元気なぼくらの元気なおもちゃ Tough, Tough Toys for Tough, Tough Boys (Will Self)
2006年05月 河出書房新社 <奇想コレクション>
<内容>
「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」
「虫の園」
「ヨーロッパに捧げる物語」
「やっぱりデイヴ」
「愛情と共感」
「元気なぼくらの元気なおもちゃ」
「ボルボ760ターボの設計上の欠陥について」
「ザ・ノンス・プライズ」
<感想>
これは私の嫌いなたぐいの文学作品集であった。近代的なアメリカの文学(っぽい)小説を読むと、ドラッグに溺れたままの視点でセックスや日常を描くというような作品をよく見かけられる。そういう視点で描かれた作品というのはどうにも好きになれない。この作品集も大半がドラッグとセックスについて書かれたもので、本書を読んだ事によって感じ入ったというようなものはほとんどなかった。<奇想コレクション>の中では珍しく外れといいきれる作品ではないだろうか。
それでもその中で少しは面白く感じたのは、「虫の園」と「愛情と共感」。
「虫の園」は周囲に潜む虫によって精神をやられていく男が描かれており、これで精神をやられておしまいというのであれば珍しくないのだが、その壁を越えて虫との共生、さらには・・・・・・と行き着くところまで行ってしまっている。
「愛情と共感」はSFチックな恋愛物語で“エモート”という自分の分身のような存在を創りだす着想がなんともいえない。また、ラストは皮肉がきいたオチとなっており、なかなか楽しませてくれる作品であった。
と、全体的には面白いとは思いがたい作品集であったものの、あとがきを読んでびっくりしたのは、本書に納められている作品はウィル・セルフが描く作品のなかでもわかりやすいものばかり集めたのだということ。いや、この作品集でも十分に難解であったような気もするのだが・・・・・・