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 曹操の詩





曹操(一五五〜二二〇) 
字は孟徳。三国時代魏の武帝。
後漢末に黄巾の乱討伐で功を立てると、勢力を拡大し魏王となり、死後に武帝と諡された。
漢王朝簒奪の元凶として悪名が高いが、政治家・軍略家として卓越しており、文学にも造詣が深かった。




短歌行

對酒當歌   酒に対して当に歌うべし、 人生幾何   人生 幾何(いくばく)ぞ。 譬如朝露   譬えば朝露の如し、 去日苦多   去る日は苦だ多し。 概當以慷   概して当に以て慷すべし、 幽思難忘   幽思 忘れ難し。 何以解憂   何を以てか憂いを解かん、 唯有杜康   唯だ杜康有るのみ。 酒を飲んだら大いに歌うべきだ。人生なんて短いものだ。 あたかも朝露のように、ただ過ぎ去る日々のなんと多い事よ。 感情の高ぶるままに歌うがよい。だが、胸の奥底の憂いは忘れようがない。 何によって、この憂いを消し去れようか。ただ酒あるのみ。 ※杜康:初めて酒を造りだしたという伝説の人物。酒の異称。 靑靑子衿   青青たる子(きみ)が衿、 悠悠我心   悠悠たる我が心。 但爲君故   但だ君が為の故に、 沈吟至今   沈吟して今に至る。 幼幼鹿鳴   ゆうゆうと鹿は鳴き、 食野之苹   野の苹を食らう。 我有嘉賓   我に嘉賓有らば、 鼓瑟吹笙   瑟を鼓し 笙を吹かん。 蒼い衿の服を着た学生諸君よ。 わたしは君たちすぐれた才能の持ち主をあこがれる事久しく、今までひたすら思い続けてきた。 鹿はゆうゆうと鳴きかわし、野原のヨモギを食んでいる。 わたしはそのように立派な客人たちとともに、大琴をかき鳴らし、笛を吹いて楽しみたいと思う。