第一印象がいいってのは何をみているんだろう。特に恋の場合。 ぼくの考えうる答えはズバリ外見の容姿である。非の打ち所のないおっとこ前を一見して「うわっ、キモイ。キライだ」と言う女性は、ほぼ皆無に等しい。つまり、外見を向上したいと思うのは、誠正しき感情であると声高らかにまるで第一発見者のように言わせて頂きたいのである。 では、外見向上大作戦をいかにして遂行すべきか。それにはまず外見に含まれる主要素を知ることから始まる。すなわち顔、スタイル、ファッション、髪型の四大勢力を筆頭に挙げちゃいたい。顔とスタイルのゴールデンコンビはなかなかどうして曲者であり、はっきり言ってどうしようもない。だがしかしである。世におしゃれな顔など存在しないのである。顔とスタイルは、小さな努力の積み重ねで美しくなるのだとNHKの教育番組のように無理矢理いって逃げてしまおう。 さて、言いたいことはここからなのである。前文はポイなのである。だから読み返す事は何人たりとも許さないもんね。さて、ファッションとは四大勢力のうちで最も楽なハードルである。買って着る。しかも己で選べるのである。ファッションのおしゃれをお金とイコールにする人が多いが大間違いである。気に入ったものを着ちゃえば似合っているので高けりゃいいってもんじゃぁない。しかしおれはパンツ一丁に靴下とセーターが大のお気に入りなのだぁと張り切っても,小汚いので無論アウトである。自分に合って気に入ったものを小奇麗に着る。これだけで見栄を張らない人は十分なのだ。 さて問題は髪型、かっこよく言うとヘヤースタイルである。これだけは坊主でもない限り、他人に委ねるほかない。昔から好きな女と美容師には想いが伝わらないと誰も言ってないので僕が言っちゃおう。そこだけは切られたくない私のチャームポイントなのよン的な髪の毛も雑誌に目を落とそうものならば、美容師さんは無機質にハサミを投入する。あっと言う間にぼくのわたしのチャームは、もはなウィークなポイントに変化する。しかし自分で切っちゃえばアンビリーバボーな髪型になるのは必須である。 すなわち世に言う、美男も美女も美容師さんに想いの丈を表現できているだけなのである。だから髪型一つでこの外見向上大作戦は成功を修める。ぼくも美容師と想いが一つになればモテてモテて忙しいはずなのだ。あぁモテたい |
毎日、ぼくは埼玉から都内某所のとある会社へ通っている。 通勤は電車を使っており、毎日車両は満員御礼である。 元々、ぼくは大阪市内の出身で電車の混雑には、慣れたもので屁の河童であった。 しかし、上京してからは自信の象徴であった河童のオナラもどこかへ飛んでいき、『満員キライ』と駅のホームを半べそで地団駄を踏みたくなるほど苦手になってしまった。 理由は一つである。混み具合が異常なのである。さらに言えば、混んでる原因の8割がオヤジなのである。毎日、女性の待つ満員電車ならば喜んで早起きし、山の手線を2周ほどしてから通勤するだろう。 しかし、実状はとっつぁんが1畳に100人ぐらいの『イナバの物置』状態で、『降りねば』と言う考えのみが頭を旋回し、この上ない苦痛を強いられる通勤生活である。そして、その吊り輪を持つどころか腕さえも動かせない八方塞の状態で、人の流れに合わせてムーンウォークを40分。これだけで仕事を辞めて帰りたくなる。 さて、前置きはこのくらいにしておいて、つい先日の話である。 その日の仕事を終えて、電車にガタゴト揺られ本を読んでいた。 『だぁくぁらぁ、おではねぇ』と呂律の回らない、明らかに会話でも独り言でもない大きさの声が、耳に飛び込んできた。 本から目を移すと、タチの悪いよっぱらいである。『おでは、いってやったの。ふざげんじゃーネー。はぁはぁ』とアルコール混じりのダミ声が車両内に響いた。 ぼくは、ちらりとおっさんを確認し本に目を落とながら、迷惑だなぁと得意の「迷惑してます顔」を決めた。ここらへんのおっさんを見ながら「迷惑してます顔」をしないところが、ぼくの気の弱い象徴である。だって絡まれたら厄介だもんッ。 案の上、近くにいた「迷惑してます顔」の使い方に失敗した青年におっさんは絡み、 『オメーはこの日本をどーしてぇんだハァ』 と親父は恐ろしい疑問を投げかけていた。 急に日本の将来を尋ねられて即答できる人が何人もいるはずないのに、全くすごい質問である。 ぼくならば、『わしは日本の夜明けは近いとおもっとるっちゃ。だって尊王は攘夷で尊王が攘夷なのだから』と土佐なまりで坂本竜馬ちっくに言ったものの、なんのこっちゃとなるのが関の山である。 ところが、おっさんはとんでもないことを言い出した。 『おれが変えてやるぅ!』と。 ぼくは、本が読めなくなり、しばし考えた。 世間の大人は、やれ政治家が悪い、会社が悪い、教育が悪い、学校が悪いと誰かのせいにしてうっぷんをはらしているが、このおっさんは酔ってはいるけど、非常に迷惑だけど、唐突にして根拠はないけれども、イイ事を言ってる。 現に車両内の冷たかった視線が、その一言で少しあったかい視線に変わったとぼくには見えた。 もしかすると、みんなが前向きに『おれが変えてやるぅ』と言ってみるだけで世の中なんて本当にかわっちゃうんじゃないだろうか。 人間っていいムードが生まれると、いい結果出せるもんね。 |