2003/07/21 (月) 喜劇2

(つづき)
そんなこんなで、20年代。
1923年には、「関東大震災」がありますが、これはもちろん1995年の阪神淡路大震災。
1925年には、治安維持法が成立。それから山一証券や北拓、長銀ってことで、すでに「金融恐慌」がありました。1927年。
芥川が自殺するのがこの年です。これは1997〜1998年くらいになるでしょうか。
治維法は、今なら破防法適用、組織犯罪対策法、盗聴法といった一連の治安立法でしょう。
95〜98年までの状況ですな。

この調子で行くと、「じゃあ、今はいつ?」って思うだろうけど、内閣で言えば、29年に成立する「浜口内閣」に
なるんじゃないでしょうか。というわけで、小泉内閣=浜口内閣。この内閣が当時抱えていた課題も似てます。

しなければならなかったのは、さっき言った「金解禁」。これをやれば、日本経済は立ち直ると、
当時、誰もが考えた。今なら「構造改革」がそれでしょうかね。
さらにいうと、金の自由化は、当時の「国際標準」だったので、昨今の「グローバリゼーション」ということにも
なるかな。20年代は、アメリカの黄金時代だったし、90年代もそうです。

首相・浜口雄幸は三越の前のライオンの彫刻に似ていたので、「ライオン宰相」と呼ばれたし、小泉も
「ライオン丸」などと言われてる。支持率もいまだ高い。浜口も世上の期待を一身に集めて人気があった。
こんなことまでもが符合してます。

まあ、中身は金融資本の代弁内閣なんだけどね。その点、大蔵族で官僚丸投げの小泉も同様。
外交は、協調外交。協調というのは、ここでは米英との協調になります。いわゆる「幣原外交」。ロンドン海軍
軍縮条約を批准して、国内の対外硬派から「軟弱外交」と罵られる。
現在もアメリカへの追随や某国に対する強硬姿勢を要求する
論調が小泉内閣に対する批判としてありますが、これがそれにあたるのかな。
国際的には、列強に伍し、「一等国」ってことになってるわけで、夜郎自大
になってたんでしょうね。今でも「経済大国」を引き摺ってるってことでは同じか・・・・。

さて、1929年10月24日、アメリカ、ウォール街と言えば、「世界恐慌」。
この内閣の時です。
この世界恐慌をきっかけに、日本は「広く、深く、かつ長い恐慌」、つまり「昭和恐慌」に突入します。
東北の農村で大根の尻尾を齧る子供や、娘の身売りのビラなんかの写真、教科書で見たことあるでしょ?

■2003/07/20 (日) 喜劇1

まじめな硬い文体は疲れるので、ややスタイル変えます。
とりあえず生きていて何より。世の中サバイバルです。

>この一ヶ月、時給50円にもなりそうなバイトを必死でやって提出したのに

っていうか、そのバイトって、先行きがあるのでしょうか? スキル磨いて、時間が
経てば、時給が一挙に上がるとか、ボランティアじゃあるまいし、凄まじい搾取じゃないの。
賃金の支払い形態って、請負でしょ? それとも後で印税みたいなのが入るのかしらん。

>ディオゲネス君のマンガ書きたいけど、なんといっても
>写真や映像が皆無なので、いまいちイメージが湧きません。

樽の中で目だけが光ってるなんてどう?(怖いな)
子供の頃に読んだ世界賢人エピソード集(なんじゃ、そりゃ)みたいな本の挿絵に、
ディオゲネスがあったけど、なんか髭モジャの、やや小太りなおっさんだったような気が。

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>大人になったら、もっと、楽しい生活が出来ると思っていたんですが

なんとまあ、「右肩上がり」な。高度成長じゃないんだから。

どれどれ・・・・。
せっかくなんで、いいことを教えてあげましょう。

これって、10年くらい前からの私の認識なんだけど、今って、戦前1920年代から1930年代に
かけての状況とそっくりなんですよ、ホント。
最近いろんな論者も少しずつ気づき始めていて、口にするようになってきましたが。

というわけで、歴史をおさらい。歴史、政治経済、苦手そうだけど(笑)。

まずバブル。これが「大戦ブーム」だとします。
大戦というのは、もちろん第一次世界大戦のこと。1914〜1918年ですね。
この時、日本はあまり関係なかったので、対岸の火事ってことで、向こうで戦争してるのをよそに大儲けします。
景気が滅茶苦茶よかった。当時の記録を読んでると、小金を持った、にわか成金がいっぱい出てくるけど、
行動がバブル期の日本人と変わらないから悲しくなる。

で、バブル崩壊。これで行くと、1922年の「反動恐慌」にあたります。
先の大戦景気で、膨れに膨れ上がったバブルが、戦争が終わったってことで、見事にはじける。
この先、日本経済は負債整理をだらだらと先延ばしにし、懸案だった金解禁も先送りして、日本資本
主義は「相対的に安定」していつつも、一方で矛盾を堆積して行きます。
そして、その間、失業率もジリジリ上昇。

2003/07/22 (火) 喜劇3

(つづき)
都市の失業者が帰農、農家の次三男も、当然、職なんかないので、そのまま農村に滞留。農村が過剰人口の
プールになる。まさに「窮乏の農村」。そうした過剰人口の捌け口として、この少し後に「満州」が浮上します。

また、経済・産業政策として、浜口内閣は、「金解禁」から、恐慌を経て、後期には「産業合理化」
へと内閣の政策を転換させます。産業合理化というのは、過剰になり、無駄になった資本を統廃合して、
カルテル・トラスト化を進め、企業内部の生産性を上げて、国際競争力を高めることです。
金融独占資本を中心に、日本経済をスリムアップして、再編成する政策です。

そうだな、現在、この辺りにさしかかっているんじゃないでしょうかね。あくまで直感的に。

その産業合理化の一応の帰結として、31年、「重要産業統制法」が成立するけど、
これは戦時下の「統制経済」、言うなれば、「戦時経済」にそのまま連なって行くことになります。
(統制経済というのは、経済の国家的なコントロールね)

小津安次郎の『大学は出たけれど』は、この時期だなあ。
たしか、あれの舞台は早稲田だったけど、この時期、東京帝大卒の就職率が3割くらいでしょうか。
大学進学率が全然ちがうので、そのまま比較はできないけど、今だったら、さしずめ大学院卒ということ
になるのかな。ちなみに失業率、あてにならない数字で、当時8%くらいです。きちんと統計をとれば、
おそらくもっと行っているでしょう。
これも今と同じだ。今だって本当は10%くらいになるんじゃない?
「サラリーマン恐怖時代」という言葉もありました。

そんなわけで、アメリカ経済も先行き怪しいようだし、やってきますかね、恐慌。
それとも恐慌みたいな破局的なカタストロフィーでなく、ジリジリだらだら、もうそのステージに入ってる?

ところで、こういう状況を、マルクス主義的には、「資本主義の全般的危機」と言います。
この危機を乗り切るために、日米欧の資本主義国は、上記に言ったような、経済への国家介入、
日本だと、経済の「統制」の方途を探るわけ。30年代は、それゆえ恐慌克服のプロセスです。

「経済は自由競争で。国家はそれに干渉してはならない」というのが、資本主義の信条なわけだけど、
それが立ち行かなくなり、以降、「自由主義は終わった」などと盛んに叫ばれる状況が出てくる。
こうしてリベラリズムも排撃の対象になって行きます。

■2003/07/23 (水) 喜劇4

(つづき)
さて、31年には、「満州事変」。周知のように、これは関東軍の謀略。
これで、恐慌によって激発した国内的な矛盾を対外的に発散させるわけで。
現下の状況を顧みるなら、これは何になるんでしょうか・・・・。

32年は、海軍の将校が5・15で決起。理由は「窮乏する農村」を見るに見かねて。
そうしたどん底にある窮乏層の希望の星にならねばならない左翼は、この時点で既に壊滅してます。
1928年の3・15で、共産党は一斉検挙され、一網打尽。
時代は右翼テロの時代だな。政党政治もまともに機能しなくなってます。
政党の凋落ってことでも、大差ないか・・・・。

で、景気が本格的に回復するのは、35年になるまで待たないとだめだったかな。
日本は他国に比して、比較的早く恐慌から脱出するけど、それも軍需に引っ張られる重化学工業化。
ということで、36年、2・26事件。
「今カラデモ遅クハナイ 原隊ニ還レ」「下ル軍旗ニ手向カフナ」
蔵相・高橋是清が殺されたのは、膨張する軍事費を抑えようとしたため。37年には、日中戦争勃発。

ということで、仮に今が、30年代の初頭にそっくりだ、ってことなら、お先真っ暗ですな(笑)。

ところで、あくまでも仮説ですが、ファシズムは、この先、生活がよくなるという将来の見通しが
潰え去った<かのような>とき、中間層や労働者の中から鎌首をもたげてきます。

「もはや、われわれの生活は進歩しない、これ以上よくならない。」

どう言えばいいのかわからないけど、「進歩史観」の打ち止めとでも言うんでしょうかね。
ドイツなんか、まさにそうだね。ドイツの大衆は、20年代には、巨額の賠償支払いで揉め、それにともなう
インフレにあえぎ、世界恐慌後は、ますます深刻化する失業に打ちのめされていたわけで、そんな中から、
ナチスが大衆の支持を得て、政権を獲得することになります。
日本の場合、どうなんでしょう。
よく言われることだけど、「下からの」大衆型というより、軍部と民間右翼、国家官僚がともに手を携え、
「上から」ファッショ体制を推進し、大衆がそれに追随して行く感じでしょうかね。

■2003/07/24 (木) 喜劇5

(つづき)

現在、この国では、嫌中・嫌韓・反北朝鮮が、軒並み大手を振るい始めてますが・・・・。
そのうちアメリカに、頭越しに中国となかよくされたりして、そのまま孤立の途を歩みかねないような気が
しないでもない、こういう状況が続くようであれば。
ただでさえ悪いところに、さらにアジア・東アジアを感情的に逆撫でするようなことをしつつ、目下、新たな
ナショナリズム、ショービニズムの台頭を見ているわけで・・・・。

まあ、上記のようなことは、似てるというだけで根拠がないんだけど、それにしても因果はめぐるって感じだな。
嫌になるくらいだ。

マルクスじゃないけど、

「歴史は繰り返す。と、ヘーゲルはどこかで言っている。しかし彼はこう付け加えることを忘れなかった。
一度目は悲劇、二度目は喜劇・・・・」

ってことなんでしょうかね。
だから、人生を喜劇と感じるのも、ここに由来するのかもしれないですね(笑)。
(引用は正しいかどうかわかんない。『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』というのの冒頭にあります)

歴史を知るって重要です。ただ知るだけでもそれはそれで楽しいけど、まあ、他方、教訓ってことでも。
上記、心のどっかにでも留めておいて下さい。

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というわけで、もう一度。

>大人になったら、もっと、楽しい生活が出来ると思っていたんですが

楽しくなければ、楽しくすればいいんじゃない?
私の場合は、カクメイ♪
(革命は楽しい、っていうか、楽しい革命を、というべきか)
なにが楽しいかって、難しいもんですな。

♯♯
一回に1000字しか入らないんだね。
調子に乗って書いてたら、一気に長くなってしまった。宿題か何かで、年表でも作った気分。
はあ、疲れた。今日はこれぐらいで。日本人のどれくらいが貧乏かは、また今度。

歴史は繰り返す