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 陳叔宝の詩





陳叔宝(五五三〜六〇四) 
字は元秀。南北朝時代南朝陳における亡国の天子。
多芸多才であったが、文弱で酒色におぼれ、国政を省みず遂に国を滅ぼした。
宮女や詩人と宴遊に耽り、隋軍が攻め寄せると寵妃と井戸に隠れたが捕らえられた。
その後は虜囚の生活を送り、寂寞とした晩年であった。



玉樹後庭花

麗宇芳林對高閣   麗宇 芳林 高閣に対し、 新妝艷質本傾城   新妝の艷質は本より城を傾く。 映戸凝嬌乍不進   戸に映り嬌を凝らして乍(たちま)ち進まず、 出帷含態笑相迎   帷を出で態を含み、笑って相迎う。 妖姫瞼似花含露   妖姫の瞼は花の露を含めるに似たり、 玉樹流光照後庭   玉樹 流光 後庭を照らす。 壮麗な宮殿、香しい木立は、そそり立つ高殿に向かい合っている。 化粧をすましたばかりの艶やかさは、まことに傾城傾国ともいうべき姿である。 戸に映った影は科をつくって、つと立ち止まり、やがて帷を出ると媚を含んで笑いながら迎える。 仇っぽい女たちの容貌は花の露を含めるに似て、月の光は美しい木立を通して後宮の裏庭を照らしている。