BACK
今、テレビを点けると、どこもかしこもW杯。
昨日までサッカー番組なんて見なかったお姉ちゃん達が黄色い声援で日本代表を応援している。お姉ちゃんだけならまだしも、おばちゃんからおっちゃん、ばあ様からじい様まで急に「日本!日本!」って応援するんだから本当に日本人はおめでたい。

中にはユニフォームでフェイスペインティング、旗まで持って「サッカーって手使っちゃ駄目なの?」なんていうお馬鹿さんもいるんじゃないだろうか。

でもそんな日本人のおめでたさってカッコイイ。きっとじい様が「ひっぽん!ひっぽん!あァのど乾いたァ。ばあ様、お番茶」なんて時代もそう遠くはないんじゃないだろうか。

そんなサッカーフィーバーが来る前、ぼくは当時マイナースポーツだったサッカーをしていた。サッカーで青春していた当時の苦い思い出がある。

思春期真っ只中の中学2年、ぼくのサッカーも思春期を迎えていた。
グラウンドの横の小さなテニスコートでスキだったR恵さんがいたからである。
シュートをしてはチラッとR恵さん、シュート、R恵さん、R恵さん、シュート・・。と大忙しの日々の練習であった。だが恋する心とは裏腹に、スキな女性が見ているだろうその時に、普通では考えられない大失態を起こしてしまうのが、世の日本男児の常である。

忘れもしない紅白戦、勢いよく前線に飛び出したぼくに、一直線に大きなパスがシュパパパッと飛んできた。チラッとR恵さんを確認し、一瞬でぼくの脳は複雑かつ根拠なしのぼくの私による俺のための恋の計算式が実行された。
((ここで点をとればR恵さんは間違いなくぼくをスキになる。練習後の夕焼け染まる体育館裏に頬を赤く染めたR恵さん。恋の告白はこのシュートの向こうにあり!!
いざ、参ろうぞ!その恋の彼方へ!!
キーパーよ俺のシュートとは逆方向に飛んでくれィ))
R恵さんからボールへと目を移す。
ボールが大きく見え、次に星が見え、天を仰いだ。
飛んできたボールは思ったよりも早く、その恋する顔面に見事直撃し、R恵さんとの恋まで打ち砕いたのである。

そう考えると日本代表はすごいなぁ。いいプレーの連続だ。彼らの好きな女性は試合を見ていないのだろうか。ガンバレ日本!!
ぼくは高校時代にラグビー部に所属していた。
なぜラグビーかと言うと、単に女にモテるならラグビーと信じて疑わなかったからである。
ラグビー部ならばモテるなどという言う根拠は世に全くないのだが、当時人よりも頭の中が2倍強思春期だったぼくには『ラグビー=モテる。モテる=(自粛)』の方程式が根拠もなくぱんぱかぱーんと解説図付きで掲げられてあった為、鼻息荒く下心丸出しで入部を決めたのである。

『体育会系』。
俗に言う、先輩は神様で後輩はしもべ。『先輩の言うことは絶対』という男だけの王様ゲーム。所属していたラグビー部は、この『体育会系』の匂いがプンプンする場所だった。

グランド整備や練習の用意、声出しなどの暗黙の王様指令はあったが、『ジュースを買って来い、洗濯しろ』とかのパシリ的行為は全くなかった。ある程度、先輩は後輩を同じチームメイトとし愛していたのだろう。
『そんなもんでどこが体育会系なのだぁ』と思ったアナタ、ちゃんと以下の先輩の愛しかたを読んでいただきたい。

ブギーと言う世にも恐ろしいシステムがあった。語源は多分ブギウギだろう。
ブギー前の呼び名はフェステだった。語源はおそらくフェステバルだろう。
広辞苑でブギーを引くとこのようにある。(ウソ)
〜最も危険な遊びの一つで、男としての尊厳、並びにプライドを引き裂く行為。〜

簡単に言うと、ブギーとは先輩達により微動だにできぬほど手足を押さえられ、当人の下半身の見学、撮影並びに接触を行われるという男性生命の危機に曝されるフェステバル行為である。

さてこの行為の何が一番憎いところかと言うと、動けないのは己の手足のみというところである。
つまり脱がされて、真っ赤な顔をし怒って喚いてキレたところで、動かせるのは顔と腰だけである。想像していただきたい実に滑稽である。暴れれば暴れるほど、己の暴れん棒がブランブランとのん気に揺れ、怒ったところでキレたところであまりにも情けなくどうしようもなく、暴れる(腰を振る)ほど先輩には面白いと言う、卑劣な矛盾がまかり通る行為である。

ぼくが始めてブギーに出会ったのは友人K西クンがその餌食となったときである。
ちなみにK西クンと言う男は気合の入ったジャンケンで負けるとレンガを投げて怒り出し、女に振られると我が家の玄関で親指を立て(グーのポーズ)拗ねると言う感情豊かな青年である。
話は戻って、夏の合宿時に疲れて部屋でK西クン達と寝ていたときである。
先輩達が部屋に入り、どれにしようかな♪神様のいうとおり♪と寝ぼけ眼のぼくらを順に指差し、止ったところは残念ながらK西クンであった。
『ギャー』と言う声が聞こえたところで、免れたぼくと友人は巻き添えを喰わぬよう隣の部屋に移り、聞き耳を立てた。
『勘弁して下さい、ほんまに、ちょ、ちょぅ、頼んます、ギャー』と、ついさっきまでスヤスヤと天使の様に眠っていたK西クンは叫びと共に一瞬で地獄へ落ちた。どれにしようかなと言う、単純なその選択によって。
騒ぎが終わった後、K西クンは押入れの布団をロッキーの様に軽いステップ付きで殴り『絶対しばいたんねん』と呟いていた。全く被害者にはとんだブギウギである。
(合宿が終わってK西クンのブギー写真を見ると、丁度先輩のピースの指にK西クンのアレは隠れており、K西クンは一命を取り留めた)

その後、ブギーは何度も開催され、バレンタインデーにチョコをもらった奴や、じゃれてて友人に裏切られた奴、ちょっとイキってる後輩など、主にモテてそうな奴が筆頭その餌食となった。
もちろん先輩と呼ばれる頃には、ぼくたちも今夜の餌食をどれにするかよく神様に聞いたものである。
ブギーというものはその都度、逞しく荒々しくその行為の形を変え、マネージャーの前だけに留まらず、女子バレー部のコート内、普段の教室とその活躍の場をひろげ、オプションも尻の穴に体温計や、エアーサロンパス、練乳と言う掟破りのグッズに彩られた。

今でも、母校ではモテようと入部した若きガッツマンが、弱肉強笑でブギーに出会ってい
るだろう。
いやぁー、伝統って素晴らしい。


余談だが、後輩は卒業式の日だけ先輩をブギる事が許されていた・・・。
ぼくらの代は笑顔の素敵なM口クンが全裸で胴上げされていた・・。
もちろん表情は満面の笑みだった・・。
5Zpe
         
A DAY IN THE LIFE
W杯とほろ苦き青春
伝統ブギウギ