<内容>
1936年、ヒトラーの独裁政権が広まりつつあるドイツ。ナチスの保安情報部で働くアルベルト・ラーセンはとあるカトリック教会を陥れるための工作を命じられる。彼は教会へと向かい、ひとりの男と再会する。彼の名はマティアス・シェルノ、幼馴染の男は修道士となっていたのだ。対照的な生き方をしてきた二人、彼らは戦争とナチスによるユダヤ人虐殺という大きな事件の狭間で思いもよらぬ道を進むこととなり・・・・・・
<感想>
力作である。昨年話題になった作品であるが、読み応えのある内容であった。一応、ミステリのランキングなどでも紹介されてはいたが、実際には歴史小説である。
ナチスの隊員と修道士、二人の眼から見た第二次世界大戦中のドイツを描いた作品。実際に戦時中に、ナチスが行ったこと、そのときの教会の立場、翻弄され続けたユダヤ人とドイツ人も含めた諸外国の民衆。こういったさまざまな事象が2冊の本のなかに網羅されている。研究文献であるならば、こうした内容の事柄がきちんと書かれたものはあるかもしれないが、小説としてここまできっちりと書かれているものは少ないのではないだろうか。
さらには、教会の立場とひとりの修道士の悩みがうまく描かれているところは見事であった。宗教というものに観点を置き、最後の最後まで信仰というものについて考えさせながら、うまく物語を書き綴っている。この難しいテーマを思想をぶれさせずに、よくぞ最後まで書き切ったと感心させられた。
本書は歴史小説ゆえに、ミステリ読みの人には必須という作品ではない。ただ、ラストでは“謎”というよりは物語上の“秘密”といったほうがしっくりくるのだが、ミステリ的な展開がないというわけではない。というより、むしろこの作品がミステリ、非ミステリに関わらず、多くの人の目に触れなければもったいないと感じてしまった。できれば多くの人に手に取ってもらいたい作品。長い作品なので読むのは大変であるが、読めば決して後悔しない作品であると太鼓判を押しておきたい。
<内容>
19歳のフリーターの僕は、従兄のダイ兄ちゃんに頼まれて、超能力を研究しているという怪しげな施設の取材の協力をすることとなった。その団体の教祖にまつりあげられているのが、僕の幼馴染ということもあり、ダイ兄ちゃんと共に自らを超能力者と称し施設に入り込む。その後、幼馴染と再会するも、偽の超能力者だということがばれてしまう。しかしその後、施設内で殺人事件が起き、成り行きでその事件を調査し、真犯人を探す羽目に陥り・・・・・・
<感想>
フリーターの青年がフリーライターの従兄に誘われて、怪しげな超能力施設への潜入取材を行うという話。その超能力施設という胡散臭さから、序盤を読んだ時は内容に期待しなかったのだが、殺人事件が起きてからその捜査が始まることによって、がぜん興味がわいてくることとなった。
その殺人事件なのだが、限定された人しか入れない部屋にて、チェーンソーにて殺害されたというもの。そのチェーンソーをどうやって持ってきたのか? 何故、チェーンソーが使われたのか? そして犯人はどのようにして部屋へ出入りしたのかがポイントとなっている。
事件を解くのは探偵などをしたことのないフリーターの青年。それゆえに捜査はぎこちなく、あやしげな超能力施設にて協力者もいないなかで、頼りになるかならないかわからない従兄の力を借りながらなんとか進めていくことに。そうしてとある真実へと到達するのであるが・・・・・・
事件の真相が語られるところに関しては、あまり期待したものではなかったなと。あくまでも本格ミステリとして進めていってもらいたかったところなのであるが、やや変化球気味の結末であった。予想外といえば予想外であるし、物語自体も最初からそのカタストロフィー目指して進んでいたという事は理解できるので、決して悪くはないと思われる。ただ、個人的にはもう少し殺人事件の解釈について一捻り欲しかったところ。
<内容>
バトル・ロワイアルの世界から2年後。生き残った七原秋也をリーダーとするテロリスト組織“ワイルド・セブン”は首都庁舎ビルを爆破したことにより国際指名手配を受ける。そのワイルド・セブンのメンバーたちが潜伏した先は“戦艦島”。
政府はこれを迎え撃つべく、新しいバトル・ロワイアルのゲームを開始する。中学生1クラスを拉致し、彼らに銃器を与えワイルド・セブンに立ち向かえというのだ。勝利条件は「七原秋也を抹殺すること」。
<感想>
前作ではかなり面白く読ませてもらったバトル・ロワイアルであるがⅡのできばえはどうであろうか。
前半部分を読んだかぎりでは、はっきりいって不満であった。というのも前作では全編が中学生1クラスのみの物語であったために、それぞれの個性が十分に描かれていたと思うのだが、今回は1クラスだけの物語ではなく、対テロリストという要素が加わるのでどうしても個々の印象が薄くなってしまう。そして1クラスの生徒たちの半数が序盤であっというまに死んでしまう。これでは単なる捨て駒という印象しか残らない。
では、このバトル・ロワイアルⅡという作品はどういう意味をもったものなのだろうか。それが中盤から後半にかけて描かれている。
本書は映画化された脚本を小説家したものであることは周知の通りである。では映画として続編が作られたということにはどういう意味があったのだろうと考えてみた。思いついたのはⅡを作ろうと思った人は、ひょっとしたら前作「バトル・ロワイアル」の“後始末”をしなければと考えたのではないだろうか。
そこで本書の中盤以降の話になるのだが、こちらでは話が一転してテロリスト側の物語となる。こちらの物語ではバトル・ロワイアルにて生き残ったもの達のその後の顛末が書かれている。そして生き残ってしまったことの苦しみや、これからどう生きていくかの悩みなどがまざまざと描かれているのである。
ここでバトル・ロワイアルⅡは前作とは違う意味を持った作品となるのではないだろうか。前作では残酷ながらもあくまでもエンターテイメント作品という趣で書かれたものであろう。しかし、本書ではバトル・ロワイアルの中でもがく若者達の悩みや苦しみが描かれた物語となっている。それはあたかもテロリズムというような形によって書かれてはいるものの、実際には大人社会のなかでもがく子ども達というように置き換えることもできるように感じられる。
こういったことを表わすことこそが、エンターテイメント作品でしかなかった前作の“後始末”ということであり、“鎮魂歌”であるということではないだろうか。
余談になるのだが、私はこの作品を映画では見ていない。ただ、映画でこのような子ども達の苦しみや悩みといった感情がどれほど表現できたのだろうかと余計な心配をしてしまう。
そして最後に、もうバトル・ロワイアルはこの作品で十分であろう。七原秋也や他の苦しみぬいた子ども達が安らかに眠れることを祈りたい。
<内容>
普通の高校生である白鷹黒彦は亡くなった芸術家の父の代わりに“魔神館”に招待されることとなった。不気味な魔神の銅像と、12宮の星座の名がかたどられた部屋、そして館に集められた星座が異なる11名の人々。全ての準備が整ったとき、館で連続殺人事件の幕があがることに。
<感想>
今年(2009年)「天空高事件」という作品が気になり購入したのだが、シリーズ作品としてその前に「魔神館事件」というものがあるのを知り、こちらも購入して先に読んでみることにした。それで実際に読んでみたのだが、これがなかなか面白い。
雰囲気としては昔読んだ数々の新本格推理小説と並べることができるような内容。若干、この作品のほうがくだけた口調で話が進められてゆくこととなる。
作品の内容は閉ざされた山荘での連続殺人事件もの。次々と登場人物が死んでいく中、残されたものは犯人の正体を暴こうと必死に捜査をしてゆくこととなる。そうしたなかで最後に明かされる真相はというと・・・・・・ギリギリありかな。読んだ人によっては微妙と思える人もいるかもしれないが、私的にはギリギリ許容範囲といったところ。
また、久々にこういった趣向の探偵小説を読むことができ、それなりに堪能することができた。新本格推理小説ファンであれば、読んでみても損はないかもしれない。ただし、くれぐれも過大な期待を抱かないように。
<内容>
“魔神館”にて凄惨な体験をした高校生の白鷹黒彦であったが、彼が通う天空高校に戻ってくると、そこでも事件に巻き込まれることとなる。
発端は、ひとりの女子生徒の飛び降り事件。自殺なのか他殺なのかわからないが、彼女は不可解な死を遂げた。彼女は生前、探偵部に所属しており、部長の夢野姫子は何故か黒彦に目を付け、探偵活動に無理やり参加させられることとなる。探偵部の面々と黒彦らが誰にも望まれないながらも事件の捜査をしていると、次々と不可解な死が巻き起こり、事態は連続殺人事件へと発展してゆく。そんな折、黒彦の前に“魔神館”で出会ったハテナと犬神博士が現れる。
<感想>
ミステリっぽい物語としてはよく出来ていると思える。しかし、これを推理小説として捉えてしまうと疑問に感じられてしまう。
事件が起こるのだが、その状況が全くといっていいほどつかめないまま、話がどんどんと進められてしまう。結局最初は殺人だったのか、自殺だったのかさえわからない状況。できれば、もう少し推理小説らしい状況証拠などを与えてもらいたかったところである。
以下、他の事件に関しても同様。高校の中に中学生やら自称博士やらメイドやらが普通に入ってこられるくらいならば、強引にでも状況証拠などがわかるようにしてもらいたかったと感じてしまう。どうも力の入れどころが間違っているような気がしてならなかった。
結末から言えば、ミステリ的な展開としてはうまく出来ているのではないかとさえ思われた。それだけに、前半部分をもっと推理小説らしく仕立ててくれれば良い作品になったのではないかと思われて、もったいないかぎりである。
まぁ、このシリーズの続編が出るとしたら、もう一冊くらいは読んでもよいかもしれない。
<内容>
正月、年賀状により犬神博士から地方の辺ぴな村へと呼び出された白鷹黒彦と犬神果菜。彼らが露壜村へとたどり着いた時、そこで村を束ねる綾樫家の当主・久作の葬儀を目にすることに。するとその際、久作の妻である老婆・綾樫ウタにより目撃された彼らは綾樫家に呼ばれることとなる。そして、ウタは果菜に対して、彼女は生神様だと言い始める。ウタの要請により、村に泊まることとなった黒彦と果菜であったが、そこで綾樫家を巡る連続殺人事件に遭遇することとなり・・・・・・
<感想>
第1作「魔人館事件」を読んだときは、突飛な作品を書くなと感じたのだが、第2作「天空高事件」では、その突飛さも薄れたかなと。そして、4年近くが経って、ようやく第3作「露壜村事件」が発表された。文庫書き下ろしとなる本書であるが、これが予想以上に面白かった。これは、なかなかの佳作といえよう。
主人公は、ごく普通の高校生なのだが、それを取り巻く犬神兄妹については、少々変な人たちと形容できる。天才すぎて、普通の人々と波長の合わない犬神博士。その犬神博士が作ったロボットであるという、どう見ても人間にしか見えない中学生の犬神果菜。今作では、主人公の黒彦と果菜の二人が連続殺人事件に巻き込まれることとなる。
資産家を狙う連続殺人事件の展開については普通と言えよう。雪で閉ざされた村のなかで、村の中心となる資産家を狙った殺人事件。一見、不可能殺人事件のようでもあり、主人公以下、綾樫家の人々も事件に振り回されるまま。当主が亡くなったことによる跡目を狙った事件なのだろうと予想しつつも、事件はいっこうにとどまることをしらず、次々と綾樫家の人々が殺害されてゆく。
そうして、最後に真相が披露されることとなるのだが、これが意外なもので驚かされる。意表をついたというか、斜め先を行くというか、なかなかの予想外。シリーズ3作目にして、1作目を抜く内容であったことが喜ばしい。
次の作品がいつ出るのかはわからないが、次回作も是非とも読みたいと感じさせられた。これはもはや、次回作とはいわずに、黒彦と果菜の物語がどこまで到達するか、最後まで見守らないわけにはいかないであろう。
<内容>
白鷹と犬神兄妹は、幻双城から招待を受ける。幻双城で二世会なるものを開催するというのだ。3人は船に乗り、現地へ赴くと、そこで待っていたのは芸術家の親を持つ二世達と、その親たちが作った芸術作品の数々。しかし、肝心の城主の姿はどこにも見当たらない。その奇怪な構造の城で、彼らを待ち受けるものは連続殺人事件であった!
<感想>
近年、本格ミステリを書く作家が少なくなっている。そのなかでさらに、館もののような大掛かりなトリックを書く作家はさらに少ない。今年でいえば、「伽藍堂の殺人」を書いた周木律氏くらいか。こういった作品はなかなか読めなくなったなと思いきや、作品数は少ないものの、このような作品を書き続けてくれそうな作家がひとりいた! それが、本書「幻双城事件」を書いた椙本氏である。
この作品は“館モノ”というよりは、“城モノ”。とはいえ、ほぼ同じテイストで読める。内容はといえば二階堂氏描く「人狼城」の廉価盤というような感じ。とはいえ、文庫書下ろしで、こういったテイストの作品を味わえるのは貴重。
城に集められた芸術家の二世達が、不可解な動きをする城のなかで連続殺人に巻き込まれるというもの。その謎にシリーズ主人公の白鷹と犬神兄妹が挑む。トリックは意外といいつつも、小っちゃくまとまってしまったという気がしなくもないものの、きっちりと出来ている作品であることは確か。細かい突っ込みどころは多いものの、文庫サイズの手軽に読めるページ数のなかでは、十分な本格ミステリ密度であるといえよう。
文庫書下ろしということで、読み逃している人もいると思われるので、館ミステリが好きな人はチェックしておいてもらいたい一冊。昨年出たシリーズ3冊目に続き、思っていたよりも早いスパンで4冊目を出してくれたので、今後も期待したい。次回作は来年か? それとも再来年か?
<内容>
深石市にて、死体を必要以上に損壊させるという殺人事件が連続して起きた。しかも被害者はどちらも警官であった。刑事部の特別捜査係に配属されている佐築巡査部長は、その事件現場に急行し、初動捜査を行うものの、他の部署にそれらの事件を取り上げられてしまう。この深石市というところは特殊な都市で、ひとつの企業が大きな力を持ち、それに関わる新興宗教が強大な力を持っている。今回の事件は、その新興宗教と警察組織との争いが表面化したものとも考えられる。微妙な立場におかれ、板挟みとなる佐築が選んだ選択とは!?
<感想>
「魔神館学園」のシリーズを読み続けている椙本孝思氏の新作。今作はなんと警察ものに挑戦した作品となっている。
ただ、警察ものというジャンル、多くの作家が手掛けているもので、良い作品が数多くある。それゆえに、本書を読み始めた時には、「警察ものとしてはなぁー・・・・・・」などと違和感を抱いたり、微妙な点に気付いたりと、重箱の隅をつつくような感じで読んでいた。
しかし、最後まで読むと・・・・・・これは単なる警察小説ではなかった! ということに気付かされ、驚かされることに。なるほど、こんなものを描きたかったのかと!!
最初は、微妙に思えた主人公の警察捜査と、ところどころに挟まれる主人公の学生時代の話に、奇妙な感覚を持ちながら読んでいたのだが、これらがまさかこんな形でまとめられるとは・・・・・・。と、意外性があるなどといった先入観は無しで読んでもらった方が楽しめるであろう作品。これこそが、今年の目玉作品といってもよいくらい。文庫書下ろしゆえに読み逃している人もいると思われるので、お薦めしておきたい。
<内容>
会社を退職した吉村夫婦は海外旅行先でポーランド人の娘・アンカと出会い、仲良くなる。その後、メールなどで連絡を取り合い、アンカの父親が推理小説作家であることを知る。やがてアンカが日本に留学することにより、さらに交流が深まるのだが、ある日突然アンカは病気を患い、ポーランドへ帰ってしまう。そんなアンカから、彼女の祖父がアウシュビッツの強制収容所にいたときのことを書いた日記を日本語に翻訳してもらいたいというメールが届く。
ナチスドイツの高官ハイドリヒの暗殺事件、木島という男の心臓と左腕が切りとられた死体の謎、ポーランドで起きたナチスハンターの後援をしていた男の死の謎、それぞれの事件は何らかの関係性があるのか・・・・・・
<感想>
なかなか面白かった。現代に起きた事件の禍根が第二次世界大戦中までさかのぼるものとなっており、過去に起きた事象が現代に影響を与えるという物語が実によく出来ている。心臓と左腕が切りとられた日本人の死体が発見されるのだが、それが長きにわたる時間を経て、このような事件が起きたという顛末に圧倒されてしまう。
かなり物語としては面白かったものの、ミステリの構成としては、あまりうまく出来ていなかったような気がする。最初、プロローグが語られるものの、それがいつまで語られるのかと思いきや、いつの間にか本編に入っていたというところは、ややメリハリがなかったかなと。また、事件の焦点自体がちょっとぼやけていて、何の謎を解くというものがはっきりとしていなかったところも惜しいかなと。あと、これは好き好きと言えるかもしれないが、物語の中心となり、事件を解決していくのが定年した夫婦というのは地味すぎやしないかと。
と、そんなこんなで、もったいないと思われた部分もあったものの、これは処女作であるのだから致し方ないことであろう。むしろ処女作でよくここまで書けたなと感心させられてしまう。著者には、これ一冊で終わらせずに、ぜひともさらなる新作を書き継いでもらえたらと期待したい。あと、日本でも外国でもナチスドイツを巡る話って、今だに書き継がれるのだなと。
<内容>
明治43年、徳川最後の将軍となった徳川慶喜は73歳。その慶喜が散歩中、何者かに襲われる。その暴漢は警備員の手によって銃殺され、慶喜は事無きを得る。ただ、その暴漢は“斬奸状”というものの存在を指し示すものを所持していた。巡査部長の小川は、事件の裏に、慶喜公を殺害せんとする何者かが存在するのかどうか、事件の裏を調べることに。徐々に小川は、斬奸状の真相に近づくこととなり・・・・・・
<感想>
著者の須田氏は昨年「神の手廻しオルガン」で、ばらのまち福山ミステリ文学新人賞を受賞。その受賞作が面白かったので、今回新作も読んでみようと思った次第。
内容はタイトルの通り、歴史ミステリ。舞台は明治維新後の世界で、徳川慶喜自身も登場しており、作中で重要な役を担う・・・・・・というか、慶喜を中心に物語が回っていたような。
老齢となった徳川慶喜を暗殺しようとした暴漢による事件。その暴漢の目的、“斬奸状”というものの存在と内容、果てはその裏側に見え隠れする物語全体における謎と真相。そういったものを事件を調べる巡査部長の小川が体感していくこととなる。
歴史ミステリではあるとはいえ、意外と読みやすく、それなりに面白い。事件の真相も意外なもので、なかなか読みどころのある小説に仕立て上げられている。ただ、惜しいのは、全体的に淡々としていて、劇的な場面がないところ。実際、十分劇的に見せることができそうな真相であっただけに、淡々と解決に持っていくというのはちょっと惜しいような。書き方次第で、もっと注目される作家となりそうな気がする。次回作が歴史ミステリでなければ、再度読んでみたいかなと。