<内容>
臨床心理士の佐久間美帆は藤木司という二十歳の青年を担当することとなった。彼は今まで福祉施設で暮らしており、一緒に暮らしていた少女の自殺を受け入れる事ができず大暴れして、病院に入れられていた。藤木は佐久間に対してもなかなか打ち解けなかったが、熱心に患者に取り組もうとする佐久間に対して少しずつ心を打ち明け始め、自分の特殊な能力について話し始める。そして藤木が言うには、自殺した少女は何か秘密を抱え込んでいたと・・・・・・佐久間美帆は藤木の話の真偽を証明するために、彼が暮らしていた福祉施設の調査を始めようとするのだが・・・・・・
<感想>
第7回「このミス」大賞は「屋上ミサイル」とこの「臨床真理」の2作であったのだが、正直なところこの作品が選ばれた理由がよくわからない。個人的には「屋上ミサイル」一作で十分だったのではないかと思われる。
本書は“臨床心理士”というものを取り扱った小説のはずであるが、その臨床心理士という要素をほとんど生かしきれていない。事件に関与するきっかけぐらいにしか感じられなくて、それがなんとももったいない。
そして、その臨床心理士という要素を除けば、あとは単なるサスペンス小説でしかない。途中の展開もまるわかりであるし、ラストにいたっては必然性のない展開というようにしか感じられなかった。
この作品が大賞に選ばれる過程の選考においては「屋上ミサイル」と「臨床真理」の2作で全く評価が分かれて、もめたということであるが、要するに人によって評価が異なるということなのであろう。まぁ、どちらがより好みの作品か、それは実際に読んで試していただけたらということで薦めておきたい。