枯れない花
ずっと無理だと思ってた。
ずっと見てくれないと思ってた。
ずっと手の届かない人だと思ってた。
でも、ずっと好きだったから、自分の気持ちを言葉に出して伝えた。
最初はびっくりした顔してた。でも、すぐに笑顔になって
「俺が言おうと思ってたのに」
そう言って、優しく抱きしめてくれた。
・・・それは去年の事。
彼は最近、すごく人気が出てきた。
連絡も来なくて、会いたいのにテレビや雑誌でしか会えない。
あなたの声が聞きたいのに、あなたの肌に触れたいのに、そう思うのはわがままですか?
ねぇ、仁?あなたは私の事まだ好きでいてくれてますか?
あなたの笑顔は明るい光。とってもまぶしいんだ。
私は葉っぱ。光がないと生きていけない。
でもね?テレビや雑誌の中の笑顔は、『蛍光灯』のような、作られた光。
葉っぱは、太陽の光がないと生きられないんです。
早く会いたい、会って仁の太陽のような笑顔を見たい。
この心が枯れてしまう前に。
今日も日記をつけました。
仁に始めて会った日から、一日も欠かさず書いてます。
うれしかった事、悲しかった事、怒った事、楽しかった事。全てこの日記に書いてるんだ。
ふとその日記を読み返す。1年前は『うれしい事』や『楽しかった事』が多かったけど、最近になってからは『悲しい事』が増えた気がする。
最近は、仁のファンっていう子から、嫌がらせを受ける事もあたりまえになってきた。
でも、負けないよ。私は仁が好きだから、誰よりも好きだから。
ッコン
窓に小石がぶつかった音がした。
「誰!?窓割れたらどうすんのよ!」
なんてブツクサ言いながら、カーテンを開けた。
その、明るい髪の毛は、風に吹かれながらも上を向く
。
「久美子!!」
私の名前を呼んで、夜なのに私に光をくれました。
急いで階段をかけおりて、玄関から飛び出しました。
「どうしたの!?」
さっきは私より下にいたのに、今は見上げないと顔が見れない。
「は?会いに来たに決まってんじゃん。それともなに?久美子は俺に会いたくなかったっての?」
「んなこと、言ってないじゃん!私だって会いたかったもん!!」
「プっ!何怒りながら笑ってんの?」
「えへへ」
「なんだよぉ!!」
「仁に会うと感情がいろいろ出てきて、怒りたいけどうれしいんだよー」
「くっそ、可愛い事言いやがって、キスするぞ」
「はぁ!?」
しかめっ面の私に、無理やりキスしてきた。
・・っもう・・うれしいじゃんかぁ。
「じゃあ、おやすみな。また・・しばらく会えないけど」
「うん。大丈夫。仕事頑張ってね」
「あい。じゃあな。おやすみ」
そう言って、去っていく仁の後姿を見る。
ごめん。仁。ウソついたわ。
今日書いた日記を消して、今の事を書きました。
仁に会えた、うれしいです。でも、うれしくて泣きました。
仁に会うことはうれしいけど、悲しいよ。
だって、また会えなくなるじゃない。次に会うまでが辛いじゃない。
「大丈夫」って言ったけど、やっぱり辛いかも。
でも諦めない。片思いから両思いになったんだもん。会えないくらい我慢できる。
数日後。とんでもない事件が起こった。
あの日の晩、私達が会ってる所を週刊誌に載せられた。
私への嫌がらせはエスカレートして行った。
家から出るのも怖くなって、暗い部屋で一人ぼっち。
また枯れそうだよ。仁。太陽の光を浴びさせて。
携帯を手にとり、メールを見る。
嫌がらせのメールが多いから、最近は電源をつけてなかった。
案の定、ほとんどが嫌がらせのメール。
「私の仁に近づかないで」とか「死ね」とか「ふつりあい」だとか。
でも、その中には仁のものもあった。
「ごめんな」
何で謝るの?
「好きだよ」
私だって好きだよ。誰よりも。
「公園で待ってる」
一時間前のメール。まだいる?ねぇ、信じていいの?
走って、角を曲がれば公園の入り口、ねぇ仁。信じていいの?
「ハァハァ・・」
・・・・いない・・
「っひっく・・う・・ぅ」
涙がこぼれました。もうだめですか?
「うぅ・・っく・・ん・・仁・・」
「あんだよ。おせーよ」
後ろで声がしました。聞きなれた声が。
「仁・・・」
顔が怒ってる。
「まったく。あのカメラマンのヤロー」
「・・・」
「ちゃんと言ってきたよ。付き合ってます。って」
「え・・」
「ごめんな。辛い思いさせちゃってさ。もう大丈夫だから」
そう言って、髪の毛をくしゃってされた。
そして片手で私を包んでくれました。
「はぁー。ほんとごめん。もう辛い思いなんてさせないからさ」
「仁・・」
「なに?」
「好きって言って」
「は!?」
「言ってくれた事ないじゃんか」
「そっか。好き。俺は久美子が大好きです」
「私も仁が大好きです」
「久美子。久美子久美子ぉ><」
「はい?」
「愛してる」
そう言ってまた、太陽みたいに笑ってくれました。
「ねぇ仁。分かった事があるんだよ」
「なに?」
「仁は太陽で、私は葉っぱ。でも葉っぱは太陽だけじゃ育たないでしょ?水も必要なの。
仁が私の名前を呼んでくれる事が、葉っぱにとっての水なんだよ」
「何言ってんの?久美子は葉っぱじゃないよ。花だろ?
もしも、俺が太陽なら久美子を咲かすために笑うよ。名前だって呼びつづけてあげるからさ」
「うん。うん」
「久美子はずっと咲きつづけて?ね?」
それから、数日。嫌がらせも減って来た。
今日も日記をつけました。
今日も仁に会えた。明日も会えるよね。
また、『うれしい事』と『楽しい事』の日記が増えました。
この心は、もうずっと枯れない。
〜あとがき〜
だぁぁぁぁ!!久美子さんこんなんでいいでしょうかぁ!?
あたりまえの関係に似てしまった・・。(てか似たように書いたんだけど)
小説というより、なんか詩って感じ・・。
感想・苦情待ってマス。