美濃牛
フリーライターの天瀬は、石動という男から暮枝村という所に奇跡の泉があるという情報を聞き、半信半疑ながら仕事のためカメラマンの町田とともに岐阜県へ向かう。なんでもその泉で倉内という女性が癌をわずらった事によって、岐阜の保龍という男が主催するコンミューンへ行き、療養をしようとしたが効き目はなく、絶望のあまりあたりをさまよっていると奇跡の泉に出会ったことによって病状が回復に向かったという。
天瀬らは岐阜へ向かい石動と合同し、泉がある鍾乳洞の地主の羅堂家の人々に会う。足を悪くしたため隠居しているが名義上当主となっている羅堂陣一郎。飛騨牛を育てることに情熱を注いでいる陣一郎の長男、真一。成功しているとはいえない牛舎に嫌気をさし、都会にあこがれている真一の長男、哲史。美少女ではあるが何を考えているのかわからない、真一の娘で高校生の窓音。地元とは離れて名古屋で不動産業をしている陣一郎の次男、善次。これもまた名古屋で医者をしている陣一郎の三男、美雄。
そしてその周りで暮らす、面倒見のいい地区の有力者の出羽とその娘で哲史と付き合っている由香里。自称村長の藍下。
家を借り、コンミューンを主宰する保龍。そしてそのコンミューンの人々、何を考えているかわからない犯罪者風の灰田、あきらかに病人で奇跡の泉を信じてやって来た火浦、美貌の青年でこれも何のためにここにいるのかわからない飛鳥。
取材を進めようとしていく中、天瀬は奇跡の泉を中心としたリゾート開発計画が石動とその先輩の建設会社の者たちによって進められているのを知る。村人らはおおむね賛成しているが、飛騨牛に執着する真一はそれに反対をしている。
鍾乳洞は羅堂の私有地になっていて真一はがんとして立ち入りを禁止しているので取材というほどのことは進められえなかったが、帰る日が近づいてきたとき暮枝に大雨が降る。その晩、哲史が家に帰っていないことを天瀬らは知らされる。そして明くる朝、陣一郎の世話役の栄は哲史らしき遺体を発見する。首のない状態で。
雨がひどくなるなか、コンミューンに住む人らは村人の家々に避難することに。天瀬らがいるところに、灰田、火浦、飛鳥の三人がやってきた。そして捜査が進められる中、首無し死体は指紋より哲史と警察は断定する。そのことによって葬式が行われるために名古屋から善次と美雄が帰郷してくる。警察は哲史の事件にたいして、外部からの住人であるコンミューンの人々らを疑う。特に不審な行動から飛鳥が警察に疑われる。どうやら生前の哲史と接触をしていたようであった。事情を調べてみると、実は哲史はホモでありそのことを悩んでいた。由香里ともつき合ってみるがどうもうまくいかない。そんなときに同類である飛鳥がこの村にやってきて二人はやがて恋に落ちる。しかし飛鳥がここに来たのはエイズによる治療のためで哲史を受け入れることができなかったというわけだった。飛鳥の容疑ははれ、飛鳥は東京へ帰るが、捜査は難航し続ける。そんななか陣一郎、石動、出羽などが行う句会に天瀬は出ることになる。そんな矢先、真一が作り物の牛の角で腹を突き刺され殺される。
奇怪な殺人が連続して起こったことから、村人達は村に伝わるわらべ唄のみたて殺人だと騒ぎ出す。
昔、高賀山に牛の角もつ鬼あり
高光公、有漏路の中を求め来て
めぐり逢ふたは橋の上
鬼の顎をかひくぐり
牛の角もつ鬼を追い
虚の下より洞に入る
洞の暗闇黒くもなし
高光公、鬼の頭を切り落とし
牛の角もつ大鬼は
鬼の岩屋で朽ち果てり
刃を洗う泉の水は
赤く染まりて流れゆき
鳴りとよみつつ川に注げり
村が連続殺人によって、騒がれる中、テレビによって保険金詐欺事件にこの奇跡の泉の効能を広めた倉内が関わっていたことを知る。奇跡の泉は偽物なのだろうか?
そして警察の調べによって、陣一郎には庶子がいて、真一らの腹違いの兄弟にあたる鋤屋和人の存在が明らかになる。しかも和人は犯罪者で服役しており、現在は娑婆にでてきているという。ここで犯人は和人か?と思われたとき、コンミューンにいた灰田が隠し持っていた拳銃を振りかざし洞窟の方へと逃走する。警官やら村人らが捜索隊を組織し、灰田探しを始める。そして洞窟でなぜか火浦がさまよっているのを見つけ警察らに保護され、病院へと運ばれる。そして灰田は偶然であった、藍下と出羽の手によって取り押さえられる。なんでも灰田は昔、強盗を行いその現金を洞窟へ隠していたという。灰田は昔の罪は認めたが、今回の殺人事件については否定する。そんななか、善次と美雄は帰路についていたはずだったが、途中の橋の下で善次の車が発見され、その付近で善次が転落死しているのを発見される。
次々と起こる殺人事件。不可解なそれぞれの死体の状態。なぜ彼らは殺されねばならなかったのか。そして犯人は誰なのか?鋤屋和人はこの村にいるのだろうか?
謎が深まっていく中、なぜか魔の手によって天瀬が襲われることに・・・・・・
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