SF な行−に 作家 作品別 内容・感想

グアルディア

2004年08月 早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
<内容>
 22世紀末、人類は、とあるウイルスによって滅びかけた。時は流れ、西暦2643年、ラテンアメリカをにて自治都市エスペランサにて世界を統括しようとする子供の姿をした支配者アンヘルとその守護者たる少年ホアキン。そして、その混乱した社会の中を逃げ回るように生き延びる謎の少女カルラと記憶を亡くした青年JD。支配者アンヘルがその二人の存在を目に留めたとき、世界の秘密を暴くかのような陰謀が繰り広げられる事に・・・・・・

<感想>
 本書はこの著者にとってのデビュー作であり、頭の中に描かれた物語をそのまま書き綴った作品であると言う・・・・・・というのだが、よくこのような物語を描く事ができたなと感心するより他にない。一度、この著者の頭がどうなっているのか開けて調べてみたいものである(褒め言葉です)。

 というほど、本書の設定はすごい。独特な世界観から、近未来の世界を描いており、それらが物質的だけではなく政治的にも練られながら一つの大きな物語が形成されている。そこに書かれるひとつひとつが現代的な感覚から逸脱しているかのようであり、サイバーパンク的な世界がそのかけらのひとつひとつまで行き渡っており、読んでいながらもただ圧倒されるばかりであった。

 と世界観やその描写については褒め称えたくなるものの、ストーリーに関しては正直わかりづらかった。主要な人物らのみで構成されてはいるものの、そのひとりひとりの背景もわかりやすいとは言えなく、また彼らひとりひとりの行動についても不鮮明に感じられた。読んでいて物語がどの方向へ進んでいるのかという事も明確化されていないように感じられて、読み終えるまでにかなり時間がかかったという事も事実である。

 とはいえ、これだけ書ける作家なのだから今後の作品には是非とも期待したいところ。そして、ある程度書きなれた頃には数冊に渡るような大作を書いてもらいたいものである。


凹村戦争

2004年03月 早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
<内容>
 世間から隔絶された場所、凹村。しかし、そこに住む人たちは誰もそのことを不思議に思わず、村の中だけで暮らしている。そんなある日、村にX型の隕石が落ちてきた。その隕石を見て、騒ぐ者もいれば、何の興味もしめさないものいて、結局は何も変らない日々が続く・・・・・・
 非日常の中で繰り広げられる日常が描かれた、ささやかな物語。

<感想>
 ハヤカワSFシリーズということで購入したのだが、家に持って帰ってきて初めて漫画だということに気づきびっくりする。漫画だからすぐに読めるだろうと思っていたが、結局2、3日かけてだらだらと読むこととなった。こういう漫画は“脱力系”とでも言えばいいのであろうか。特にこれというインパクトは感じられなかった漫画というのが正直なところである。

 隕石から宇宙人、はたまた戦争らしきものまでが描かれているのだが、そこになんら意味や必然というものは見出せなかった。隕石が落ちてきた事件を通して、凹村に住む者たちの葛藤が描かれているのだが、これは普通の田舎に住む人たちが感じるような日常となんら変わりがないと思える。要するに、別にSFという設定でなくてもいいのではないかというように感じられた。ただ、SF映画のタイトルやSF小説のタイトルがちりばめられているところから著者がSF好きであろうということは伝わってくる。本書のタイトルになっている“オーソン”というのは、“オーソン・ウェルズ”から採ったようである。

 で、結局のところ本書を読むことによって“虚無感”を感じたというよりは、むしろ“脱力感”が残ったという言い方が正しいかもしれない。そんな本である。




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