上と外


(1)素晴らしき休日
 両親の離婚で別れて暮らす元家族が年に一度、集う夏休み。中学生の楢崎練は久しぶりに会う妹、母とともに、考古学者の父がいる中央アメリカまでやってきた。密林と遺跡と軍事政権の国。四人を待つのは後戻りできない<決定的な瞬間>だった。

(2)緑の底
 G国でクーデター勃発。楢崎練の帰りを待つ祖父ら家族は突然の不安を募らせた。一方、決起グループに隔離監視された賢と千鶴子は子供達の無事をすべなく願った。その頃ヘリコプターから落下した練と千華子密林を彷徨する。披露困憊する中で二人が聞いた轟音。そこで見たものは!?

(3)神々と死者の迷宮 上
 誰かに見られてる、誰もいるはずのないジャングルの中で・・・・・・。得体の知れない不安を抱えつつ歩きつづける練と千華子は、その入り口に深い闇をたたえる遺跡を見つけた。そこでの束の間の休息。しかしすぐに疲労困憊する千華子の身に異変が起こった。それを待ち受けるかのように現れた新たな謎。そしてついには練の身にも・・・・・・

(4)神々と死者の迷宮 下
 千華子を人質にとられ、練はニコと名乗る少年から危険なマヤの儀式への参加を強要された。それは少年たちがつねに背後に獰猛な獣の気配を感じながら、生き残りをかけて争う過酷なレースだった。刻一刻、過ぎて行く時間。失意と恐怖の中で、練に残された制限時間はあとわずかしかない。脱落すれば千華子の命が・・・・・・

(5)楔が抜けるとき
 革命新政府は「楔が抜けるまでこの状態は続く」と発表。が、この「楔」は何を意味するのか?賢と千鶴子はヘリコプターでの捜索を開始したが困難をきわめた。一方、練は勇気と機転で「儀式」を終え、すぐさま監禁中の千華子のもとに向かうが・・・・・・。その時、国全体をさらに揺るがす、とんでもないことが起こりつつあった。

(6)みんなの国(完結)
 史上最悪の大地震と火山噴火で、練の恐怖の針は振り切れた。このまま押し潰され骨も砕け窒息するのか、千華子はいまどこにいるんだ、でも、もう何もかもが終りだ! 次々、襲いかかる困難の果て、さらにこんなことが待ち受けているとは! 神は二人を見捨てたのか!? 兄妹は再会できるのか? そして家族は? 息すらできない緊迫と感動の最終巻。



(詳細)
1.素晴らしき休日
 練の実の母は練の生後すぐに亡くなり、その後、賢は千鶴子と結婚し千華子を産む。千鶴子は実の母親ではないが、千鶴子は練のことを大事に育ててくれ、練にとって母親というのは千鶴子だけである。小学校のとき賢と千鶴子は離婚し、練は千鶴子と千華子と離れて暮らすようになる。その後千鶴子は秀幸という男と暮らし、4年後離婚し、現在千華子と二人で暮らしている。千華子はボーイッシュな感じの女の子で小さい頃からいろいろな習い事をしていたが、今では新体操に夢中になっているようである。
 両親が離婚してから父の賢は遺跡発掘のため世界を跳びまわっていたため、賢の両親つまり練の祖父母にあずけられた。祖父の家には長男として金型工場を継いだ、叔父の家族が一緒に暮らしていた。叔父の子供は三人いて、長女はすでに嫁いでいて長男の邦夫と次男の俊夫が練と遊んでくれた。ただ邦夫はもともと体が弱かったので、もっぱら俊夫と遊んでいた。

 練の中学二年の夏のこと。年に1度夏休みに家族四人が集まる日がある。今年は練、千鶴子、千華子の三人で賢が遺跡調査をしている南米のマヤ文明の遺跡のある国へ行くことに。千鶴子と千華子に久しぶりに会う練であったが二人の間に何か不穏な雰囲気を感じ取る。千華子は千鶴子がなにか隠しているようだと感じており、また再婚を考えているのではとかんぐる。

 3人は現地に着き、賢と合流する。久しぶりでぎこちないながらも食事をとったり、賢の案内で観光をしたりと家族みずいらずで日々を過ごす。そんななか千華子が練に千鶴子に感じる不安を打ち明ける。千鶴子が家の千華子の部屋で彼女の髪の毛を採取し、思いつめた顔をしているのを除き見てしまったのだという。そして千鶴子のそぶりからも新しい男ができたのではないかと思えるふしがあるのだという。そしてある日、千鶴子がみんなに再婚するつもりだと打ち明ける。ただし、再婚相手が望んでいるため自分と千華子にはもう会わないでもらいたいと賢に告げる。しかも賢に千華子はあなたとの子ではないかもしれないという。彼女はDNA鑑定のために千華子の髪の毛を手に入れていたのだ。千鶴子が自分の男のために家族を捨てるかのような態度をとることに皆は混乱するが、賢は再婚は勝手だが千華子は自分の娘と拒絶する。父や兄を失ってしまうのかと嘆く千華子と蚊帳の外に置かれ千鶴子に捨てられたかのように扱われた練は互いの絆を確認しあう。

 翌日4人は開き直ったかのように振る舞い、観光の最終日の予定を消化していく。今日はヘリコプターにのって遺跡へと向かう。しかしそのヘリコプターのなかでラジオ放送により軍事政権のクーデターが始まったことが知らされ、ヘリの操縦士たちの様子が豹変する。


2.緑の底
 G国でクーデターが起きたことを日本で知らされる楢崎家の人々。練の叔父の楢崎徹はクーデターのことを聞きつけ彼の父や息子に告げる。(つまり練の祖父と練の従兄達)徹はネットなどを使用してG国の情報を探ろうとする。また練の祖父も人脈を利用し彼らに関する情報を探り始める。そんな中、楢崎邦夫は大学へ行き、教授に頼みG国に詳しい人がいないかを調べてもらう。

 クーデターの決起後、賢と千鶴子は他の外国人たちと一緒に隔離監視される。監視された生活が続く中、彼らは練と千華子の無事を案じる。

 ヘリコプターから振り落とされた練と千華子は奇跡的に無傷で密林の中に降り立つことができた。進むべき方向が分からない中で、彼らは互いに協力し合いながら前進を続ける。そしてみょうな轟音を聞きつけ、その音を辿って行くと、場違いな石畳のある場所に出る。そこは屋根もあり、彼らはそこで休憩を取ることに。彼らが眠りについたときに、妙なメッセージを聞くことに!「王の息に触れるな」と。

 彼らは荷物を確認し、食料のことなどを考慮に入れながら再び全身を続ける。すると同じ場所にもどったかのように、昨日野営したところと同じつくりの場所にたどり着く。この密林には同じ建造物がいくつもあるのだろうか? そしれ彼らはこの場所は通気口であり、この地面の下には大きな空間があるということに気づくのだが・・・・・・


3.神々と死者の迷宮 上
 練と千華子は視界に現れたピラミッドを目指し、歩きつづける。しかしそのピラミッドは彼らが知っているものとは、また別のピラミッドであった。しかし、この目立つピラミッドの側にいれば、空からの捜索隊が来たときに見つけてもらいやすいだろうと考え、近くでキャンプをすることにする。そこで二人は今まで遭遇してきた、この近くにある「屋根のある祭壇」を探し、そこで休むことにする。二人は不安の中、ここで夜を過ごすことにするのだが、誰もいないはずのジャングルの中で何者かに見られているような感覚を二人は感じるのであった・・・・・・。そして夜、彼らも元に一つの黒曜石が投げ込まれる。

 一方そのころ、賢はクーデターにより監禁されているところから脱出し、ヘリコプターを手に入れ、連と千華子を探しに行こうとする。仲間であるミゲルの力を借り、夜、見張りの目をかいくぐり、賢と千鶴子とミゲルはクーデターの元から脱出する。そして知人のホセの店をへて、ヘリコプターを借りる充てのある場所へと向かう。

 翌朝、練と千華子は辺りを散策し、近くの近くの貯水池で魚を発見する。なんとか魚を捕らえることができ、食料を確保することができるも、練は千華子の具合が少々悪そうなのを気にする。

 そして賢らはヘリコプターを充てにしていた運送会社に着くものの、ヘリコプターは出払っていて足止めをくらっているのだという。しかし、運送会社のペネロペは車を貸すのでヘリコプターのある場所まで行き、そして使えばよい、と申し出てくれる。彼らは出発の前にひと時の休みを取る。

 食料をとって食べ、満腹になった彼らは安心して昼寝をする。練は浅い眠りの中で夢を見て、目を覚ますと何者かが周りにいる気配に気がつく。千華子の様子を見てみると、彼女は「さむい」といい、ものすごい熱を出していたのだった。そんなときに彼らの目の前に“チコ”と名乗る少年が進み出て、彼らは地下の神殿の中へと案内されることに・・・・・・。そしてそこで彼らの事と、いつしか彼らの目的に練が巻き込まれていることを知ることになる!!


4.神々と死者の迷宮 下
 千華子は夢を見ていた。千鶴子と新しい父親と食事をする夢を。その新しい父親の言動になぜか不快感を覚える千華子。なぜかその理由を明確にしてくれるのは、夢の中に現れる、彼女が唯一父と認める人物・賢であった・・・・・・
 目をさますと千華子は一人だった。

 練は千華子を人質に「成人式」のゲームに巻き込まれていた。その「成人式」とは世界各国から集められたらしい、12人の同じ年齢の少年たちで行われ、午後6時から翌朝の6時までという周期で三日間、王「ジャガー」を避けて生き延びるというものであった。またその間、各自60個の石を持ち、12の壺が置いてある60の部屋を見つけ出し、自分の番号の壺に石を1個ずつ入れていく。最終的に一番たくさんの石を入れたものに栄誉が与えられる。ただし、1日のうちに、最低10こい上の石を部屋を見つけ、壺の中に入れなければならない。また、朝の6時までには必ず戻ってこなければならない。不正は一切許さないと・・・・・・
 また、もし迫り来る“王”を倒すことが出来たならば、その者は英雄であるという。

 賢、千鶴子、ミゲルは車で移動中に、クーデターの起きた町の情報を求める人たちに出会う。彼らの話を聞くと、彼らは楢崎一家を探しているのだという。賢らが、自分達が楢崎だと名乗ると、彼らから驚くべきことが伝えられる。それは、ナラサキ機械は中南米で広く、そして末永く技術の支援を行っていて、多くの人々が賢の父親のことを知っているというのだ。そして大勢の人々が楢崎一家の行方と安否の情報を求めているのだという。また、今回のクーデターは異様なものであり、なおかつ、海外に逃れていたマヤ族の者達が続々とこの国に集結しているのだと彼らはいう。
 賢は支援の手を延べてくれたことに感謝し、そして練と千華子がまだジャングルで行方不明であることを伝える。

「成人式」が始まった。合図とともに12人の少年たちがそれぞれ散っていく。周囲の様子を調べながら壺の部屋を探してゆく練であったが、せまりくる“王”の恐怖に怖れをなして、ついに・・・・・・

 千華子はチコから、3日たったら練は戻ってくるのでそこで待つようにと言われる。そこには水も食料もトイレもあり、いままでの野営に比べれば天国のようであった。しかし、千華子は部屋からの抜け道を見つけ出したとき、トンネルへの探索へと出かけて行くことにするのだが・・・・・・


5.楔が抜けるとき
 クーデターは起きたものの、妙に静かな様相を見せる革命新政府。彼らはただ、「楔が抜けるときが近づいてきた」と・・・・・・

 からくも一日目、元の部屋に戻ってきた練。他の皆ももれることなく全員が部屋にそろっていた。しかし、中には壺を見つけることができずに不正をしてごまかしていたものも・・・・・・。そして、練も壺を6つしか見つけることができずに、余分な石を隠し持っていたのだった。結局ニコは練の不正を見破るのだが、なぜかニコは練を見逃す・・・・・・

 一人水路でさまよう千華子。彼女は方向が分からなくなり立ち往生することに。しかし彼女は迷路を攻略する方法を用いて、壁に新たな目印をつけながら進み始める。

 賢と千鶴子はヘリコプターによってジャングルを捜索することにしたものの、とても上空から人の姿を捜すことなどできない。とほうにくれる賢たちであったが千鶴子が息を吹き返し、目印がなければこちらで目印を作って、そこに子供たちを誘導させればよいと!

 ニコは部屋の中に千華子がいないことに気づく。しかしこの閉ざされた部屋からどのようにしてでていったのか全くわからない。ニコは不思議に思うものの、このことを練には告げずに「成人式」を再開することに。

「成人式」の二日目が再開された。練は壺のありかを手っ取り早く知るために、ニコの跡をつける事にした。すばやく壺のある場所へと移動して行くニコについていくのが精一杯の練。しかし、確実に石の数は減っていく。しかし、ニコは練がつけていることに気づいていて、練の背後に回りからかう。そんなやりとりをしていたとき、彼らの背後から王が襲い掛かってきた。
 ニコが語るには王の様子がおかしいと。それは「クサビ ガ ヌケルカラ」と。
 他のメンバーが王に襲われたときにそれを助けようとするニコと練。そして彼らの背後に王が迫ってきたとき、彼らは王に立ち向かうことに・・・・・・


6.みんなの国
 千華子がいないことに気づきニコとともに行方を追う練。しかしその探索の途中火山の噴火が始まった。ニコがいうには、いまいる通路はマグマの通り道となっているものであるらしい。他の皆を避難させなければならないニコと分かれ、一人千華子の行方を追う練。そしてようやく千華子と再開できるのであるが、彼らの逃げ道は! さらに追い詰められた二人にさらなる困難が・・・・・・



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