SF ま行−む 作家 作品別 内容・感想

みずは無間

2013年11月 早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
<内容>
 土星探査という役目を終え、太陽系を後にした無人探査機。その探査機には雨野透という男性の人格がAIとして搭載されていた。雨野の人格を持った探査機は宇宙を彷徨い、さまざまな知性体と遭遇しつつも、地球に残してきた恋人の“みずは”の事を考えずにはいられなかった。地球を離れてから何十年という年月が経っているにも関わらず・・・・・・

<感想>
 人間の感情を持つ、惑星探査機という設定は面白い。それも現実に存在する人格を利用し、それをAIとして搭載するというアイディアはなかなかのもの。ただ、その設定を生かしきれていなかったように思われる。

 全て読んだ上での感想は、別に太陽系の外へ出る必要がなかったのでは・・・・・・と。この話の内容であれば、地球の周りをぐるぐる回るだけでも別に変わりがないのでは?

 せっかく太陽系の外へと出たのに自分の恋人のことばかりで収束してしまうのはどうかと・・・・・・しかも、思い返すのは悪いところばかりって。ひょっとすると、壮大な宇宙と、個人的な悩みという大小の対比を表したかったのかな、とも感じられないこともない。ただ、探査機自体の明確な目的というものがないことにより、“みずは”という存在が悪目立ちしてしまったのかなと考えられる。

 アイディアは色々とあったようなので、それらをもっと一つの物語としてまとめきる力が欲しかったところ。




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