<内容>
<霊障相談所>を開業する勘解由小路春海(かげゆこうじ はるみ)の許に“鬼”と化した兄を探してほしいという少年が訪れる。春海は高野山の僧・慈瞬、特命を受けた刑事・松川とともに京都中を震撼させる“鬼”の謎に挑む。
<感想>
いいとこ盗りの伝奇小説。
それなりに面白く、それなりに読ませてくれる伝奇小説となっている。しかしながら全体的に印象が薄く感じられる。というのも設定のどれもこれもがどこかで聞いたことのあるようなものとなっている。行ってしまえば、夢枕獏と菊地秀行の世界観とキャラクター、さらには漫画「X」(Cramp 著)に出てくるそのまんまのキャラクターと武器。なんかどこかで見たことがあると思えば思うほど、印象が徐々に薄れてしまう。
世界観やストーリーはよくできていると思うので、そこにもっとオリジナリティのあるキャラクターが欲しかったというところ。もしかしたら続くのかと思わせるところがあるものの、一新した作品を書いたほうがよいのではなかろうか。せっかく読ませる力があるのだから・・・・・・
<内容>
ジャーナリストの秋庭はさる地方都市に降り立った。そこで彼は焼け残されたアパートの前に立ち、北畠藍子と口にする。するとそのとき、その名を聞きつけた二人の少年が秋庭の前に現われる。ひとりは柏木という少年で全焼したアパートの住人の生き残り、もうひとりは永見といい藍子と付き合っていたという。いったい、この小さな都市で何が起こったのか? そして彼ら3人をつなぐ藍子という少女の存在とは!?
<感想>
ちょうどこの本が出た頃、あさのあつこ氏の「バッテリー」が文庫を読み始めた頃で、それにつられて何となく買ってしまった一冊。別にどのような内容なのかとか気にしないで買ってしまい、なんとなくそのまま放置し、ようやく着手する事ができた。そして読んでみた感想はと言うと、別に特に何かが残るようなものはなかったかなと。
読んでいてふと思ったのは、この作品の感性に自分自身がついていけないのは歳をとったからかな、ということ。本書の多くが柏木と永見という少年の行動とやり取りであるのだが、その二人のやりとりにいまいち感銘を抱けないというか、ついていけなかった。
その二人の少年のスタイルが熱血ではなくクールでとりとめのないようにとわざと描いているということはわかるのだが、つかみどころがなさすぎて共感をいだくことができなかった。また、クールそうな割には勝手に自分を追い詰めているようでもあり、さらにはそれに酔っているようにも思え、そういったところもやりすぎのような気がしてならない。
と、そんなこんなで主となる少年の二人に対してあまり良い感情が抱けなかったせいか、小説全体に好感をいだけなかった。内容自体にも、さほど話をひっぱるほどの何かがあったようにも思われない。
ということで否定的な意見ばかりを書いてしまったが、結局のところはこの本にめぐり合うのが遅すぎたと言う事なのかもしれない。もしこの本を中高生くらいのときに読んでいれば、また違った印象を抱く事ができたのではないだろうか。というか、もともと中高生向きの本であったのかもしれない。
<内容>
「血の行方」
「幻覚パズル」
「消えた脳病変」
「開 眼」
「片翼の折鶴」
<感想>
昨年、ミステリ・フロンティアから出た短編集であるが、これが思いの外よく出来ている作品集であり驚かされた。最初読み始めた時は、単なる医療系の薀蓄ミステリなのかと思ってしまったのだが、そのなかの「消えた脳病変」を読んだときには、その内容に驚かされてしまった。よくよく見ると、この「消えた脳病変」は“第11回ミステリーズ! 新人賞受賞作”となっており、賞の受賞も納得させられる出来栄え。年末に出た作品ゆえに、あまり話題にはなっていなかったようであるが、これは読み逃すには惜しい作品であるので、ぜひともご一読いただきたい。
「消えた脳病変」は、大学での講義の際、講師が生徒たちに問題を提示し、生徒たちがディスカッションしながら真相を解き明かすというもの。それは講師が医者であったときに診た患者の話で、あるとき急に患者が昏睡状態となって倒れ、その原因を調べると、脳にあるはずの病変が消えてしまっていたという不思議な話。最後にひとりの生徒が見事に謎を解き明かすのであるが、それが思いもよらぬ角度から謎が解き明かされることとなり、やられた! という気にさせられてしまう。また、この作品はミステリとしてだけではなく、医者としての矜持も強く語られた内容になっている。
「幻覚パズル」は、引きこもりになった少女を訪ねた少年がその家で暴漢に襲われるという事件。家にいた少女と祖母の意見があわず、祖母の方が認知症により幻覚を見たのかと判断されるのだが・・・・・・。これは医療ミステリというよりは、病院の外で起きた事件を扱っているためか、本書のなかでは一番事件性の高い内容となっている。この作品も予想外の方向から真相が明かされることとなり、驚かされる作品であった。
その他は医療系ミステリという赴きが強く、「血の行方」や「開眼」などは、医療知識に寄った内容の作品という感じ。「片翼の折鶴」は、患者とそれを見守る家族との想いを描いたものとなっている。
「血の行方」 慢性的な貧血患者の病状の謎。
「幻覚パズル」 暴行事件の際に目撃者が見たのは幻覚であったのか?
「消えた脳病変」 患者から突然、脳にあるはずの病変が消えてしまった謎とは?
「開 眼」 四肢が麻痺した患者が陥る呼吸困難の原因は?
「片翼の折鶴」 自殺を遂げようとした患者が残した折鶴の真意とは?
<内容>
大学での解剖実習中、<ご遺体>の腹の中から異物が見つかった。取り出してみると、それは小さなチューブであり、その中から研究室の教授を脅迫するメッセージが発見された。しかし、そのメッセージが植えつけられたのは、かなりの昔のことであると考えられ、誰がどのような目的でどうやって今この大学内に持ち込まれたのかというさまざまな謎が残された・・・・・・。そして、その脅迫状が見つかってから、研究室内にさまざまな事件が起こることとなり、ついには殺人事件にまでが!!
過去と現在が結ばれる解剖学の教授を巡る事件、その裏に隠されているものとはいったい!?
<感想>
端正な文章で読みやすく、しかもなかなか面白いミステリとして仕上げられている作品であった。その出来栄えは新人の作品とは思えないくらいである。遺体の中から取り出されたメッセージと、そこから派生してゆく事件、そして過去の事件とそれらをうまく結び合わせてひとつの事件としてまとめている。また、犯人を巡って二転三転する展開も楽しむことができ、これは鮎川賞受賞作としても文句のない作品と言えるであろう。
ただ、残念なのはうまくまとまりすぎて突き抜けたものを感じ取れなかったところ。本書は、選考委員も語っていたのだが、鮎川賞というよりは、書き方によっては江戸川乱歩賞をとってもおかしくないような作風であった。ゆえに、社会派ミステリともいえる部分もあり、またそれだけではなく新本格推理小説ともいえなくもない。よって、どっちつかずの小説のような薄い印象しか残らないのである。
今後、作品を書いていくのであれば、社会派ミステリか本格推理小説かの方向性を定めて書いていったほうがよいと思われる。本書を読んだかぎりでは、これだけの文章で作品を書くことができるのなら充分社会派のほうでも勝負をしていけると思われるのだがどうであろうか。
<内容>
義足のダンサーとして有名であった桐生志摩子が奇妙な状態の死体となって発見された。義足であった左足が外されていただけでなく、健常だった右足までもが切断され、彼女の義足の左足と、誰のものかわからない右足の義足が赤い靴をはかされて並べられていたのである。それはまるで、生前志摩子がエッセイで書いていた「赤い靴」の童話になぞらるかのように・・・・・・
亡くなった志摩子の夫から依頼され、義肢装具士の香坂徹とその妹で義足を付けている奈緒、そして徹の親戚で再生医療の研究者である鴇圭一郎らが事件を調査して行くのだが・・・・・・
<感想>
鮎川賞受賞後の第一作となる作品であるが、前作よりも格段に良い作品になっていると感じられた。前作を読んだときは、新人にしては端正な文章を書く人だと思い、どちらかといえば本格ミステリ作品よりも、社会派ミステリを描いてゆきそうに思われたが、今作はまさにその社会派ミステリらしい作風の作品といえるであろう。
童話「赤い靴」になぞらえた奇妙な状態で放置された死体。その後も続く奇妙な事件の数々。それらの事件が義肢装具士らが働く義肢・義足の世界へと直結したものとして描かれている。そうした背景をうまく用いて、義肢・義足の周辺に関わる者達の感情をいり混ぜながらミステリを構築してゆく手腕はなかなかのものといえよう。
さらには、数多くの伏線をきちんと見事に回収していく事件の真相の解き方についても申し分なく、ミステリ作品としての完成度も充分うかがえる内容に仕上げられている。
気になる点としては、捜査する側が専門家ではなく一般人ゆえに、人間関係のみを調べているようにしか感じられないと思われたのが微妙なところ。ただ、その割には事件の解決が奇妙なくらいにうまく事が運んでいたと感じられたのは不思議なところである。
また、よくできている作品ながらも、リーダビリティという点に関しては弱かったと思える。これは主人公らがあまりにも一般的な人物であったせいなのかもしれないが、、社会派ミステリ的なバランスとしては、このくらいのものなのかもしれない。
とはいえ、こうした面に関しては作品を書き続けてゆけば充分クリアできる面であると思えるので、特に欠点というようなものでもないのだろう。今作は思っていたよりも本格ミステリ色が濃かったので、次回作にも十分期待がもてそうである。
<内容>
「届かない招待状」
「帰らない理由」
「答えない子ども」
「願わない少女」
「正しくない言葉」
<感想>
本書の帯に「何時だって何歳だって女の友情はめんどくさくって、あやうくって、美しい」と書いてあるのだが、まさにその通りの作品。男の身からすると、“めんどくさくって”という部分が強調されるように捉えられるような。
特にそのめんどくささが表れているのが「届かない招待状」。個人的には、親しい人物から招待状が届かないのなら、直接聞くか、もしくは行かない、ということになるであろう。しかし、主人公のとった答えは、呼ばれていないのに出席する。それもだらだらと負の方向に悩みながら。その真相は!? というのが、本編の目玉であるのだが、それよりも“めんどくささ”というもののほうが際立っていたような。
「帰らない理由」は、亡くなった友人の家に訪れた二人の男女が互いに何かを秘めて、帰ろうとしない話。
「答えないこども」は、親バカが引き起こすママ友同士のトラブル。
「願わない少女」は、友人に流されつつ、漫画家を目指してしまう少女の話。
「正しくない言葉」は、老人ホームでのちょっとしたトラブルを描く。
どれもがありえる話なのだが、はたから見ると、しょうもないとも感じてしまう内容。ただ、同じようなことを経験したことのある女性にとっては共感できる内容なのではないだろうか。めんどくさい話と切って捨てるか、あるあると共感するかは、まさしくあなた次第。
<内容>
私、桑山ミラは陸上競技に打ち込む普通の女子高生。普通の女子高生ゆえに普通の学校生活を送っていたのだが、深山サギリが転校してきてから事態は急変する。私は次第にサギリと仲良くなっていくものの、どこか得体の知れない性格を隠し持つサギリに不安を感じてゆく。そして、夏休みになりサギリの別荘によばれ、共に過ごすことになったとき、惨劇の幕があがる・・・・・・
<感想>
だいぶ前に芦原氏の作品を読んだことがあったのだが、あまり肌が合わないという気がし、それ以後読もうとは思わなかった。今回この作品が“ミステリーYA!”という企画から出ていて、そこそこ良いという評判を聞き、読んでみたしだいである。
実際に読んでみた感想はというと、そこそこ良いというくらいの感想である。この作品はできることなら中高生くらいのときに読んでおきたかったと思える作品であった。大人が読むよりはずっと共感できるのではないだろうか。
物語自体よりも主人公の性格やその周りの環境など、そうした設定が巧妙な語り口で展開され、雰囲気を楽しむことができる作品となっている。これは読んで損はない作品といえるであろう。
物語は後半になってようやくミステリとしての展開を見せるのだが、これに関してはあまり大人向きとはいえない。それなりにミステリっぽくは見せているものの、なんかやたらと穴のある大雑把なものとなってしまっている。犯人像や動機など、それなりにきちんと締めているところはあるものの、それ以外もきちんと書いていなければ全体としては評価しにくいものとなってしまう。
とはいえ、本書はただ単にミステリ作品としてとらえるよりは、ひとりの女子高生が体験した物語として考えたほうがよいように思える。ただ、よくよく考えてみれば、女子高生の青春物語として統一した話にしたほうが、もっと面白かったような・・・・・・という気がしないでもない。
<内容>
ミステリ愛好家たちが集う掲示板“猟犬クラブ”。そのサイトに書かれていた事が現実の殺人事件へと発展する事に! 会員制のサイトであるがために、事件を起こした犯人は“猟犬クラブ”のメンバーのうちの誰かだろうと疑いがもちあがる。会員たちが警察に事態を公表するのを躊躇している間に事件は連続殺人へと発展してゆくこととなり・・・・・・
<感想>
ここ最近のミステリ・フロンティアのなかでは一番ミステリらしい作品と言えるのではないだろうか。なんとなく、かつてのメフィスト賞あたりで出てきそうな作風と感じられた。
内容は匿名の掲示板で書かれていた事を発端とし、次々と事件が起こっていくというもの。掲示板内では、皆がハンドルネームを使用していることにより、それぞれの人物特定ができない状態。そういったなかで、サイトのメンバーたちは疑心暗鬼におちいってゆく。
当初、読み始めたときは多人数による視点が気になり、もう少し登場人物を絞った方がよいと思われた。しかし、話が進むにつれ、多視点による書き方にも意味があると感じられ、また話もきちんとまとめていることから、この書き方にも十分に意義があると納得させられた。
ミステリ的な要素もふんだんに取り入れられ、基本的には満足させられた内容。あとできれば探偵役のものをもう少ししっかりと書いてもらいたかったが、そこはあえて多視点としたことによるものであるからしょうがないとも言えなくもない。
ただ、個人的に気になったことがひとつ。最終的に、どんでん返しがいくつかあるのだが、最後の最後で明らかになった真相で解決してしまうと、それまで描かれていた心理描写に矛盾が生じてしまうのである。それをただ単に病気みたいなことで決着が付けられてしまうと、どうにも納得がいかなくなる。よって、私的にはその前の解答くらいで十分であったのではないかと思われる。あえてミステリ作品として挑戦するからには、細かいところも気を使ってもらえたらと思うのだが。
<内容>
名探偵・阿久津透の助手である火村つかさは、10年勤め上げた探偵助手を辞職した。阿久津が連続殺人事件を解決したのであるが、その際に刑事であった火村つかさの兄が犯人の手にかかり死亡したのである。火村つかさは、阿久津はあえて犯人をあぶりだすために、つかさの兄を見殺しにしたのではないかと疑いを持ち始め、探偵助手を辞職することを決めたのであった。そんな折、つかさの元に黒崎という刑事が接触してくる。彼は阿久津が中学生時代に関わった事件について疑問を抱いていた。このときの真犯人は阿久津ではないかと。それを証明するために黒崎は阿久津に対して探偵弾劾裁判を行うことを計画していた。火村つかさは阿久津に対する復讐の為に弾劾裁判の計画に加わることとなり・・・・・・
<感想>
新たな新人発掘プロジェクト“Kapp-Two”を立ち上げ、その最初の作品という事で期待したのだが・・・・・・いや、これは久々に酷いと感じられた作品。読んでいる途中、最初から最後までずっと、もう読むのやめようかと葛藤しながら読み続け、なんとか読了したという始末。
まずは長い。別に長い作品が悪いというわけではないのだが、その長い作品を書くだけの力量がないのに、これだけの分量の作品を処女作として出版させるのはどうかと思わざるを得ない。もっと色々な作品を書き上げてから、この内容・分量の作品に挑戦すべきではなかったかと。
内容は名探偵と呼ばれる男の今までの言動に疑問を持った者たちが、探偵に対して弾劾裁判を行うというもの。しかも単なるミステリではなく、そこに幽霊の存在や“転生”といったSFっぽい設定までもが持ち込まれている。
最初は、西澤康彦氏が描くようなミステリが展開されるのかと思っていたのだが、その転生に関しても最終的にミステリに対し、どれほどの効果があったのかと疑問を抱いてしまう程度のもの。むしろ急な転生のちぐはぐさ加減が目立ってしまったように思える。
最終的に明かされる真相により著者が何をやりたかったかは伝わっては来る。ただ、それを行うのに、余計なものが多すぎたのではないかと思えてならない。また、探偵役を務めるべき人が務めずに、探偵役としては役不足と思えた者が最終的に推理を行うことになるというのも微妙に思えたところ。と、欠点をあれこれと挙げていてはきりがない。
個人的にこの作品については、著者云々ではなくて、これを出版する側に問題があるのではないかと感じてしまう。新人発掘プロジェクトを行うという前提ありきで、焦り過ぎたのではなかろうか。
<内容>
「Aサイズ殺人事件」
「2DK蟻地獄つき」
「靴と媚薬と三人の女」
「二重人格の死」
「裸足で天国へ」
「古物の好きな死体」
「葉桜の迷路」
「ハーフ・ムーン殺人事件」
<感想>
“安楽椅子探偵”ものの短編集。“安楽椅子探偵”のシリーズといえば、有名どころでいくつかあるが、本書はそういったものに引けをとらない、良質の短編集としてでき上がっている。本書の何がいいかといえば、探偵の一連の推理の流れが決まっているところがシリーズらしくて良いのである。
まず刑事が探偵役の和尚のもとに事件を持ってくる。囲碁を打ちながら、その事件の詳細を話してゆく。そして和尚がその事件に対して調べてもらいたいものを刑事に話し、そこでその場はお開き。後日、刑事が調査した結果を、これまた囲碁を打ちながら話していくと、それを聞いて和尚が事件を解決していくというもの。
本書の特筆すべき点は、なんといっても、和尚が刑事に対して調べてもらいたいと依頼する事項についてである。その事項が毎回、なんでこんなこと調べなきゃならないのという突飛なものばかりなのである。しかし、刑事は和尚の実力を認めていて、どうしてなどとは聞きもせず捜査に出かけてゆく。そして突飛ともいえる調査事項を刑事が調べた結果から導き出す和尚の推理の飛躍ぶりはかなり面白い。時には飛躍しすぎと思わないでもないのだが、よく考えるものだと思わず感心してしまう。
ブラジャーのサイズ、蟻の好き嫌い、ネクタイの色等々。奇妙な質問から謎解きされる事件の数々、ぜひとも読んで楽しんでもらいたい。
<内容>
「コーヒー党奇談」
「霧を見た男」
「橋のたもと」
「青い箱」
「水の流れのように」
「父に会う」
「砂の時間」
「地の果て岬」
「横書きの封筒」
「田沢湖まで」
「守り神」
「土に還る」
<感想>
ミステリー集というよりは“綺譚集”と表現したほうがよい作品であろう。どの作品も少し変わった出来事が盛り込まれており、その“綺譚”を中心に物語が進められている。
それぞれの作品を読んでいて、どれも旅愁とか郷愁を思い起こさせるものになっているなと感じたのだが、それもそのはず、これらの作品は旅行雑誌に掲載されたものとの事。
一編目の「コーヒー党奇談」であっという間に引き込まれてしまった。“おいしいコーヒーの名前をつけた町”というフレーズに見事にやられた。解答が明かされてみればなるほどと思うのだが、それにしてもよく考えるものだなと感心しきり。
他にも、ミステリーのような話から幻想的な内容のものまで色々な“綺譚”がつまった作品となっている。他に印象的だったのは暗号を用いての少年との邂逅を描いた「横書きの封筒」あたりが良かった。
全体的に見ると、後半はややネタ切れかなと思えなくもなかったが、なかなか変わった作品集を読めて得した気分である。旅のおともにぴったりな一冊かもしれない。
<内容>
とある地方都市にて連続殺人事件が起きていた。犯人は殺人後に死体を焼却することから“フレイム”と呼ばれるようになった。高校生の甘祢山紫郎(あまみ さんしろう)は幼馴染がフレイムの第3の犠牲者となったことで絶望し、飛び降り自殺を図ろうとしていた。そんなとき、銀髪の異質な女性から呼び止められ、自殺を思いとどまることとなる。その銀髪の女性は音宮美夜と名乗り、警察に頼まれて殺人鬼の正体を暴こうとしているのだと言う。彼女は“キョウカンカク”という音を視覚で見極める事ができる特殊な能力を持っていると言うのである。甘祢は音宮の助手となり殺人鬼を追い詰めようとするのだが・・・・・・
<感想>
意外と良かったかもしれない。まぁ、内容全般としては普通のサスペンス・ミステリという気がしたのだが、事件の動機や後半の展開はなかなかのもの。ただ、それだけに中盤の地味な展開が惜しまれるところ。
本書の一番のポイントとなるのは、主要人物のひとりである音宮美夜という人物が持つ“キョウカンカク”というもの。これは、音を視覚化することにより、その人の内に秘めた感情を読み取る事ができるというもの。かつて井上夢人氏が「オルファトグラム」という作品で臭いの視覚化ということをやっていたが、本書もまさにそういう感じ。ただ、それが作中にて表現しつくす事ができたかというと、それほどでもなかったように思える。
特に中盤では、そのキョウカンカクが用いられるのが、ある人物を犯人だと名指しする場面で使われているくらいで、あまり有効活用されていなかったように思える。そういうわけで、序盤から中盤にかけては普通のサスペンス小説というくらいの感覚でしかなく、普通に事件捜査が展開されていったという感じ。
しかし、後半に入ってからは動きが出始め、見せ場も多くなり、最終的にはうまくまとめられていたと思う。最後の最後になってようやく“キョウカンカク”というものの存在がが生かされることとなった。
終わりよければ全て良し、ということで良いと思われるが、キョウカンカクというものの描写や世界をもっと描ききる事ができれば、すごい作品となることであろう。今後筆力や表現力が上がってくれば、もっと良い作品を書いてくれるだろうと期待したい。
<内容>
とある地方都市で連続通り魔事件が発生した。最初は犬や猫が被害にあったが、やがて人にも魔の手が及ぶことに。そうしてついに殺人事件が起きてしまう。“共感覚”を持つ探偵の音宮美夜は警察に依頼され、この事件の捜査をすることに。すると、城之内安澄という女子高生になつかれ、彼女と活動する羽目となる。事件の容疑者は元警察官僚の最上倉太郎。偶然にも最上の孫娘と安澄は友人同士の仲だという。美夜は事件を捜査してゆくものの、決め手となる証拠がなく、いつしか美夜自身が追い詰められることとなり・・・・・・
<感想>
著者の第二作品となるのだが、基本的な印象は前作と変わらない。序盤はまぁまぁ、中盤は退屈、後半はそれなりに。というような感じ。
前作に引き続き惜しいと思えるのは、中盤の惹きが足りないこと。もう少し読ませる力が欲しいところ。また人物造形に関しても、わざとやっているのかもしれないが、欝屈した人物ばかり出てくるがゆえに、そういった方面でも物語に引き込まれることがない。もう少し、なんらかの工夫が欲しいところ。
前作に比べれば“共感覚”の描写も少なくなったように思える。そうすると、単なる通俗のサスペンス小説となってしまうので、細かいところにもぜひとも力を入れてもらいたい。なんとなく今作はトーンダウンしてしまったという気がしてならないので、次回作に期待。
<内容>
ミステリをこよなく愛し、それがゆえに敬愛する探偵たちを空想で呼び出してしまう雨崎瑠雫と、その空想を唯一見ることができる宇都木勇真。二人は大学生であり、大学のミステリ研に所属している。ある日、二人の知り合いであった有名女優・日下部陽子が死を遂げる。宇津木と陽子の夫の二人がその発見者となる。しかし、現場の部屋は全て鍵がかけられた状態で誰も出入りすることができず、一見自殺かと思われたのだが、現場には凶器がなく・・・・・・
<感想>
密室というものに対するこだわりと発想が面白かった。トリックもなかなかのものであったが、それよりも“密室”というものに対しての動機の方が興味を惹かれた作品である。これはなかなかの佳作といえよう。
ただ、物語を引っ張っていく力がなさすぎるところが難。登場人物も物語上、余計と思われるような能力や設定しかなく、話に色を添えているとは決して思えない。最近のミステリは奇妙な性格や奇怪な能力を持った者が探偵役となるのが定番であるが、その設定がうまくいっていないと思われた。とはいえ、そう思えたのは私だけで、これくらい際立ったものが“イマドキ”なのかもしれない。
個人的には、書かれている内容については目を惹くところがあるので、あとはリーダビリティが高ければよりよい作品になるであろうと感じられた。“キョウカンカク”シリーズというものも書いているが、そういった設定にこだわらず、どんどんと作品を書き上げてもらいたいものである。
<内容>
国の法律により葬式を行うことが規制される中、唯一葬式を行い続けるS県。北条紫苑は、父親から継いだ葬儀社を少数の社員と共に守り続けていた。そんな彼らのもとに変わった葬儀の依頼が舞い込み続ける。
<感想>
読み始めた時の印象は葬式というものを変わった視点から見つめつつ、その在り方について考えた社会派的な作品なのかと思われた。しかし、読んでいくにつれ、徐々にミステリとしての要素が濃くなり始め、最終的には思いもよらなかった着地点へと到達することとなる。
本書は連作短編集のような構成になっている。無理難題の葬式を押し付けられた葬儀社の面々が右往左往するというような内容。こういった短編集というのは、最初はミステリ的なものが濃いのだが、だんだんとそれが薄まっていくというものが多い。それがこの作品は後半へと行くにしたがって、しだいにミステリとしての内容が濃くなっていくという珍しいもの。棺の中から死体が消えたり、死者の叫びが聞こえ続けたりと、不可解な謎が乱れ打つ。
そうして最後には唐突ともとれるような波乱の展開が待ち受けている。それはミステリ作品としては、当然の展開とも思われつつも、ここに至るまで考え続けられてきた“葬式の在り方”という観点においては反するのではないかとも感じられた。それによって、やや中途半端な印象に落ち着いてしまったというのも、また事実。
とはいえ、“葬式の在り方”とか、思いもよらぬ濃いミステリ的要素とか、数々の読みどころがある作品。これはなかなかの佳作であると言えよう。
<内容>
ディー探偵社に依頼された奇妙な内容。二人の探偵に、こちらで指示する家に来てもらい、そこで一泊してもらいたいというのである。スタンリーとケンウッドの二人は指示された家へと出向く。そこで出会う、言葉数の少ない奇妙な人たち。二人はその家に泊まったのだが、明け方大きな物音がして目を覚ます。すると彼らは4体の首と片腕が欠けた死体を発見することに! あわてて彼らの上司である探偵のディーと警察を連れて現場に戻ってきたのだが、死体は消え失せていたであった。いったいこの奇妙な出来事は何を目的としたものであったのか? ディー探偵社はこの奇妙な事件を捜査していくのであったが・・・・・・
<感想>
昨年それほど話題にならなかったので、あまり期待せずに読んだのだが、思っていたよりは面白かった。昨年の鮎川哲也賞はこの作品と「太陽が死んだ夜」が同時受賞となったのだが、私個人としてはこちらの「ボディ・メッセージ」に軍配を挙げたい。
本書の一番の魅力は、提示される謎にあると言えよう。何ゆえ、二人の探偵をわざわざ連れて来て、四体の部位が欠損した死体を見せる必要があったのか。さらには、その死体を丁寧に片付けなければならなかったのか。そして事件を調べていくうちに不可解な事象が次々と挙げられ、謎はますます混迷の様相を増していくことになる。
そうした謎の解答についても、悪くはなかったと思われる。ただ、犯人像というか、動機というか、部分部分にあいまいに感じられた点があったのがやや残念であった。
さらに付け加えれば、探偵の数が多すぎるようにも思える。わざわざ名探偵役として、日本人を出してくるというのも無理があったような気がする。さらには、最初に探偵の一人がクイズを出し、それが真相に結びついているのだが、それであればクイズを出した張本人が真っ先に真相にたどり着かなければおかしいのではないかと、切に感じられた。
と、荒を挙げればきりがないのだが、大筋ではいい線行っていたようにも感じられる。“奇想”を見据えた本格ミステリ作品としていい味を出していたのではないだろうか。こういった大味な作品が個人的には好きなので、今後もこういう作風のものを期待したいところである。
<内容>
都内のレストランで爆破事件が起きた。死者は20名以上に上り、その中には同窓会で集まっていた14人の男女がいた。この同窓会で集まっていたうちのひとりのバッグの中に爆発物が入っていたことが確認され、警察は誰が何の目的で事件を起こしたのか、捜査を始めていった。
そうしたなか、別の事件が起こることに! 一軒の家に集まった20代の女性5名が服毒自殺を遂げていたのだ。自殺なのか事故なのか犯罪なのか、警察が捜査を進めるもはっきりとした見当はつけられないままであった。事件がこうちゃくするなか、被砥功児(ピート・コージ)の探偵事務所に挑戦状が届けられる。二件の事件は同一犯によるものであると・・・・・・
<感想>
デビュー作の「ボディ・メッセージ」が粗削りながらも気になっていたので、2作目も単行本で即購入。読んでみると、これまた粗削りなようにも思えるのだが、どこか放ってはおけないようなミステリ作品として仕立て上げられている。
この作品は爆弾事件や集団服毒事件などといった、複数の被害者が存在する事件を題材として扱っている。警察が事件の捜査を進めていくうえでは、事故なのか自殺なのか決定的な判断がつかめない状況。仮に犯人がいたとするのであれば、何のために、何故このような形で事件を起こそうとしたのかが問題となる。さらには、これら事件にかかわりがありそうなものを見つけようとするのだが、犯人の影をとらえることすらできないまま、新たな事件が起きてゆくこととなる。
本書の一番の焦点は、見えない犯人の正体にある。その正体は、やや社会派ミステリ的ともいえるような、実に現代的な問題をとりあつかったものとなっている。また、ただ単に社会派のようなミステリになっているのかといえば、そういうわけでもなく、歌野氏の「密室殺人ゲーム」をほうふつさせるようなトリックを使っていたりと、練りに練った内容になっている。
パズルのピースがきっちりはまるとか、伏線が完璧に回収されるとか、そういった作品として出来上がっているわけではないものの、力技を用いながら最終的にはきっちりと納めるべきところに収めようとしている作品。なんとなくではあるが、今後すばらしい作品を書き上げてくれるのではないかという予感を感じさせる作家である。
<内容>
作家アマンと担当編集者のもとに持ちよられた謎を解決しようとしながら、閉じ込められた密室から脱出し、謎はいつの間にやら勝手に解けているという連作短編集。
「パンク少女と三日月の密室」
「ノイズの母と回転する密室」
「DJルリカと四角い密室」
「メロデス美女とドアのない密室」
「密室魔と空中の密室」
<感想>
日常系ならぬ、非日常系。いや、ミステリ作品というのは、基本的に非日常のものであったか。作家アマンのもとに色々な謎が持ちよられるのだが、謎自体は“日常系”のような様相を示している。しかし、それをひも解いてみると、奇想天外な予想の斜め上を行く(決して良い意味ではない)結末ばかり。
しかもこの謎を探偵役の作家と編集者が解いているわけではなく、事件はいつも勝手に解決してしまっているという奇妙な作風。さらには、何故かこの主人公の二人は、毎回大がかりな仕掛けのある密室に閉じ込められて、そこから脱出することを余儀なくさせられる。
最終的には、何故毎回毎回密室に閉じ込められなければならないかという謎が、奇妙なタイトルの意味と共に脱力系に解決される。変な内容の作品であるが、それでも音楽とミステリに対する愛が感じられることがなくもない・・・・・・ような気がしなくもない。ミステリ作品を読み疲れた方にお薦めしたい、ちょっと一休み的な作品。
<内容>
俺・椚田は、かつての友人に頼まれて友人の叔父であるという医院にやっかいになり、そこで医者を勤めている。ただし、俺は医者の免許は持っていないモグリの医者である。そんなある日、中学生の3人組が1人が怪我をしたと言い病院にやってきた。友人を連れてきたひとり、圭一と名乗る子は俺に強い印象を残した。後日、お礼に来た圭一であったが、彼からとある郵便の受け取り手となって、それを預かってほしいと頼まれる。その後、ニュースで圭一が殺害されたことを知る。俺は、圭一が何故殺害されたのかを突き止めようと事件を調べ始める。すると、中国マフィアの抗争に巻き込まれることとなり・・・・・・
<感想>
新人作家・安萬純一氏の4作品目くらいになる本であると思われるのだが、既に中堅作家といってよいくらいの安定度。最近の作家は本を書くのがうまくなっているなと、感心させられることが多くなったような気がする。
内容はモグリの医者が友人となった中学生の殺人事件をマフィアの抗争の間を縫って、命をかけて調べていくというもの。その間、モグリの医者が幾人かの人々に助けられたり、周囲の人々の気遣いに気づいたりし、孤独や過去から脱却する様子を描いた作品でもある。
サスペンスミステリとして、なかなか面白いと感じられたのだが、冷静に考えてみると物語上、マフィアの抗争を取り上げた意味があまりなかったような気がする。アクション上はメリハリが出るものの、人間模様を描く作品とするならば、むしろもっと落ち着いた状況で友人の事件や自身の過去について掘り下げたほうが良かったのではなかろうか。
と言いつつも、新人作家ゆえに、どんどんと色々な作品に挑戦していってもらえればと思っている。ただ、本格ミステリに関しても、忘れずに書き続けてもらいたい。
<内容>
普通の女子高生・樫岡莉世は、怪人物・冴島丈と出会い、彼と共に普通の生活から抜け出し、城へと赴くこととなる。その城とは、莉世の父親が門番として働いているところでもあり、大金持ちの男が王様として君臨し、中世をイメージした世界の中で人々が暮らすという奇妙な場所。莉世は、その城からの呼ばれたという丈と共に向かうのであるが、その城で王様が殺害されることとなる。容疑者は、その日特別に呼ばれたという吸血鬼、狼男、ミイラ、ゾンビの四名。奇妙な場所での奇怪な容疑者、そんな状況の中で冴島丈は、依頼を受け犯人を捜すこととなるのだが、城では更なる殺人事件が起き・・・・・・
<感想>
最初は普通の女子高生の日常から始まるのだが、唐突に奇妙な展開へ。なんでも女子高生の住む家より上の土地に、資産家が建てた城があり、そこでは日本人が中世ヨーロッパの人々のような暮らしをしているという設定。さらには、その設定のみならず、吸血鬼や狼男といった架空の生き物までもが実在のものとして登場してしまう。
そうした設定を除けば、意外と普通の推理小説のような気が。とはいえ、それらの奇怪な設定が推理に大きくかかわってくることとなる。何しろ、城を統べる王様が殺害され、その容疑者となるのが吸血鬼、狼男、ミイラ、ゾンビとなるのだから。さらには、探偵役である冴島丈自身の謎や、城にまつわる謎等、奇怪な設定ゆえに謎めいたところはたくさんある。
なかなか読みやすい小説となっており、楽しんで読むことができる。ただ、上記に述べたような内容であるので、全体像がぼやけていて(というか、それらが謎ゆえに)世界観がはっきりしないまま読み進めなければならないので、若干ストレスがたまることとなる。
そうして終幕を迎えるのだが、最後のすべてが明かされることにより、実は探偵役の冴島丈がしっかりと探偵活動を行っていたのだとようやく気付くこととなる。そして、全ての設定に解釈や真相が明かされることにより、はっきりとした世界観(というより、人物相関図的な)が示される。
と、それなりに楽しめたのだが、あまり強烈な印象が残るようなものはなく、読み終えてみると軽めのミステリという印象。よくできているのだが、架空ともいえる世界と現実の世界とのつながりが希薄過ぎて、どこかもったいなかったなと。とはいえ、読みやすく、手軽に楽しめるミステリ作品であることは間違いない。
<内容>
父親が再婚したものの、新しい家族に馴染めない高校生の天野美咲。彼女は自分の好きな作家・三島加深の秘密のファンサイトを発見し、そこで仲間たちと作品の意見を交わすことに夢中になっていった。そんなある日、ファン・サイトの管理者が主宰するミステリー・ツアーへの参加を呼びかけられる。そのツアーはそれぞれが架空の名前で参加し、あらかじめ与えられた台本通りに劇を進めていくという凝ったもの。さらに、劇中の謎を解くことができた者には三島加深の未発表作品を手に入れることができるというのである。天野美咲は他の6人の参加者たちと共にミステリー・ツアーに参加したのだが・・・・・・
<感想>
第12回「本格ミステリ大賞」の候補作品に挙げられたことにより読んでみた作品。昨年出た作品であるのだが全くのノーマーク。内容を想像しにくいタイトルとなっているが、読んでみると、意外ときっちりと本格ミステリしていたと感心させられた内容。
一人の亡くなった作家をめぐり、そのファンたちが未発表作品を入手するために、ミステリー・ツアーへと参加する。その架空の作家による架空の作品の文章をちりばめ、文学的な香りを漂わせている。なんとなくではあるが、ほしおさなえ氏のような作風という感じであろうか。
当然のことながらミステリー・ツアーが普通に終わるわけはなく、ひと波乱ふた波乱とあり、主人公を含む登場人物たちは謎に追われてゆくこととなる。作風としては、ちょっと変わっていて良いと思われたが、ミステリ作品としてはそこそこか。ラストで、最近の決まり切ったお約束のようにどんでん返しみたいなものがあったが、普通にストレートに真相を出したほうが良かったように思われる。また、ラストがエピローグまでがやや冗長な気もした。
とはいえ、本格ミステリ大賞の候補作に挙げられたことによって、この作品を読み逃さずに済んだことは素直に喜びたい。普通のミステリ作品という気はしたものの、著者なりの世界観というものを持っていて、きちんとした作品に仕上げられているところは良いと思われる。
<内容>
三年に一度だけ行われる桐乃高校文化祭。その文化祭の準備が学校内で大々的に行われていた。そんなときに大きな事故が起こる。生徒が巨大壁画を吊り上げていた最中に、偶然火災が起こり、巨大壁画が落下し、生徒らがその下敷きになってしまうという・・・・・・
相原円らが目覚めると、そこにはいつもの風景が広がっているものの、人が全く存在していなかった。その異様な世界に取り残された5人の桐乃高校の生徒。彼らの運命は!?
<感想>
「夏の王国で目覚めない」で注目された彩坂氏の新作。どんなものかと思い読んでみたものの、内容はミステリ作品ではなかった。SF系青春サスペンスとでもいったところか。
詠み始めた時は辻村深月氏のデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」を思い起こさせた。あの作品のように5人の生徒が突如、他の人たちが存在しない世界に取り残されてしまう(閉じ込められる?)。ただし、ここで前述の作品と異なるのは5人の全員が知り合いだというわけではないこと。さらには、一人トラブルメーカーが用意されており、その人物が錯乱して他の4人を襲い始める。
そんなこんなで特に謎解きというものはなく、その異様な事件を通していくうちに、それぞれが抱え込む悩みなどに一定の整理がついていくという内容。悩みが解決していくというよりは、ひょっとすると大人になっていくという風に表現した方がよいのかもしれない。ゆえに本書は青春小説であるといったところか。
別に悪い内容というわけではないのだが、本格ミステリめいたものを期待すると肩透かしをくらってしまうかもしれない。あくまでも軽めの青春小説というところで、未成年向きの小説と言えるかもしれない。
<内容>
上原菜月は、過去に奇妙な体験をしたことがあった。それは、同じ1時間を5回繰り返すことになるというタイムリープ現象。菜月はタイムリープを過去に二回(7歳のときと、中二のとき)体験していた。それが今、高校三年生となった文化祭の当日、三度目の経験を果たすことに。しかも、その場で同級生の死に遭遇してしまう。タイムリープにより同じ時間が繰り返される中、なんとかその“死”を止めようとするのだが、どうしてもそれを阻止することができず、そして最後のタイムリープが始まり・・・・・・
<感想>
この作品を読み始めた時、西澤保彦氏の「七回死んだ男」を思い起こしたのだが、タイムリープという名前が付けられているのを見ると、このような設定の作品って多々書かれているのかなと。過去に2度タイムリープ(特定の一時間のみが、何度も繰り返される)を経験したことのある女子高生が、文化祭当日に3度目のタイムリープに遭遇するという話。
謎解きというよりは、スピーディーなサスペンス小説として読むことができる作品。主人公のそれまでの経験が語られる序盤を過ぎた後、本番の文化祭に入ってからは一気に読めてしまう内容。学園ものとしても面白く読むことができた。
ここに登場する主人公、タイムリープの経験のせいで、成長の途上で色々と悩んだり、またそのせいで高校の友達とうまくいかなくなったりと不遇の人生を歩むこととなる。しかし、この物語が終わってみれば、何気に充実した学園生活を送っているのではないかと、主人公をうらやみたくなるほど。また、変に嫌な人物は登場せず、嫌な出来事もたいして起こらないため、読了後は爽快感がもたらされるところも特徴。
<内容>
空から降ってきた塩の塊により、世界が塩に埋め尽くされようとしていた。人々は塩に化して死んでいくという病にかかり、社会は崩壊寸前であった。そんなとき、ひとりの青年が重い荷物をしょって、ひたすら海へと向かっていた。そんな彼の前に現れたのは、東京で細々と暮らす少女の真奈と、彼の保護者である秋庭であった。
<感想>
有川浩氏の作品を読むのはこれが初めて。以前から本屋では何度も見かけていたので興味はあった。するとこの「塩の街」という作品が角川文庫から出版され、しかもデビュー作であるというからちょうどよいと思って手に取ってみた。驚いたのは、電撃文庫からデビューした作家であったということ。最初はファンタジー系の作家を目指していたのだろうか!?
本書は、SFといってもおかしくないような設定。「EDEN」という有名な漫画作品を思い浮かべてしまった。ただし、内容はそんなゴリゴリの難しいものではなく、単純なラブストーリーといってもよいもの。それでもキャラクターがきちんとしていて、登場人物も絞られていて、読みやすく親しみやすい小説であった。
また、私が読んだ角川文庫版は改訂増補されたものであり、“塩の町、その後”という4つの短編が掲載されている。物語の流れ的には蛇足のような気がしてならなかったが、“完全版”という位置づけであるから掲載されているのもしょうがないことであろう。
とりあえず、変わった設定の読みやすい物語という感想。なかなか良い話であったと思う。この作品を読んだだけでは、とても有川氏がどんな作家だということはわからないので、他のも色々な作品を読んでみたいと思っている。
<内容>
実在のものとは異なる世界。2019年(正化31年)、公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」が成立してから30年。その間、法を守るものと反対するものとの間で抗争が激化した。各地にある図書館は特務機関からの武力行使に対抗すべく防衛力を追及してゆくこととなる。そうして図書館には自衛隊も顔負けの防衛隊が整備されることとなった。
笠原郁は大学卒業後、図書隊に入ることを希望し、そこで猛特訓を受けることとなる。志望動機は、高校生のころ本屋で図書隊員に助けられたことがあったから。そんな彼女の上官・堂上篤は必要以上に郁をしごき、罵声を浴びせる。そうした日々を送りながらも郁は徐々に一人前の図書隊員となりつつあるのだが、その道は困難なものであり・・・・・・
<感想>
内容のところに文章を書いてみたものの、やや硬い表現になってしまったなと。実際には、コミカルな表現で親しみやすい内容である。
今更ながら、自分は有川氏の作品はこれを含めて2冊しか読んでいない。一応、その2冊を読んだ上で感じた有川氏の作風については、変わった設定・状況のなかで男女のコミカルなラブストーリーが展開されるというものを感じ取った。男女の関係については、赤面してしまいそうな普通のラブコメ風のもの。ただし、そのラブコメがとんでもない状況のなかで行われているというところが特徴と言えよう。
この作品ではタイトルの通り、図書館で攻防戦が繰り広げられるというとんでもない状況下。しかもそれが、なさそうで、ありえそうな世界。ここまでの武力行使はともかくとして、表現の自由ということに関しては、ここで書かれているような論争がたびたび繰り広げられていることは事実。そうした実情を自衛隊の世界を持ち出して描き出しているのである。
物語は単純明快なようでありながら、複雑怪奇な部分もある。しかし、その複雑さを非常にわかりやすく表現し、取っ付きやすくしているのがこの著者の力量といえよう。荒唐無稽な世界ながらも、どこか納得させられてしまう部分が存在するのである。
実はこの本、単行本で出ていたときから気になっていて、早く文庫化してくれないかなと思っていたのだが、なかなか文庫化してくれなかった。しかし、シリーズ完結後に間髪置かずまとめて出してくれることになったので、待ったかいがあったというもの。続きも楽しみに読んでいきたいと思っている。
<内容>
図書館の防衛隊員として働く笠原郁をはじめとする面々。仕事の傍ら、彼らに無理難題が襲いかかる。
笠原郁は防衛隊員として働いていることを両親に秘密にしてるのだが、その両親が職場見学へと来ることに。小牧幹久は幼いころから面倒をみている耳の不自由な中澤毬江という少女がいるのだが、ふとしたことから毬江と小牧が騒動に巻き込まれる。図書館内で働く情報通の柴崎麻子には彼氏らしき人物ができたかのように思えたのだが・・・・・・。手塚光にはエリートの兄がいるのだが、思想的に図書館防衛隊の任務に就く光とは異なるものであり、その軋轢に悩むこととなる。
文庫版には書き下ろし短編「ロマンシング・エイジ」収録。
<感想>
ライトな作風と物語でありながら、重厚な思想と内容が盛り込まれるエンターテイメント小説。このくらいのレベルの作品こそが高校生あたりの課題図書としてふさわしいのではないかと考えたりもする。
今作は連作短編のような内容。それぞれのキャラクターがたってきたということもあり、図書館防衛隊員の面々がさまざまな難題に遭遇する。それら難題を乗り越えて無事ハッピーエンドといきたいところであるが、そううまくはいかず、次巻以降に持ち越しの案件もしばしば。
このシリーズはストーリーとしては極めて単純とも言えるのだが、そこに設定される図書館を中心とした条例やら思想やらについては小難しいものがある。しかし、この架空の設定を通すことにより、現代社会において閲覧の自由というものがいかに保たれているのかということがわかるようになっている。
<内容>
あこがれの王子様の夢を追い続けていた笠原郁であったが、その正体が直属の上司であることを知ってからは互いの関係がぎくしゃくすることに。しかし、そんな関係をよそに図書館にはさまざまな問題がふりかかる。図書館内での痴漢事件、郁ではなく優等生である手塚が悩むことになる昇任試験、タレントのインタビューの内容から発展した言語の規制による事件。そして、はからずしも郁の里帰りとなる茨城図書館での警備。さまざまな混乱を図書館防衛隊員らはどう乗り越えるのか!?
DVDの初回限定版特別冊子に掲載された短編「ドッグ・ラン」を収録。
<感想>
今作の目玉と言えば、第4章の「里帰り、勃発−茨城県展警備」におけるど派手な攻防戦と言いたいところだが、それよりも他のちょっとしたエピソードのほうが図書館戦争のシリーズらしいと感じられた。
第2章の「昇任試験、来たる」では、実技試験で子供に読み聞かせをすることとなり、劣等生の郁よりも優等生のはずの手塚のほうが悩むこととなる。その悪戦苦闘ぶりと、いかに子供に飽きさせずに本を読み聞かせるかという手腕が実に興味深い。また、この章では脇役となってしまったものの主人公である郁の成長ぶりもうかがえる。
本書で一番印象に残ったのは第3章の「ねじれたコトバ」。これはインタビューを本に書き下ろす際にひとつの言葉が規制にかかっているということで別の表現に差し替えたことにより起きた事件を描いたもの。これは実情の世界でも似たようなものはあるかもしれない。実際に書籍でも、昔の本が復刊される際に、現在では不当な表現であるがそのまま残しました、などという注釈をよく見かける。この「ねじれたコトバ」では、そのような例をやや過剰気味に描いたものであるが、戦時中のことなどを考えると過剰というほどでもなく、実際にありえてもおかくしない世界なのではないかと考えさせられる。
本書は恋愛やアクションといった様々な要素を用いて描かれたエンターテイメント小説であるが、そういったなかで表現の自由というものが実際にどれほど重要であるかということがさかんに語りかけられているようでならない。また、そうした自由を守るのは図書館防衛隊といったような組織ではなく、国民のひとりひとりが考えていかなければならない問題であるということも痛感させられる。
<内容>
原発テロが発生した! 原発に関する大きな被害はなかったものの、テロ組織が用いた方式が、とある小説の内容に酷似していたため、その小説の作家・当麻蔵人に良化委員会の魔の手が伸びようとしていた。それを事前に察知した図書隊員たちは当麻を先に保護し、かくまうことに成功する。図書館側はこの事件を機に、メディア良化法の撲滅を図ろうと動き出す。
<感想>
図書館シリーズの第4弾にして、最終巻。著者は、図書館シリーズを通して、これを書きたかったんだなと納得の内容。今まで“メディア良化法”というものの中で生き、それに翻弄される図書隊員達の様子が描かれてきたが、いよいよその法に反撃の狼煙をあげる作が練られることとなる。
“メディア良化法”というものは、この作品を読んでいくと恐ろしい法律であるということがわかる。しかし、その内容に直接かかわることのない人にとっては、そんな法があることさえ知らぬままとなってしまう。それが長い年月をかけて根をはり、ふと気が付いた時には、その法律から見動きがとれぬ状態になっていることをようやく理解することとなるのである。
これは単なるフィクションではなく、こうしたものが実は数多く隠されているのではないかと思われる。ただし、それらは決して隠されているというわけではなく、公に出ているのだが、時にわかりにくかったり、時に当事者以外は関係なしとみなされたりと、そのような状況の中で存在し続けているのであろう。
本書では、ようやくこの法案に反旗を挙げる活動が繰り広げられるのだが、やはり長い歴史を経てきたものには、そう簡単に太刀打ちできるものではない。たとえ、それが公に出て悪法だとあからさまになったとしてでも。
こうした戦いにもようやくひと段落が訪れ、長きにわたる戦いも、終結とまではいかないにしろ、分岐点となるべき事態が起こることとなる。さらには、予想通りであるが、恋愛模様を繰り広げてきた二人にとっても、ひとつの決着が訪れることとなる。最後の方はどうなるかと思いもしたが、基本的にハッピーエンドというスタンスを貫き続けてくれたので、安心して読み続けることができた。この物語にふさわしい、幕の引き方と言えるであろう。
<内容>
国産輸送機開発プロジェクトにより、試作機が試作運転を行っていたのだが、高度2万メートル上空で爆発事故を起こしてしまう。その事故の調査をしていた自衛隊機も、同じ場所で事故を起こしてしまうことに。高度2万メートル上空でいったい何が起こったというのか!? ちょうどそのころ、高知県の海辺で二人の高校生が謎の生物を拾っていた。その生物は携帯電話を介して、人間とコミュニケーションをとることができるのであった! いったい、その生き物の正体とは??
<感想>
メディアワークスといえば電撃文庫で有名であるが、その電撃文庫であえて出さずに単行本として出版されたのがこの作品。ライト系の味を残しつつも、しっかりとしたSF作品ともとらえられ、単行本化されたのも納得の内容。
タイトルからは想像できなかったのだが、内容はなんと未知との遭遇もの。この地球上で、不確定ともいえる生物に人類が突然遭遇する。ただし、話を広げすぎると収拾がつかなくなるので、日本の自衛隊組織の一部が、その未知の生物との交渉を行っていくという話。
単一体ゆえに、単一の思考しかできないゆえに、人類の考え方が理解できないものに対し、それを簡単かつ丁寧に交渉しようとする様がなかなかのもの。途中でさまざまな事件が起き、交渉は簡単にはいかないのだが、それをなんとかまとめようとする“大人の対応”が印象に残る。
また、未知の小生物を拾った少年少女の話も見逃せない。こちらは小生物とコミュニケーションをとろうとする様子が描かれている。それがやがて、“大人の対応”と“子供の対応”という差異として表されるところが現実的と感じられた。
SFとしての内容に、航空機のハード的な面、さらには大人の男女の恋愛から、高校生の淡い想いまで組み入れて、見事にひとつの作品として描き出している。もはやSFというよりも、極上のエンターテイメント作品と評したい。
<内容>
桜祭りにて解放された横須賀米軍基地。楽しいはずの祭りが一転、パニックに陥る。海から巨大なザリガニのような生物の大群が出現し、人々を襲い始めたのだ。潜水艦乗組員の夏木と冬原は逃げ遅れた子供たちを誘導し、埠頭に停泊していた潜水艦のなかへと非難する。また、現場を警備する立場の県警警備部は、限られた武器を駆使して、巨大ザリガニの進行を止めなければならなかった。一方、潜水艦に取り残された夏木と冬原は15人の子供たちをかかえたまま、潜水艦内での生活を余儀なくされ・・・・・・
<感想>
勝手にほのぼのとした話なのかと想像していたら、のっけから人間が巨大ザリガニの餌食となるというショッキングな幕開け。そこから物語は急加速しながら、潜水艦に取り残された乗組員と子供たちとのパートと、ザリガニ侵攻を食い止めようという警備部とのパートに別れることとなる。
最初は、自衛隊が出てきて応戦、という展開が考えられたものの、この作品を読むと実はそうは簡単に事が運ばないという事を知らされる。自衛隊は災害救助目的にしか武器の使用ができなく、この場合はそれに相当しないという事で武器を使えず、たいした装備をもたない機動隊員が事態収拾の矢面に立つこととなるのである。
個人的には、この機動隊と自衛隊の関係と対応のほうが話としては面白く、潜水艦に取り残された子供たちのパートのほうはさほど面白いとは思えなかった。何しろ、そこでの生活と騒動を描いているだけであり、事件自体にはなんら影響を及ぼさないパートであるので。ただ、後の「図書館戦争」で活躍する二人の前身となる人物が登場しており、彼らを元として後の作品が描かれたのだなぁという点については感慨深かった。
タイトル「海の底」というわりには、“海岸沿い”でほとんど話が片づけられていたような気もするのだが、物語としてなかなか面白かった。このような事態が実際に想定されるということは予想しづらいが、こういったことが実際に起こった時にどのような事態が発生するのかというシミュレーションを見せつけられたような感じにはさせられた。SF小説というよりは、シミュレーション小説として楽しめる内容の作品である。
<内容>
北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削基地にて、職員全員が無残な死体として発見された。救助に向かった陸上自衛官の廻田三等陸佐とその部下たちは、感染症の恐れがあることから施設に収容されることとなる。感染症学者の富樫博士が緊急で呼ばれ、事態を調査することとなったのだが、結局基地で何が起こったのかはわからなかった。そんなとき、北海道の本土でも同じような事態が持ち上がり、その地域一帯の生存者は“ゼロ”と・・・・・・。廻田と富樫は原因の究明に努めるのであったが!?
<感想>
内容としては、バイオハザードものである。未知の事態に対して、それらに挑む人々の様相が描かれている。主となる登場人物を絞って描いており、また難しそうな説明も簡潔に描いており、読みやすい作品として仕上げられている。ただ、個人的にはさほど興味がないテーマなので、全体的には普通というような・・・・・・このテーマに興味があるかどうかで、好みが分かれると思われる。
バイオハザードものと言いつつも、単なる感染症を描いているだけではなく、後半では予想外の方向へ展開していくこととなる。最終的には事態回収の方向へと向かうのだが、そのへんがやや淡白であったような気がする。どうも最初から最後までやられっぱなしで、もうすこし人類側にも奮闘してもらいたかったところ。
また、対応に追われる政府の情けなさが際立っており、これはまさに今の世相を表しているかのようにも思われる。とはいえ、その政府の対応に対して、どのように事態回収に向けていくべきかというほうが重要だと考えられるのだが、そこもなし崩しにしか書かれていない。これでは、政府も人類の対応も全て情けないままでしかない、ということのみが強調されているようにしか捉えられないのだが・・・・・・