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 蘇軾の詩





蘇軾(一〇三六〜一一〇一)
字は子瞻。号して東坡居士と名乗る。
眉山の人。宋代最高の詩人。
学問に励んで僅か二一才で進士に及第したが、母が没したため喪に服した。
のち鳳翔府判官事に任ぜられた。王安石の新法に反対して度々上書した。
そのため中央を追われ、杭州・密州・徐州など各知事を歴任した。
詩文で朝政を誹謗したとされ御史台の獄に下り、黄州に流された。
のちに哲宗が即位すると名誉回復されて翰林学士・兵部尚書などを歴任したが、
またも朝政誹謗の罪に問われて恵州・瓊州に流罪となり、帰還する途上で没した。
父・蘇洵、弟・蘇轍も傑出した文人で、俗に老蘇・大蘇・小蘇、合わせて「三蘇」と称された。





春夜 

春宵一刻値千金   春宵一刻 値千金 花有清香月有陰   花に清香有り 月に陰有り 歌管楼台聲細細   歌管(カカン) 楼台(ロウダイ) 声細細(サイサイ)、 鞦韆院落夜沈沈   鞦韆(シュウセン) 院落(インラク) 夜沈沈 春の夜は一刻千金の値打ちがある。 花は清々しい香りを放っているし、月は朧にかすんでいる。 歌や管絃でにぎわっていた楼台も、いまやひっそりと静まり返り、 鞦韆(ブランコ)に乗る人もない中庭は、しんしんとふけて行く。

中秋月(中秋の月) 

暮雲収盡溢清寒   暮雲 収め尽くして清寒溢れ、 銀漢無聲轉玉盤   銀漢 声無く 玉盤を転ず。 此生此夜不長好   此の生 此の夜 長くは好からず、 明月明年何處看   明月 明年 何れ(いずれ)の処にて看ん 日暮れ方、雲はすっかり無くなってさわやかな涼気がみなぎり、 銀河には玉の盆のような明月が音も無くさしのぼった。 この楽しい人生、この楽しい夜も永久につづくわけはない。 この明月を、明年はどこで眺めることだろう。