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何を隠そう(隠しちゃいないが)ぼくは農家で働いた事がある。なぜに農家なのだと言う愚問は一切受け付けないのだ。

レタスを食べると思い出すあの修行僧のような日々。緑溢れる、いや緑しかない長野県のT農園で働いた悶絶の夏の事である。

朝も早い、いや夜も深まったと言ったほうが適切な悶絶の午前4時、一日が始まる。一日の始まりはこうして俗世間からおもっきしフライングをしてスタートする。
まず、朝の行事に『刈る』と言うオープニングセレモニーがある。このセレモニーには『刈る』とセットの『洗う』、『箱に詰める』、『運ぶ』と言うオプションが残念ながら存在する。ぼくはその最も脇役の『箱に詰め、運ぶ』という主役の『刈る』から最も遠い配役であった。ダンボールにキャベツを詰める1箱18kg、レタス10kg、そしてキングオブウエイトに燦然と輝く白菜22kg、これを3箱担いでおよそ100M運ぶ。詰めて運ぶ、その単純かつ単純なその単純な作業は、例え様のない拷問である。ちなみに1日の出荷量は7〜12tである。

運び終えると休憩である。糞暑い夏の朝にお茶はホットである。何故ホットなのだぁと訴えると体内に吸収しやすいからとのことである。だがお茶はホットだが桃や果物は甘く、体内に染み渡り疲れを癒す。さて休憩は無論つかの間であるから、休憩でありさらに汗を流す作業の目白押しである。

次に『植える』である。これは非常に苦痛である。人指し指で地面を第2関節までブスッと突き刺す。ただ突くのではなく、何千回も突くのである。そして毎日、何ヶ月もである。その数、合計にしてミリオネア、みのさん真っ青の深爪状態確実である。体勢は自由だが立っても寝転んでも地面を指す事ができるわけもなく、かがむという最も腰に悪いポーズである。

そして『抜く』である。もちろん『植える』の逆である。雑草を抜くの『抜く』である。もちろん野球部の新入部員やドラえもんののび太が行う、例の草むしりである。今時、罰ゲームでも行わないこの悶絶の労働を行うと腰はドカンである。

さらにまで言うと、『耕す』と『肥料を蒔く』などの、爽やかなお仕事も日によっては存在する。
一日の最後は、明日の詰める用のダンボールを組立て、夜の8時に終了である。そして最大のクレームはご飯である。レタスサラダはもちろんレタスの味噌汁、天ぷら。エッグレタス。レタスサラダの横にレタスの天ぷらがあった時はドッキリ用のカメラを探すこと間違いなしである。

手のひらと足の裏の筋肉痛に悩ませられながら、こうして農家は皆の日々の食卓を彩るのである。皿に添えたレタスを残す諸君、駄目だよ、もう残しちゃ。一つの単価が安いから、残すんだろうがほんとは手間暇かけて愛情たっぷりで育てられたものなのだ。ぼくが農家だったら1つ5万だゾ。
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A DAY IN THE LIFE
悶絶の夏、農家の夏
春である。一年の中で一番『出会い』が多い季節である。
入学式、入社、クラス替えなど出会いの目白押しの季節、それが春なのである。

出会ってしまうと、必然的にその人の名前を呼ばねばならない。
『田中クン!』と爽やかに呼ぶのもいいが、やはり新たな出会いには『あだ名』、英語で言うとニックネームが必需品である。話は飛ぶが、『必需品』と繰り返し10回言える人がいれば、ぼくは無条件でその人を尊敬するだろう。我こそはという方、ボイスメール下さい。

で、ニックネームだが、こいつはなかなか難しい。
簡単に決まるのは、○本さん、○口さん、ウンコぐらいのものである。このパターンに合致すれば、もれなくあだ名が付いてくる。岡本さん、山本さんなら、おかもっさん、やまもっさん。グレードアップしたところで、おかもっちん、やまもっちんで決まりである。坂口さん、山口さんも同様、さかぐっさん、やまぐっさんである。
これは山本さんが山本であるが故の、運命である。
そして入学式にウンコをした奴は、必ず10日以上『ウンコ』と呼ばれる。これはウンコをした奴の運命(さだめと読む!)である。

ぼくはこれと言ってあだ名のなかった男だが、小学生の頃『バードマン』と呼ばれていた。
別に子供の考える事だから、深い意味はない。バードマン=鳥男ではなく、漫画パーマンでちょいちょい出てくるバードマンが由来である。パーマン1号は主役の少年、2号は猿、3号は女の子、4号はパーヤンこと太った少年。では、バードマンとは誰だッ!!
おっさんである。バードマンとは、おっさんなのである。
つまり、当時のぼくはおっさんだったのである。・・・・世の中、残酷なあだ名もあるものである。

残酷というなら、藤子不二雄である。
ジャイアン、パーヤンと来て、ブタゴリラである。単品のブタでもゴリラでも、これはかなりハードなあだ名である。それがセットとなってブタゴリラである。
当時太っていた人は、暗黙の了解で皆から、ジャイヤン、パーヤン、ブタゴリラと呼ばれ、からかわれたことだろう。どこかで、ゴリライモってのも、いたなぁ。ゴリラとイモかぁ・・・・。きっついなぁ・・・。

さて、世の中では理解しがたいあだ名もある。
そんな代表が堀内孝雄こと「ベーヤン」である。『ベーヤン』、これは『へいヤン』から来たのだろうか。いや、彼は『堀』であっても『塀』ではない。どこから来たのか誠、奇怪である。
また、石坂浩二の『へーちゃん』、山本純一(光GENJI)の『パンジー』も謎である。『おひょいさん』など全く問題外である。

スターにしきのバリに、己で無理矢理『スター』と言い切ってもいいが、一般人ではそうもいかない。
高校時代にK西クンは『おれをハリソン(ハリソンフォード)と呼んでくれ』と熱く懇願していたが、そんな願いも空しく卒業するまでおもっきし見たまんまの『デコ』だった。

外国人のように、『Please Call Me Jhon!』などと言う習慣があればいいが、日本の場合そうはいかない。
[『今日から、おれはJHONだから、みんなJHONって呼んくれよ』なんて言えるわけがない。おもっきし罰ゲームである。
だから、日本人は呼び名が定着するまで、なるべく4月5月は失態を犯さず、慎重に過ごさねばならない。
さもないと、予想すらできぬ事態に陥ること必須である。
Call Me Birdman