ジャック・グラス伝 −宇宙的殺人者− Jack Glass (Adam Roberts)
2012年 出版
2017年08月 早川書房 新・ハヤカワ・SF・シリーズ5034
<内容>
悪名高き犯罪者、ジャック・グラスが行く先々で犯罪を起こす。囚人として閉じ込められた小惑星からの脱出劇、地球の重力下では持ち上げることのできない凶器による犯罪、弾丸が見当たらないすさまじい威力による謎の銃撃事件。ジャック・グラスが巻き起こす(?)数々の犯罪の真相とは!?
<感想>
最初に本格ミステリばりの読者への挑戦のようなものが載っていたので、SFミステリとして期待したものの、最後まで読むといまいちな内容という感じ。途中までは結構期待させてくれていた分、残念。
「第一部 箱の中」は、小惑星に閉じ込められ刑期を務めなければならない囚人たちの様子を描いた作品。その後、彼らの運命はどうなるのか? そしてそこから脱出できるものはいるのか? というようなことを想起させる内容。描写は色々な意味でグロテスクであるのだが、この作品の中では一番面白かった。前代未聞の脱獄方法もSF作品ならではのもの。
「第二部 超高速殺人」は、場面が一転し、ミステリマニアで資産家のお嬢様が暇つぶしに、不慮の死を遂げた使用人の死因について調べるというもの。始まりは面白かったものの、中身は微妙。しかも、この辺から最初の“読者への挑戦”の内容がうやむやになってしまっているような。ちなみに、この作品の途中から第一部での物語と話がつながりはじめ、連作小説のような形式になってゆく。
「第三部 ありえない銃」であるが、一見不可能殺人をうたっているものの、SF的な設定であれば、ある意味なんでも可能という気がしてしまうので、不可能性も薄れてしまう。まぁ、それでもここで一連の物語としての決着をちゃんとつけている。ただ、ジャック・グラスの事件に関わる動機を目にした時は、一気に興ざめしてしまったのだが・・・・・・