<内容>
「お葬式」
学校にチチキトクとポケベルによる報せが入り、病院にかけつけると父親は亡くなっていた。そして葬儀を行うことになるのだが、母が言うには、先祖伝来の弔い方があるそうな。いつのまにかどこからともなく親戚が集まり、奇妙な弔いが行われることに・・・・・・
「ホテルエクセレントの怪談」
ホテルエクセレントにロックグループが宿泊することになった。当然、フアンなどには極秘で業務をこなしていかなくてはならない。しかしこのホテルエクセレントには幽霊が出るなどの七不思議があったのだ・・・・・・
「十二月のゾンビ」
西田直人は最近無言電話に悩まされていた。そしてある日彼が家に帰ると、バイト先の同僚の女の子が車に接触したといって彼の家に助けを求めに来た。彼女の顔の半分はつぶれており、死んでいてもおかしくないように思えるのだが・・・・・・
「荻の寺」
恋人の死体を山に捨ててきた帰りに、裕二は事故を起こして車を失うはめに。そして山の中をさ迷い歩いていると、尼僧がひとり住む寺にでる。その寺で尼僧の昔の話しを聞くことに・・・・・・
「心地よくざわめくところ」
新聞により遠い国での原発のニュースを知った大学生がらが静かな狂気の中に笑い踊る様を描く。
<内容>
「厄落とし」
鳥居恭子のもとに友人の恵から電話がくる。なんでも彼女の実家で墓堀りをしたという。恭子に話したことで厄落としになったと冗談を言う恵。しかし、その日から恭子の身の回りで奇妙なことがおき始める。
「テディMYラブ」
女房の手芸の趣味で作られるテディベア。趣味がこうじてそのテディベアの数が増えてきたとき、夫が狂気に刈られてゆく・・・・・・
「初心者のための能楽鑑賞」
彼女に連れられて能を見に行くことになった庸介。そこでなぜか彼は能の幽霊に好かれたかのように・・・・・・
「形見分け」
千賀子の母が親戚の元から形見わけとして多くの骨董品をもらってきた。千賀子はその骨董品を整理しているうちに・・・・・・
「戦慄の湯けむり旅情」
幸恵に連れられて温泉へと向かうひろみと椿と透子。女子大生の普通の温泉旅行のはずがどこか奇妙な四人連れ。しかも四人が行き着いた旅館もなにか妙なことに。
<内容>
「夏合宿」
中学二年生の俊輔は、たったひとりで剣道部の合宿へむかうところだった。夏期講習に参加したため、みんなと一緒に出発できなかったのである。合宿先は毎年恒例の、貸し別荘が点在する避暑地だったが、剣道部が借りたのは恐ろしく古く薄汚れた施設だった。終点のバス停まで迎えに来てくれた先輩と暗い山道を歩くうち、俊輔は林のなかに青白く光不思議な火の玉を目撃してしまい・・・・・・
「本と旅する彼女」
ひとりの女性が旅に出た先で波瀾の出来事に巻き込まれる。迷惑譚。
「廃 屋」
廃屋を探索する男女三人。その廃屋は曰くつきで、元々旅館であったのだが・・・・・・
「たまみ」
父親の代わりとして宗家の跡取のお披露目会の出たところ・・・・・・
「ドライ・オア・フレッシュ」
父が旅行先で買ってきた生首の干物が巻き起こす騒動。
<感想>
ホラーからは外れてきているような気がするが、十分楽しませてくれる短編集。どの作品もうまく落ちをつけていて、なかなかのもの。「夏合宿」はかなり楽しませてくれ、婆さん、渋いぜ! と思わず声をかけたくなってしまう。「本と旅する彼女」と「たまみ」のラストも絶品。
<内容>
なにゆえか、花の都に、おぞましき阿鼻叫喚の奈落を描いた打ち掛けを纏う、美貌の遊女ありき。室町幕府管領・細川勝元の愛妾・地獄太夫は、実は隠れ外法使いでもあった。魔力を欲し、讃岐の地で禿を生け贄に供した太夫の前に出現したのは天狗の相模坊。両者の盟約は成った。大怨霊・崇徳上皇を甦らせ、現世に地獄を招来せん、と。その夜、讃岐の民の見たもの、それは巨大な尾を引く凶星、騒乱の前触れといわれる妖霊星。若き能楽師・鷹矢の戦いが始まらんとしていた。
<内容>
山口県の遺跡から発掘された有柄細形銅剣。それは北斗七星の力の象徴である七星剣だった。使い方次第で、聖にも邪にもなりうるという伝説の秘剣に引き寄せられるのは聖か魔か!? 浪人生の那津は、失踪した兄を探す旅先で、七星剣を追う謎の父子と巡り合う。それは運命の邂逅なのか! 九州の古墳群を舞台に繰り広げられるハイパー伝奇ホラー。
<内容>
大学四年生の鵜沢は内定が決まっていたはずの会社が倒産し、途方にくれることになる。大家に頼み込んで、なんとかこの先も学生寮に住むことができたものの、気落ちせずにはいられなかった。そんなある日、鵜沢はバイトしているときに“とある妖怪の姿”を目撃してしまう。すると、それを皮切りに巷に住み着く妖怪たちに次から次へとめぐり合うことに・・・・・・。同じ寮に住む万年学生で妖怪マニアの鳥飼との妖怪紀行の旅が今始まろうとしていた。
<感想>
今までは個々の話として短編をまとめ上げていた瀬川氏であったが、今作は連作短編というよりも本全体で一つの話となったものとして仕上げたようである。
その内容なのだが、もう妖怪珍道中とでも表現したくなるような暴れっぷりである。一応、角川ホラー文庫から本が出てはいるものの、まったくホラーという感じではない。むしろ、笑いながらも楽しむことのできる一冊となっている。
この本の主題は“妖怪”であり、まさにその“妖怪ウォッチング”を楽しむ本なのだが、それがまるで天然記念物をウォッチングしているかのような体裁をとっている。たまたま妖怪とはなっていはいるものの、珍しい動物を観測するのが趣味の人というのはこんな感じなのではないだろうかと想像してしまう。
また、“妖怪”と銘は打ってはいるものの、どこまでが本当に“妖怪”と認められるもので、どこまでが著者自身による創作なのかは私自身には判別がつかなかった。だいたい、「アメリカスナカケババア」なんていうものがのっけから登場してるのだから、あいた口がふさがらなくなってしまう。
しかし、本当に読んでいて楽しかった。ぜひとも続編を希望したい。