宇宙軍士官学校−前哨−  内容・感想

宇宙軍士官学校 −前哨− 1

2012年07月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 21世紀初頭、人類は初めて異星人を迎えることとなった。友好的な異星人の強大な力を目の当たりにした人類は、自らをひとつの種であるということを自覚し、地球統一への道を歩み始めた。そうしたなか、異星人たちから要請がなされた。それは別種の異星人たちと戦うための地球軍を、15歳の子供たちにより構成し、組織したいと。その前に、15歳の子供たちを教育するための教官を人類から選出し、まずは育成したいというのである。その人選のひとりに選ばれた治安維持軍出身の日本人、有坂恵一。彼は入所早々、宇宙軍機動戦闘部隊に所属していたリーという男と揉めることとなるのだったが・・・・・・

<感想>
 最近、ハインラインの「宇宙の戦士」を読んだせいか、この作品のタイトルが気になり、読んでみようかどうか迷っていた。そうして、手によって読んでみることとなったのだが、一瞬ではまってしまい、あっという間に一気読み。久々に“はまった”と言える本に出会えた感じ。

 内容は、過去の色々なSF作品の良いとこ取りをしているかのようなもの。前述した「宇宙の戦士」や、クラークの「幼年期の終わり」とかを思い起こさせる。そこに日本人好みのゲーム性を用いて、士官候補生のサバイバルゲームがなされていく。

 主人公は柔軟な考えを持つ(その割には老成した)日本人の有坂恵一。彼が同じ士官候補生でアメリカ人のリーを中心としたグループと確執を繰り返しつつ、成長し、参謀としての素質を開花させる様子が描かれている。教訓めいたことが多く、多少説教くさい気もするが、そこは士官学校ゆえに当たり前のこと。意外とそうした教訓に身をつまされたりして、己を省みてしまったりもする。

 何冊くらいまで続くのかわからないが、この作品だけでは数多くの謎が残されたまま。しだいにそれが明らかになりというか、士官候補生の面々と有坂恵一が真実を見出すこととなっていくこととなるのであろう。見どころ満載の作品。次巻以降が楽しみである。


宇宙軍士官学校 −前哨− 2

2012年11月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 40名に絞られた士官候補生たちは、有坂恵一を船長とし、宇宙戦艦アルテミスに乗艦することとなる。彼らは実践を想定した訓練航海を行うこととなったのだ。もし、訓練中に“死亡”とみなされるような状況となれば、12時間の休眠再生後、記憶が削除された状態で新人として部署に復帰することとなる。そうした条件の中、有坂らに過酷な事態が次々と襲いかかり、その対処に忙殺されることとなる。

<感想>
 1巻を読み終えたのち、すぐに2巻を読みたいあまり購入してきてしまった。こんな風に感じる作品もめったにない。現在では3巻まで出ているので、そこまではすぐに楽しめるのだが、それ以降は待ちわびる日々が続きそうだ。

 今回は、まるで「エンダーのゲーム」のような展開。実際、乗組員たちも「エンダーのゲーム」のような展開を疑いつつ、行動を進めていくこととなる。このシミュレーションの真意は何なのか? 実際に自分たちは戦っているのか? それともあくまでもシミュレーションの中のことなのか? そうした乗組員たちの疑いをよそに、過酷な事態が次々と戦艦に襲いかかる。

 彼らはゲーム・オーバーや疑似的な戦死を繰り返しつつ、難解な状況を回避し、戦闘の真の目的や意義へと進んでゆく。ただし、あくまでも進んでいく途中であり、彼らが真相にたどり着くのはまだまだ先。この作品では疑似的シミュレーションの条件を知りえたのみという感じ。さて、次巻では何が明らかになるのか? とにかく先が気になって気になってしょうがない。


宇宙軍士官学校 −前哨− 3

2013年04月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 40名の士官候補生達に試練は続く。宇宙戦艦アルテミスにて、実践訓練を行っていたと思いきや、すぐに次のステップとなる艦隊戦が行われることに。ひとりひとりが艦隊を指揮し、敵と戦闘を繰り広げることとなるのだが・・・・・・。一方、世界各地では、士官学校で学ぶこととなる15歳の少年少女たちの選抜試験が行われていた。

<感想>
 先週1巻2巻を読み、今週はすぐに3巻を読了。こうなると次巻の4巻が待ち遠しい。次は半年後くらいか?

 士官候補生達の戦闘は終わらず、次々と過酷な戦闘が繰り返されることに。そんな中、彼らは自分たちが本当に戦っているか? それともこれはシミュレーションなのかという疑いを抱き続ける。そうして、今回の巻では、その回答が教導者から与えられることとなる。さらには休む間もなく、彼らの前に15歳の少年少女たちが現れ、一人につき20名ずつがまかされることに。

 今回の巻までで、ある程度の謎が明らかにされたかのように思われる。ようするに、これで序章が終わったということなのであろう。今後は、すぐに異星人との戦闘というわけではなく、まずは15歳の少年少女を特訓していくということになりそうだ。そこからどのように物語が派生していくのかが興味深い。そして、少年少女たちが成長した時、最初の士官候補生であった40名はどのような処遇がとられるのであろうか。案外、少年少女たちが育ち切った時点で、話が終わってしまうとか!?


宇宙軍士官学校 −前哨− 4

2013年11月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 世界各地で地球侵略から防衛するためのコロニーや都市などの建設が急ピッチで行われるなか、士官学校の教官や生徒たちも休む間もなく厳しい訓練をつづけてゆく。練習生たちは、かつて教官たちが訓練を行った機動戦闘艇を利用した訓練を行うこととなる。そこで、ひとりひとりの個性が浮き彫りとなり・・・・・・

<感想>
 久々というほどでもないのだが、待ちに待った4巻が刊行された。どんどんと新たな訓練が行われつつ、じわじわと地球侵略の足音が聞こえ始めてくる内容。

 今作では、主人公の有坂らが1巻にてふるいにかけられた訓練、機動戦闘艇を用いての場面が再現される。その訓練が行われることにより、練習生たちの個性が見え始め、教練を行う教官たちも力が入り始める。

 今までの印象では、教官となった者たちは、戦闘になったらお役御免で、現在教練を行っている15歳の少年少女が活躍して、ということになりそうだと感じていた。しかし、徐々に物語が進むにつれ、現在教官役となったものは、戦闘が始まればそれぞれの分隊をまとめる役を担い、その実地訓練を自ら行っているというように考えられるようになってきた。

 何しろ、実際に異星人たちと本格的に戦えるものは地球上では少数。それであるならば、教官たちがお役御免というような、そんな余裕は決してないであろう。そして、それは士官学校の選抜から外されたリー(1巻に登場)の存在にしても同様のことが言えるのであろう。

 当初、教導者たちが考えていた時期よりも、開戦の時期が早まっているということが、物語からとらえられる。教官や練習生の訓練の進み具合など関係なく、ひょっとしたら次巻あたりから開戦が始まってしまうこともありえそうな・・・・・・


宇宙軍士官学校 −前哨− 5

2014年06月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 過酷な訓練を繰り返す士官学校生であったが、そんな中、緊急警報が鳴り響く。粛清者の襲来! それは教導者の予想よりも早いものであった。今回の襲来は探査機のみで、なんとか退けることができたが、これから戦線が本格化してくることは間違いない。現状では防衛するための艦隊数が少ないという事実を教導者から知らされる地球軍。その装備を補うために、先行指導種族であるケイローンに助けを求めることを提案されることとなり・・・・・・

<感想>
 敵の襲来! といっても単なる探査機? と思いきや、最新鋭の探査機でとんでもなく強力!! そんな探査機であったが、復活のリー中尉の活躍によりなんとか退けることに成功。そして、そこから今作から次作以降にかけての新たな流れへに突入していく。今回は、その間のプロムナード的な巻ともいえよう。

 新たな展開となるのは、地球人たちが教導者から地球を守るための艦隊数の少なさを指摘されること。教導者の支援を受けても少ない故に、彼らはさらに上位に位置する種族であるケイローンに助けを求めることとなる。ただし、地球人はケイローンに対して、人類が連合軍において有能な存在であるということを証明しなければならない。ケイローンがどのようにして人類の力を図るのかはわからないが、有坂恵一らは、ケイローンの力を求め、新たな宇宙へ旅立つこととなる。

 今までは、地球周辺で訓練を繰り返していたゆえにわからなかった、宇宙全体を巻き込む大戦争の様相。その規模の大きさが、外宇宙へ出ることによって徐々に気づかされる地球人類の面々たち。そのあまりに壮大な流れに翻弄される中、主人公らはあきらめずに戦い抜くという気持ちを持ち続け、人類の存亡をかけた戦いに臨むことを決意する。そうしてケイローンという未知の存在と、どのようにして交渉が進むこととなるのか!? 次巻以降にさらに期待!!


宇宙軍士官学校 −前哨− 6

2014年11月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 地球の存亡を賭けてのケイローンによる試練が行われることになった。粛清者から太陽系を守るには、自力で先行指導種族であるケイローンの協力を勝ち取らなければならないのである。有坂恵一を中心とする地球軍は3つの試練に挑戦することとなるのだが・・・・・・

<感想>
 いよいよケイローンの試練が始まる・・・・・・と思いきや、前段はケイローンの試練の歴史が語られる、というか、閲覧により地球軍の面々はそれら事実を知ることに。前置きがやや長いような気がしたが、中盤から試練が始まってゆく。これは、次巻に引き続きとなるのかと思いきや、意外な展開に!

 今回は、地球軍がそれなりの準備をした故、ということなのだろうが、この作品にしては珍しいくらいに話が順調に進むこととなる。このままとんとん拍子でケイローンの協力を借りて、粛清者たちとの戦いを迎えることとなるのか? それとももうひと波乱、予想外の展開があるのだろうか??

 今作では、機動戦闘艇の戦いで、エミリーとウィルの問題児コンビ(問題児なのはエミリーだけか?)が活躍する。キャラクターもそれぞれ立ちつつあるなか、いよいよ本当の戦いに突入か!


宇宙軍士官学校 −前哨− 7

2015年03月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 見事にケイローンの試練を乗り越えた地球軍の面々。彼らはこれで先行指導種族ケイローンの協力を得ることができ、武装艦隊とその指揮権を勝ち得ることができた。さらに地球軍は銀河同盟の一員として、補給用転移ゲートの護衛の任務に就くこととなった。有坂恵一らは、粛清者との艦隊船に挑むこととなり・・・・・・

<感想>
 物語のスピードが加速し始める。訓練を続けていた地球軍の若者たちであったが、十分な訓練もままならないまま粛清者との戦いの真っ只中へと派遣される。さすがに、まだ前線での戦いというわけではなく、補給の防衛という任務をまかされることになるのだが、それでも死と隣り合わせであることには変わりはない。さらには、一つの勝利に対して、喜んでいる暇もなく、予想外の戦いが続くこととなる。

 このシリーズも、いよいよ核心に迫ってきたという気がするのだが、だからといって粛清者の撲滅までがなされるわけではあるまい。どこかに物語の終着点があるかと思われるのだが、どこまでいくのであろうか。人類の進化というか、変貌と対応が問われ続ける内容。SFでありつつも、人間の生き方というものが問われ続けている作品とも捉えられる。


宇宙軍士官学校 −前哨− 8

2015年07月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 粛清者からのモルダー星系防衛線が始まってすぐ、防衛側は感応端末へのジャミングにより大混乱に陥る。音声と映像による通信のみでの戦闘を強いられることとなる中、粛清者側は、戦線に新兵器を投入してくる。途上種族による独立艦隊を指揮する有坂恵一は、この新兵器に不穏なものを感じ、直ちに破壊することを試みる。他の軍へも呼びかけを行おうとするものの、限定された通信ラインでは、即座に情報を届けることができず・・・・・・

<感想>
 モルダー星系防衛線を描いた内容。そのモルダー星系の様相は、地球の将来を描いたものでもあり、有坂恵一ら地球軍も必死の防衛線に挑むこととなる。しかし、そこで待ち受けていたのは厳しい現実であった。

 ただ、粛清者にたいするケイローン側の陣営は押されているものの、地球軍とその周辺の軍は個別の戦線では成果を上げており、物語上ではうまくいっているように感じられてしまう。ただ、戦線全域で見ると、地球軍が担っているのはほんの一部でしかないので、全体的に不利な形成は変わっていないという事になる。

 だんだんと物語が進むにつれて、やけに地球人類の優秀さが目立つようになっている。というか、ここまで他の星系のものの不甲斐なさが目立つのはどうであろうかと。むしろ、よく今まで戦ってこれたなと感じてしまう。全体的なバランスからして、少々地球軍を優秀に描きすぎているように思えなくもない。

 本書では、著者によるあとがきが付けられている。そのなかで、このシリーズは10巻で終わらせると明言している。ゆえに、あと2巻で終わってしまうこととなる。限定された巻数ゆえに、少々地球軍が優秀に描かれることは致し方ないことか。ここから、地球軍の成長などを描いていたら、それこそ20巻あっても終わらなくなってしまう。今後、我らが優秀な地球軍が、戦線全域に対して、どのような影響を与えていくのか、楽しみに読んでいきたい。


宇宙軍士官学校 −前哨− 9

2015年11月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 モルダー星系防衛線が集結するも、休む間もなく有坂を指揮官とした独立艦隊は地球に進路を向けることとなる。粛清者による太陽系への攻撃が開始されたのであった。しかし、その攻撃は小規模で断続的。いつもと勝手が違うかと思いきや、粛清者側は徐々に攻撃艦隊の数を増やしていくという戦法をとり、消耗戦を繰り広げることとなっていく。そうしたなかで、有坂らは粛清者に対抗すべく、さまざまな方法を提案し、実行していくこととなるのだが・・・・・・

<感想>
 とうとう粛清者の魔の手が、太陽系へまでと伸びてきた。粛清者対防衛軍の太陽系攻防戦が始まる!

 宇宙SFといえば、艦隊による派手な攻防が醍醐味。しかし、この作品では敵味方かかわらず、いかに効率よく戦渦を上げるかが重要となるので、常識にはとらわれない戦い方が模索されることとなる。今回は、粛清者側が今までとは異なる戦い方を示してき、それに対する防衛軍の対処法がポイントとなる。そこで有坂恵一が示す(示さざるを得ない)方法が艦隊決戦ではなく、航空消耗戦という方法。これを地球防衛軍の面々に示し、受け入れさせなければならないというのも一つの課題である。

 今回の作品では有坂恵一を中心とした宇宙軍のみではなく、地球軍や地球周辺で働く人々の姿もピックアップされている(今までの巻のなかでも少しずつ紹介されていた)。ただ、1巻1巻のページ数が少ない作品ゆえに視点を広げすぎると、見るべきところが少なくなってしまうという不満も感じてしまう。なにしろ、地球の様子や人々の対応まで追って行ってしまうと、それだけで同じくらいの分量のシリーズとなってしまうであろうから(それはそれで読んでみたい)。

 ゆえに、できれば宇宙軍の視点のみで・・・・・・といいつ、もうシリーズも9巻、予定では次の作品が最終巻となる。粛清者の根源までにせまる内容なのかと思っていたが、どうやらこの分では今の太陽系攻防戦の行方が本シリーズ最大の山場となるのであろう。いったいどのような結末を迎えることとなり、地球の人々はどのような未来を手にすることとなるのか? 期待しながら最終巻を待ち受けたい。


宇宙軍士官学校 −前哨− 10

2016年03月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 粛清者による度重なる襲撃に劣勢に立たされる太陽系防衛軍。粛清者は襲撃の度に倍数で戦艦数を増やしてきて、さらにはその攻撃方法もまるで試しているかのように新しい方法にて挑んでくる。ギリギリのところで攻勢を防衛する中、有坂らの元にケイローンの援軍が1日以内に到着するという朗報がもたらされる。また、地球上では“箱船”による人類の宇宙への避難が着々と進められてゆき・・・・・・

<感想>
 10巻で終わるとされていたシリーズ作品であったが、まだまだこの巻では戦闘は終わらず、この先も続くよう。ある程度話が進められたところで終わるようであるが、その後も続編が書かれるとあとがきで著者自身が述べている。

 この10巻では、粛清者の度重なる攻撃が続き、太陽系防衛軍もさすがに息絶え絶えとなりつつある。有坂恵一を中心とした地球軍が攻勢を図るものの、結局のところ圧倒的な“量”の前にだんだんとなすすべがなくなり、あとはケイローン軍の救助を待つのみとなりつつある。こうした状況で、本当に援助が差し伸べられるのか? そして粛清者側の攻撃がどこまで続くのかがポイントとなりそうである。

 今回読んでいて印象に残ったのは、敵である粛清者という存在が完全な“悪”であり、正体不明で交渉不能故に味方から裏切り者がでることはなく、ある意味心情的に安全に戦えると登場人物らが話をしていたこと。これは確かになるほどと。普通の戦いであれば、交渉とか、裏切りとか、そういった要素が出てくるもの。それが出てこない、ここでの戦いこそが異質であるのだということ。

 今のところ、相手の底が知れない波状攻撃になすすべがなくなりつつある太陽系防衛軍であり、地球防衛軍の面々も個々ではなすべきことがなくなりそうな展開。こうしたなかで、今後主人公である地球防衛軍の者たちがどのような活躍を見せるのであろうか? 続刊に期待。


宇宙軍士官学校 −前哨− 11

2016年07月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 繰り返される太陽系防衛軍と粛清者との戦い。地球軍はケイローンらの支援を期待していたのだが、粛清者の軍勢は同時期に他の星系に対しても攻撃を仕掛けていた。少数のケイローンの艦隊が救援に来てくれたものの、戦線の状況はかわらず粛清者に押される一方。しかも粛清者はさらなる追い打ちをかけ始め・・・・・・

<感想>
 そのまま前回からの続きで、太陽系攻防戦が続いている。粛清者による攻撃は苛烈を極め、ひとつの戦局を打開しても、すぐに新たな戦局が始まるという圧倒的不利な展開。とにかく受け身、受け身の繰り返しで、太陽系防衛軍の戦力は削られる一方。敵の全体戦力がいったいどのくらいなのか? ということがわからない中で戦局を見極めるのがいかに厳しいかが伝わってくる。しかもこの巻では、そういった打開策はないまま、さらなる防衛線をしいられるのみ。支援も期待できない中で、いったいどのようにして防衛軍は自軍に有利な展開へと持ち込むことができるのか!?


宇宙軍士官学校 −前哨− 12(完結)

2016年11月 早川書房 ハヤカワ文庫
<内容>
 粛清者の度重なる攻撃によって、疲弊し続ける太陽系防衛艦隊。アバターによって生き返った有坂恵一らは、ケイローンの救援隊が来たことにより一時的に休むことができるかと思いきや、さらなる敵の増援部隊による攻撃が繰り広げられたことにより、緊急の戦線復帰を余儀なくされる。そして敵の隻艦隊から、千二百五十発の恒星反応弾が太陽めがけて発射され・・・・・・

<感想>
 とうとう「宇宙軍士官学校」もこれで完結。粛清者と地球防衛軍との対決もいよいよクライマックス。

 ということで読んだのだが、こんな結末かと唖然としてしまった。期待していたものとはだいぶ違ったような・・・・・・。といっても、著者からすればそれなりに伏線を張りつつの、このような結末に持ち込んだということで予定通りの展開ということであるのだろう。ただ、主人公たちや、その他の各種キャラクターたちのほとんどをないがしろにしたような、こういう終わり方はどうなのかと。

 この作品をもって「宇宙軍士官学校」も完結を迎えたのだが、全体を通してみると、それなりに面白かったかなと。特に前半の地球人たちが、選抜されて、宇宙へと出立していくところは非常に楽しんで読むことができた。後半に入ると、やや同じような展開がずっと続くということもあり、ちょっと退屈に感じられてしまった。また、その終盤の似たような展開がずっと続きつつ、我慢に我慢を重ねた挙句、結局このような終わり方なのかと、意気消沈してしまったという感じ。

 とはいえ、このような展開だけで物語が終わったわけではなく、この作品をもって“第一部”が終わったのみで、今後も主人公たちが太陽系を飛び出して活躍する様子が描かれるとのこと。ただ、この作品の結末を読んだ限りでは、もう続編は読まなくてもよいかなという感じになってしまった。




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