一九八四年 NINETEEN EIGHTY-FOUR (George Orwell)
1949年 出版
2009年07月 早川書房 ハヤカワepi文庫(新訳版)
<内容>
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは、真理省記録局に勤務し、歴史の改ざんを行うという仕事をしていた。ウィンストンは、完全に管理される生活と貧しい生活に不満を抱き、今の社会体制に不審を抱くようになってゆく。そうしたなか、美女ジュリアと出会い、恋に落ち、隠れて奔放な生活を送り始めることとなる。社会体制に反する生活を送りながら、ウィンストンは積極的に体制に反する行動に手を染めようと決意するのであったが・・・・・・
<感想>
名前は聞いたことがあるが触れたことさえなかった作品。新訳版が出たののをきっかけに購入して(といっても既に7年前に出た積読の書)読んでみた。ブラッドベリの「華氏451度」のような感じなのかなと思っていたのだが、それよりもさらに政治色が濃い作品。
近未来の世界を描いたという設定ゆえにSFという見方もあるのかもしれないが、これは文学作品といって過言ではなかろう。エンターテイメント性を排除したガチガチの全体主義という恐怖政治の世界を描いた作品である。
最初は虐げられていたものが徐々に希望を見出していくという作品なのかと思っていたのだが、そんな甘さの欠片も感じさせない展開が待ち受けている。そんじょそこらのホラー作品よりも恐ろしい現実的に有りうる恐怖を描いている。特にこの2016年の時代に読んでもこうした恐怖政治が行われていた国がかつてあり、現在でもこういった国があると容易に想像できてしまう。ゆえに、単なる空想小説ではなく、ノン・フィクション小説のようにさえ感じられてしまうのである。
何にせよ、ものすごくインパクトのある作品だなと。こうした作品を自由に手に取り読める喜びを我々はかみしめなければならないのかもしれない。