<内容>
空前絶後のアホバカ・トリックの第三回メフィスト賞受賞作ついに登場!
文庫化において大幅に加筆・再構成。またノベルス版ではあまりに下品だという理由でカットされた「オナニー連盟」も収録。
<感想>
1997年、第三回メフィスト賞受賞作の本書を手にとり、読むことに。くだらないとは思いはしたものの、そこここで笑うことができ、ある種の異色作であり、気楽に読める一冊であった。とはいうものの、処女作のせいか、読みづらさも感じたのは事実。
そして、2002年その一冊が文庫化に! 当然ノベルス版で持っている私が買う必要もなく、それでもなんのきなしに本の裏の内容紹介を見てみると・・・・・・あまりにも下品だというりゆうでカットされた「オナニー連盟」もあえて収録・・・・・・なぜか文庫版も買ってしまった。
読んでみて、あぁやはりくだらない・・・・・・と思いながらもそれなりに楽しみながら読むことはできた。当初気になっていた読みづらさも、大幅に改稿したせいかそれなりに読みやすくなってはいた。「ボキャブラ天国」などのネタを使ったものや、その時代のみのネタなども書いてあり当初をなつかしく感じることなども。それでも一発ネタのものなどはあまり読み返す気も起こらずに読み飛ばしたりもしたのだが。まぁ、人生においてこういう作品を読み返す余裕というのも日常の中では必要なのではないのだろうか(なんのこっちゃ)
<内容>
「長野・上越新幹線四時間三十分の壁」
新潟でひとりの男が自分のマンションの部屋で殺害された。容疑者は被害者の恋人。しかもなんと、その容疑者には双子の姉妹がおり、東京で人気のお天気お姉さんであった。そして後日、なんとそのお天気お姉さんの夫が殺害されるという事件が起き・・・・・・
□短 編
「指 紋」
「2時30分の目撃者」
「ボーナス・トラック 乗り遅れた男」(文庫版のみ)
<感想>
以前、ノベルスで出版された際に読んでいたはずなのだが全く内容を覚えておらず、つい古本屋で見つけたので購入してしまった。実際に読んでみても内容を思い出すことができず、そのためかえって新鮮な気持ちで読むことができた。
今回読んでみて気がついたのは、本書の中の長編・短編ともが刑事コロンボを意識したものであるということ。アリバイの崩し方だとか、犯人の指摘の仕方だとか、そういったものを犯人の行動のどこかからほころびを見つけて謎を解くというスタンスになっている。
ただし、それらがコロンボのように決まっているとはいいがたい。犯人を指摘するポイントとしては理解できるものの、その指摘事項がどれも弱いと感じられる。短編作品「指紋」あたりはうまくできているとも思ったのだが、文庫版ではノベルス版と違った結末にしてしまったとの事。たぶんノベルス版のほうがうまくできていたのではないかと思う(著者もそれをわかっていて変えてしまうのだから妙なものである)。
たぶん著者のほうもコロンボ路線を行くよりは一発芸路線を狙ったほうがよいと感じて、その後の「動かぬ証拠」へと走っていったと思うのだが、それはそれで作風としては合っていたのではないかと思える。
今になって読んでみると、昔読んだときの背景と現在の背景を比べながら読むことができ、色々と異なる感想を抱く事ができるのだから面白いものであると感じてしまった。本の内容云々は別として、読み返してみてなんかよかったと思える読書となった。
<内容>
細工は完璧のはずだった。映像や音声を駆使した画期的アリバイ工作の落とし穴。周到な犯人が見落とした想像を超えるダイイング・メッセージの数々。いずれ劣らぬ完全犯罪が思いも寄らない一点から破綻する。その決定的瞬間をラスト1ページにイラストとしてとらえた作品集。
<感想>
犯行後犯人が容疑を免れるために施した細工やアリバイトリックを最後の1ページのイラストでくつがえすという趣向の作品集。最後のどんでん返しという趣向はミステリファンであればだれもが楽しみにする趣向であろう。しかし、最後の1ページで話をくつがえすということは、へたをすればそれまで著者が書き、読者が読み上げてきたものを台無しにする可能性を秘めている。要はこのような趣向はよほど優れていないと読者を心から感心させるのはかなり難しいものではないだろうか。
そこで本書なのだが・・・・・・まぁミステリというよりはブラック・ジョークというカテゴリに属するものではないだろうか。これを完全犯罪だとか、本格ミステリだとかと銘をうつのはどうかと。
<内容>
はるか昔、布部家を襲ったミイラ男の伝説。鏡の迷路という密室での兄の不可解な死に続き、ミイラ男の影はいよいよぼくのもとへと忍び寄ってくる。はたして、ミイラ男が顔の包帯を取ったとき、あらわれるのはいったい誰の顔なのか。
<感想>
前作「動かぬ証拠」に続いてイラストを使っての推理小説。今回は長編においてそれを行ったのだが試みは成功しているのかというと、効果が薄いというしかない。イラストをいれても前のページから透けて見えてしまうのでは効果は薄い。さらにいえば、イラストを入れることによって、児童書レベルの作品内容をかえって絵本レベルに強調してしまっているように思える。正直言って内容といい筆力といい、小中学生あたりとしかいいようがない。
本書におけるイラストの効果といえば最終ページのみでしかない。最後のページを見たときに、「動かぬ証拠」で行っていたようなことを長編でやりたかったのだということはよくわかる。しかし、やはり長編としてはいろいろな意味できつかったようである。
<内容>
ぼくの名前はアキラ。あしたから、いよいよ青陽小学校の5年生。だから、いまいちばん気になるのは二年に一度のクラス変え。あこがれのナナちゃんといしょに、美人のルイ先生のクラスに入れるといいんだけど。でも、よその学校からとんでもない先生がやってくるというウワサもあったりして。なんだか新学期早々、イヤな予感が・・・・・・
<感想>
いやー、のっけからやってくれるよ蘇部先生。先生下品、下品だよ! 青い鳥文庫にきても路線は「六枚のとんかつ」なんですか。本の帯にイキナリ「よい子は絶対読まないでください!」って書かれてますよ。いいんすか!? ありなんですか、これは?
少年少女向けの本のはずなのにぎりぎりのラインをついてくる。そういった作風はあえて言うなら“いさぎよい”。のっけから読者を引かせてくれるにもかかわらず、中盤以降は普通の“良い先生”、“良い仲間たち”というテイストにて、きちんと収まっている。ミステリーとしての味付けもなされ、なかなか面白く仕上がっているのではないだろうか。
この本においては、いろいろな年齢層の人たちの意見を聞いてみたいところである。これが現在の少年少女向けのテキストとして指示されるものなのであろうか。続編が出るのが楽しみである。もし、続編が出ないのであれば、それはひょっとして・・・・・・
<内容>
青陽小学校5年生のアキラはふうつの学校生活を送る小学生であったが、新しい担任の稲妻先生が来てからはいろいろな事件に巻き込まれるはめになる。今回はプールの授業の後に女子のブラジャーが盗まれたという事件が起こった。アキラは誰もいないときにたまたま教室にいたために疑いをかけられそうな雰囲気なのだが・・・・・・
<感想>
結構、ふつうに面白かった。もうミステリーとか、そういったことは抜きにして学校生活を楽しむ児童書として素直に楽しむことができる本という感触だ。
相変わらず稲妻先生の破天荒ぶりに振り回される生徒達であるが、それでも彼らは学校生活を十分に満喫していると言っていいだろう。ふつうの学校というよりは、ある意味“理想の学校”といってもいいかもしれない(そう感じるのは一部の男子生徒くらいか?)。
それにしても読んでいて懐かしさを感じてしまう。家庭訪問とか遠足とかいうような小学校行事をあれこれと思い出してしまう。そういえば自分もおやつ300円以内ということで、いろいろと悩んだおぼえがあったような。あと、放送部の事件が描かれている章に関しては、想像で放送中にこんなことがあったら、というものをそのまま描いたような話になっていて面白い。そして一枚の写真から、おばあちゃんの初恋の人を探すという章は少年探偵団のような雰囲気でなかなかいいと思う。これが本書における唯一のミステリーといったところか。あと、“ブラジャー”の事件は普通のドタバタであった。
<内容>
ごく普通の会社員である小早川嗣利は妻と娘と三人で幸せな生活を送っていた。しかし娘が突然何者かに誘拐されて幸せな家庭が崩壊してしまう。失意のどん底に落ちる小早川の前にとある女性が現れ・・・・・・
予想だにせぬ展開が繰り広げられる蘇部流ミステリー。そして主人公は時をも超えて・・・・・・
<感想>
どのようなミステリーが繰り広げられるのかと思いきや、今回の作品では“タイムスリップ”が行われている。はっきり言って、読んでいる途中ではたいした展開にはならないのだろうと高をくくっていた。しかし物語りは簡単に収束する気配はなく、これでもかとばかりに次々と予想だにしない展開へと突き進んでゆく。そしてラストまで来たときには、その考え抜かれた物語の構成に感心させられてしまう。いやはや、これはSFミステリーとして、なかなかうまくできあがっている作品といってよいのではないだろうか。ただし、“SF”と言っても小難しい表現などは一切ないので、誰でも楽しんで読むことができる作品となっている。
ただ、一つ思ったのはラストの一文はどうなのだろうと考えさせられる。全体的な物語りの印象からすれば、ラストも綺麗にまとめたほうが良いのではないかと感じられた。それがラストの一文によって、サイコホラーっぽい印象になってしまうのは、どうであろうか? 蘇部氏の今までの作品、「動かぬ証拠」「木乃伊男」に習う意味で付け加えられているような気がするのだが本書ではこの終わり方はどうだろう。この辺は賛否両論があるのだろうか。
<内容>
青陽小学校5年生、アキラのクラスの担任は破天荒な稲妻先生。“朝の読書”の時間では「本を読むな!」とか「漫画を読め」などと言って、隣のクラスのルイ先生を怒らせる始末。さらには試験中にカンニングを解禁したりとやることなすことメチャクチャな毎日が続いている。そんな中、アキラは屋外にあるトイレを使おうと思ったとき、そこで自殺したと噂される幽霊の声を聴いてしまい・・・・・・
<感想>
このシリーズを読むたびに、児童文庫でこのような本を出版して大丈夫なのだろうかと思うのだが、3巻目が出たということは意外と人気があるのかもしれない。とはいえ、内容は小学生が読むよりも、30前後の人が読んだほうが受けるように思える(中高年向きに書いているとしか思えなかったりするし)。
今作では幽霊騒動、カンニング騒動、トイレ騒動といった複数の事象をうまく組み合わせた話が描かれている。今回のカンニングについての話は、なかなか意外な手法が用いられたりしていてなかなか楽しむことができた。また幽霊騒動では恋愛話を織り交ぜながら微笑ましく描かれているところが良かった。とはいえ、小学生であればデートよりも友達と遊んでいるほうが楽しいのでは? と考えるのはもはや古臭いことなのであろうか。
最近、この本で感じるのは稲妻先生の存在がないがしろにされているように思えること。このままでは本当に適当な先生のままで終わってしまいそうなので、なんとか汚名返上する機会を与えてあげたいものである。次は夏休みの話ということになるのだろうか。
<内容>
省略
<感想>
はっきり言えば、これは「六枚のとんかつ」の続編とはいえない作品である。蘇部氏の短編を寄せ集めただけの作品集でしかない。「動かぬ証拠」の形態であるイラストオチの作品があったり、ごく普通の内容の作品があったりと期待していたものとは異なる作品集であった。
わたしが「六枚のとんかつ」に期待していたのは、とにかくくだらない内容のミステリーをこれでもかと連発するというもの。普通の作品集では掲載することができないようなものこそを今回の作品集の中に載せるべきであると思っている。本書の中にも「最後の事件」とか「誓いのホームラン」のようなくだらなく、それらしいものもあったのだが、そこに普通の作品がまざってしまうと調和が乱れてしまうのだ。「きみがくれたメロディ」のような普通の良い話のような作品などはここには載せずに、「六枚のとんかつ」らしい作品のみで短編集を作ってもらいたかった。
<内容>
「もうひとつの証言」
「アリバイの死角」
「生涯最良の日」
「×××殺人事件」
「殺ったのはだれだ!?」
「瞳の中の殺人者」
「死ぬ」
「嘘と真実」
「栄光へのステップ」
「秘めた想い」
「赤い糸」
<感想>
「六とん2」を読んだ人ならば、どのような内容かは想像がつくであろう。決して、それ以上でもないし、それ以下というわけでもない。すなわち「六とん」だからゆるされるクオリティでしかない。
どれも悪くないけど今ひとつ、という感じがしてならない作品ばかり。最終ページに絵を持ってきて真相を明らかにする作品も、カラーを使ってと力の入りようは感じられるものの、だからといってどうというものではない。
オゲレツいっぱいの作品も蘇部氏ならば当然のことであるけれどもパンチ力が弱い。
「死ぬ」のように、ちょっとした逆転劇が味わえる小説や、繰り返し同じような話が語られることにより効果が強められる「嘘と真実」などという作品も加えられているが、特別なオリジナリティがあるわけでもない。
「秘めた想い」や「赤い糸」のようにタイムスリップを用いた、「六とん2」に引き続くようなシリーズもあるものの、この作品集のなかでは浮いているようにしか思えない。
結局何が言いたいのかというと、ひとつひとつが弱いのであれば、統一したテーマで一冊の本を作ることにより、作品集としてのクオリティを上げることは可能であると思われる。。実際、「六枚のとんかつ」や「動かぬ証拠」は統一されたテーマの短編集になっていた。それが「六とん」という形で出るようになり、テーマがばらばらになってしまうと、ますます荒が目立つように感じられる。何となく今回で、このシリーズが続いたとしても、続けて読む必要はないのかなと思ってきたところ。「六枚のとんかつ」くらいの統一された“くだらなさ”が満載の本であれば、また読んでみてもいいかなという気がするのだが。
<内容>
「一枚のとんかつ」
「大江戸線5分30秒の壁」
「新×××殺人事件」
「犯行の印」
「聖職」
「ひとりジェンカ」
「修学旅行の悪意」
「翼をください」
「追われる男」
「恋愛小説はお好き?」
「琥珀の中のコートダジュール」
<感想>
前作「六とん3」が出てから、もう3年以上。自分で書いた前の作品の感想を見たら、もう買わなくてもいいかもと書いてあった。しかし、3年も経つとそんなことも忘れて、つい購入してしまうのだから3年という間隔は案外当たりなのかもしれない。
で、読んでみれば実際「六とん3」とほぼ変わらない印象。最初の三作はアリバイトリックを用いたりと、くだらないながらも一応ミステリしているので、まだ読むことができる。ただし、それ以外の作品はどうでもいいかなと・・・・・・というよりも、どうでもいい作品がちょっと多すぎる。
まぁ、一日で簡単に読めるということでお手軽さに関してのみお薦めできる本。でもなんだかんだいって、5冊目が出たら買ってしまいそうで怖い。
<内容>
「あなたをずっと、さがしてた」
「四谷三丁目の幽霊」
<感想>
ネットにて「小説X」というタイトルで掲載し、この作品のタイトルを応募にて決めるという企画。その企画のなかで「あなたをずっと、さがしてた」となり、無事に出版された作品。著者曰く“ラスト一行に、命を懸けた”とのこと。それがどのような内容かというと・・・・・・
すれ違いの恋愛を描いた作品となっている。どうやら両想いらしいものの、なかなかその二人が会ってきちんとした話ができない、という状況が続く。しかし、後半になるとサスペンス風の展開が待ち受けており、そして意外な幕引きが!。
最初、読み始めた時は冗長のようにも感じられたのだが、後半の流れにより、実は序盤に細かい伏線を張り巡らせていたということに気付かされる。これは趣向として、なかなか面白いのではないかと感心。ただ、最後の一行は、一瞬ドキッとさせられるのだが、改めてじっくり考えてみると、ちょっと無理があるような・・・・・・。まぁ、それでも十分に楽しむことができたから良いのかなと。
もうひとつ短編として「四谷三丁目の幽霊」というものが掲載されている。こちらは「あなたを〜」の別バージョンのような内容。「あなたを〜」のほうはサスペンスチックな内容であったが、こちらはほのぼのとした恋愛模様が描かれた作品となっているので、安心して読むことができる。