<内容>
東北の牧場で牧場長と競馬評論家が殺され、サラブレッドの母子も撃たれた。背後に、競馬界を揺るがす陰謀が!?
<感想>
既読作品ではあるが「江戸川乱歩賞全集14」にて再読。
岡島二人のデビュー作でもあり、ある意味到達点ともなる一作であろう。デビュー作が到達点というのもおかしいかもしれないが、彼らは“江戸川乱歩賞”受賞を目指して五年くらいかけて作品を書き続けており、これが発表された段階ですでに何作かを応募している。そしてようやく本書において受賞したという経緯により“到達点”呼んでも間違いない。はっきりいえば、それほど“乱歩賞”というものを意識している一冊ともいえる。たぶん乱歩賞受賞作を研究してどのような作風で描けばよいかなどということを考え尽くして書いた作品ではないだろうか。
本書を読んでみて一番感じることは、非常に読みやすいということである。これはすでに落選作を含めて何作も書き続けており、その結果デビュー作にしてこの域にまで達してしまったということがいえるのであろう。また、内容もよく練ってあると思う。複数の事件が起きて、それらが絡み合い、次第に糸がほぐれていくように謎が明らかになっていく。このへんの書き方というのも見事なものである。
まさに、ミステリーを知り、競馬を調べ抜き、乱歩賞を研究した成果というものがひとつの結晶となりこの一冊に詰まっているというものができあがっている。
<内容>
再現ドラマの制作を行う“剣プロダクション”で働く織田貞夫と土佐美郷。二人は上から読んでも下から読んでも変わらない、“山本山コンビ”と呼ばれている(というより、美郷が言いふらしている)。そんな二人が関わる事件で疑問に思ったことを調べて行き、次から次へと真相を解明してゆく。
増補版では今まで未収録であった「はい、チーズ!」を収めている。
「三度目ならばABC」
「電話だけが知っている」
「三人の夫を持つ亜矢子」
「七人の容疑者」
「十番館の殺人」
「プールの底に花一輪」
「はい、チーズ!」
<感想>
増補版が出たのをきっかけに久々に岡嶋二人の作品に触れてみることにした。なんか懐かしさが感じられ、これぞ一昔前のベーシックなミステリ! というものを味わうことができた。
読んでみると、表現は変であるかもしれないが、大人のライトノベルスとでも言いたくなるようなとっつきやすさ。ミステリとしてのネタやトリックも凝っていながらも、どの短編作品も導入や展開はお約束となっており、読みやすさのめり込みやすさは抜群である。
今の時代に読んでみると、部外者が事件にここまで入り込めるものかとリアリティに欠ける部分が目についたり、前半の作品に比べれば後半はややトリックなどが息切れしてきたようにも感じられる。とはいえ、十分に読み応えがあるのは確か。どの作品も殺人事件や誘拐事件といった重いものを扱っているにもかかわらず、今でいう日常の謎系の作品のように読めてしまえるところがすごいところ。
これを読むと他の岡嶋氏の作品も読み返してみたいと思ってしまう。また、ミステリ初心者にはやっぱり岡嶋二人を薦めたくなるとあらためて感じさせられた。
<内容>
相性診断によって男女を引き合わせるコンピュータ結婚相談所。オペレータの夏村絵里子は、恋人の名前を登録者リストに見つけて愕然とする。「何かがおかしい」彼のデータを見直し、不審を抱いた絵里子を、正体不明の悪意が捕らえる。相次いで身辺で起きる殺人事件は、増殖する恐怖の始まりでしかなかった!
<感想>
この本を2001年に講談社文庫版で読んだのだが、その記述にモデムが高価で簡単に接続できないというような記述があった。よくよく考えれば、この本は15年も前に出版された本。その内容が今でも色あせていないのは驚きだ。それどころか、15年前であれば、この内容は一般的には指示されなかったのでは? などとも考えてしまう。そのくらい岡嶋二人(もしくは井上氏か?)がコンピュータにおける先端を行っていたのだなぁとほとほと感心させられてしまう。
<内容>
「記録された殺人」
「こっちむいてエンジェル」
「眠ってサヨラナ」
「バッド・チューニング」
「遅れて来た年賀状」
「迷い道」
「密室の抜け穴」
「アウト・フォーカス」
「ダブル・プロット」
<感想>
短編集「記録された殺人」に未収録短編3作品を加えたもの。読んでいるとき、未収録作品がどれか確かめないまま読んでいた。タイトルとなっている「ダブル・プロット」は当然未収録の作品であろうと予想される。その他はどうかというと、読んでいてあまり面白くなかった2編の作品が未収録のものであった。そんなわけで、わざわざこの「ダブル・プロット」を買わなくとも「記録された殺人」があれば、それで十分と感じられた。
といいつつも、「記録された殺人」の内容はすでに忘れていたので、新鮮に読むことができた。ここに掲載されてい作品のどれもが普通のミステリなのだが、それにちょっとした変化球を加えて、うまい具合に一味付け足されたミステリ作品に昇華している。こういったところが岡嶋二人ならではの絶妙さといえるのであろう。
コマ送りの写真に犯行状況が記録されている「記録された殺人」
ミュージシャンが巻き込まれた交通事故の裏に潜む事件の謎を描いた「バッド・チューニング」
会社の上司から心当たりのない叱責をされ、身の潔白を暴く「遅れてきた年賀状」
死体遺棄の手伝いをすることとなった悩めるサラリーマンの心情を描く「迷い道」
外部から入ることのできないビルの中で起こった殺人事件の謎を解く「密室の抜け穴」
会社の消えた備品が殺人事件に結びついて行く「アウト・フォーカス」
これらそれぞれが手軽に読むことができ、ライトに楽しめる内容となっている。