今度読む機会があれば是非・・)

  さて内容なんですが〜。
 さわやかな日常日記を所望されている方はよしたほうがいいかと・・。
 なんつーか・・負のオーラが。かなりにじみ出てます。そういうのを楽しめる方でないと
 瘴気にあてられるかんじです。ぐったりするのでご注意。
 丁寧な文で綴られている日記なのですが、Gがかかってるというか・・
 ユーモア(黒いけど)もあるのになぜこんなに負のイメージなんでしょうか。
 というか丁寧な口調なので余計怖い。
 下ネタもさらっとしてるのですが、なんというか・・えぐい。静かな暗さを感じさせます。
 なかなか女の人はこうは書かないな・・という書き方をされます。
 中にはweb上では流せるかもしれないけど、本になるときつい・・というかよく
 載せることができたなというような文章もありますので注意。
 UFOとかに関しても、すかして書いてんじゃなくてかなり本気で信じていそうで
 そこがまた・・(震)。
 たまにぷち電波な感じです。

 しかし抑え目の文体でさらりと語る随所が鋭くもありおかしくもあり・・
 なんとも不思議な印象です。表現力はすごいな、と思いました。
 このへんとか別の意味で・・
 ↓
 たとえるなら、男子校に入学したばかりの、痩せた美少年に目をつけた、
 ラグビー部の男臭い上級生が、放課後、新入生を呼び出して何の前触れもなしに
 突然唇を奪ったような衝撃。
 酸っぱい男の汗、汗以外の液体、精と青、そんなものを全て包んだような
 ヨーグルトだった。
 最初はただ吃驚させてそれがだんだん病みつきになるような
 危険な魔力を秘めている。
 題して「俺の味を忘れられなくしてやるぜ」
 90P

 ・・・・うう。こんなヨーグルトは心底いやだ。と共感させてくれた名文でした・・・。うぐ・・。

 なんだかすごい本でした。頑張って生活している様子が手に汗握らせる負の日記を
 読みたい方は是非どうぞ。
 著者の日記サイトはこちら→http://www.alt-r.com/di/toc3-0.html

 2002.12.17



 「インディゴ・ブル−」 やまじえびね 祥伝社Feelコミックス           
 ISBN 4-396-76293-3 本体価格933円
              

  前回の「LOVE MY LIFE」でも女性同士の恋愛を書いていたが、本作もテーマは
 一緒。やはり帯は斎藤綾子が書くか・・(「ルビー・フルーツ」は面白かった)
 異性の恋人がいながらも同姓に惹かれていく小説家の話。
  面白くないわけではないし、(特にこのシンプルな絵柄は好き)全体的には
 好きな感じなのだが、どうにも会話が・・まるっきりドラマみたいで・・
 実際にこんなすかした会話しとるやつらはおらんぞ・・もっとドロドロするはず・・
 と思ってしまうのだが・・いや、違うか。まるっきり台詞みたいなこと喋ってても、
 全然違和感感じない話はあるものね。違和感を感じさせられる時点で、
 読み手の私が作品を読み取りきれてないのか、それとも作者の力量によるもの
 なのか・・分からないが。
  だけど嫌いじゃないんだよこの作品の感じ・・うまくいえないなあ。うーん・・。
 でも次のでたらやっぱり読むと思う。

 2002.12.21



 「海馬が耳から駆けてゆく」4 菅野彰 新書館 ISBN:4-403-22044-4   
 本体価格1,400円

  確か2年ほど前の「ダ・ヴィンチ」のエッセイ部門ランキングで6位くらいに
 挙がってたのを見たのがきっかけで、読み始めたシリーズ。
 その時はタイトルの「海馬」の単語をみて、『確か海馬っていうのは記憶を司る
 脳神経の一部だったよな・・では医学関係のエッセイだろうか?』
 と思って読んでみたのだが、全然内容違ってたという・・。でも違ってて全然OKでした。
 このシリーズはものすごく笑えるのです・・。著者の日常生活や家族のこと、
 旅行のこと、HP作成への道程、など、いろんなことがすごい面白い!
 また文章もうまい。

  この4巻では、沖縄旅行・パリ旅行の話、ボディブレードの話(これ笑った〜!)、
 膀胱炎の薬アレルギーで死にかけた話、ワープロの話、花粉症の話・・・
 と今回もわらかす話がもりだくさんでしたが・・。
 特にワープロのFD読み込み部分が壊れて色んなサポートセンターをたらいまわしに
 される話は・・身につまされたねえ。各メーカーも、古いものの技術者は
 基本的に育てないから、この手のことはたらいまわしにされる運命にあるのだ・・。
 (保守がかかってるのならともかく、そうでなかったら殆ど相手にされないだろうし)
 対応は、そのコールにでた人間にかかってるといえよう。
 何とかしてあげよう・・と思うのなら専門外でも昔の事を覚えている他部署の人間に
 聞いてみてくれようとするだろうし。まあそのへんの
 興味もあって、その章はとても印象深かったわ。オチも面白かったしね!

 にしても著者の家族や親戚一同は何でこんな面白い人ぞろいなんだろー!
 30歳なのに従兄弟一同で川遊びに行って素手で魚を捕まえる特訓を・・なんて
 しないだろ普通。
 あと著者の弟との絡みが面白い!これは読んで確かめて!
 すごいアナーキーな姉弟かも・・・。

 あと花粉症の話・・そうそう、なぜか「ひょっとしたら花粉症かも・・」と周囲に
 打ち明けるとみんな笑顔で「ようこそ!」って言うんだよ・・日本人はみな同じ反応を
 示すのだろうか?
 この話もすごい面白くって・・(←他にいうことないんか!)

 まあ、非常にお薦めのエッセイです。笑いたいときにどうぞ。でもたまに真面目なことも
 チラッとかいてあるみたいだよ・・。

 追記:このエッセイシリーズは読んでいても、本業の小説は一度も
 読んだことがない私。
 というか、前に図書館で探してみたんだけどなかったんだよ・・
 本屋でもあんま見ないし、なに書いてるかわからんし・・ところが今回初めて
 (だと思う)奥付の後に「好評既刊本」と言うかたちで紹介してあって・・
 やっとわかったぞ。なんと新書館から文庫が出ていたとは!
 幼少のころより書店勤務の母の漫画の仕入れを手伝っていた私は、
 「新書館=主に漫画の出版社」(てか主にパームシリーズのイメージ・・)
 という図式がしみついていたので、これはぴんとこないわ〜。思えばこのシリーズ、
 「新書館からハードカバーで出るエッセイなんて、見たことない・・珍しい・・」
 と思いながら読んでいたのだけど。そうかーそうだったのか・・
 文章うまい人なので、きっと小説も面白いのだろうな・・と思うのだけど、
 最近ヤングアダルト系(コバルトとかより年齢層上のものを最近はこう称するのかな?)
 の文庫とかって滅多に読まないので、きっと読む機会ないような気が・・。
 当分このエッセイだけでいいや・・ってこれは著者にしたら本末転倒なのでしょうね・・
 ごめんよう・・。

 「クリスチャンが苦しそうだ・・・・!」
 よく画面を見ると、説明するブルースの横で見本として揺れているクリスチャンの
 顔にはかなり無理がきている。そうとう辛そうである。
 「クリスチャン・・・!」
 文句を言わずに頑張っているクリスチャンがあまりにおかしくて、
 私たちは床に転がって笑った。 
 50P


 2002.12.22



 「ピューと吹くジャガー」4  うすた京介 集英社ジャンプコミックス       
 ISBN 4-08-873353-3 本体価格390円 


  あぁ〜んまってましたぁ第4巻!私が生涯で出会ったギャグマンガのTOPの座を
 守りつづけていた岡田あーみん「こいつら100%伝説」とタメをはれるほどの名作。
 近年稀に見る傑作の第4巻が・・。ふ・・ふふふふ・・。
  ストーリーを説明することはできないんだけどね・・まあ珍笛を愛するジャガーさんと
 ピヨ彦を含む愉快な仲間達の織り成す物語っちゅーかなんちゅーか。(わからんがな)
 ゆっとくけどあほほどおもろいでぇ〜。一時期必ず既刊のどれかを(今日は1巻!とか)
 読んでから眠りにつくというアブナイ習性を私にもたらしたこの麻薬のようなマンガ・・
 そして小ネタの細部まで覚えて人々をかなりひかせたのも記憶に新しいこのマンガ・・
 プリンチョスッペコリソスナ〜ップルル・・ほーら見ずとも書ける・・(コワ)。

  実は、それまでの3冊のあまりのレベルの高さにあまりにも期待が大きすぎて、
 4巻入手時には正直「・・あれ?」と思ってしまったのよ。ちょっと勢い落ちた?と。
 でも、ゆっくり読み返してみるとそうでもない・・んだよね。やっぱおもろいんだよ。
 あんまりにも期待しすぎてたからであって、やっぱアベレージは高いのよ。
 (もっすご本気で語ってる俺。仕事中にも仕事相手とこの話を真面目にしてたという
 恐ろしさ。コワ)とにかく「伝染るんです」とか好きな人は絶対いけると思うんで
 読んでみて。 まっじでおもろいから!
 私1巻読んだとき喉痛めたからね。笑いすぎで(実話)。

  ところでこれに出てくるミス・パンティストッキングに似てるって言われたこと
 あるんだけどね・・ふふ・・男っていっつもそう・・

  ああそれとこれはわかる人にはおもろいと思うんだが・・
 知人とこのマンガの話をしてたとき「あの笛掃除する棒って『冒険野郎マクガイバー』
 って名前なんですね〜しらなかったです〜」って言われたの!!!
 うひゃひゃひゃ!んなわけねーだろ!
 ほんまにとる人がいるなんて・・世の中って不思議に満ちてるよかあちゃん!

 最後に。私は本当にこのマンガがだ い す き で す。
 ジュン市サァァ〜ン!(by父さん)

 2002.12.27
 


 「暗いところで待ち合わせ」 乙一 幻冬舎文庫 ISBN 4-344-40214-6   
  本体価格495円


 ・・・なんだか最近変な名前の作家を選んで読んでいるような気がしないでもないが・・
 気のせいだな。ちなみにこの人は「おついち」と読むそうです。結構有名ですね。
 「GOTH」は今年のミステリランキングのあちこちにランクインしてるし。
 (この人のデビューは17歳!北村薫が褒めてたので覚えていた。すごいなー)
 本書が初読みです。

  あとがきによると
 「この本は『警察に追われている男が目の見えない女性の家にだまって勝手に
 隠れ潜んでしまう』という内容です」 とのことですが・・そのまんますぎます(笑)
 
  なんというか書き手の人柄がうかがえるような暖かい文章を書くなぁ・・と。
 にじみ出てます。なんか。誠実にモノを書き綴れる作家という印象が強い。
 本書は、特にびっくりするようなオチがあるわけでもないが、発想が面白いな。
 他にも評判の高い作品がたくさんあるので、読もうと思います。

 しかしこの人のあとがきは面白い!!なんともいえん・・妙味が・・天然だなこりゃ。

 2002.12.27



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