<内容>
結婚相談所の所長・柏木亨は、69歳の武内小夜子と組んで、資産家の老人から金をだまし取り続けていた。それは巧妙な手口であり、関係者からは“後妻業”などと言われていた。今も小夜子は90歳の男の内縁の妻となり、その資産を根こそぎ奪おうと画策し・・・・・・
<感想>
怖いなぁという一言。“後妻業”というと今ではワイドショーなどでも取り上げられ、また、これに似たような事件が実際に起きているのだから、まるでドキュメンタリーを読んでいるかのよう。あたかも職種のように“業”と付けているだけあって、その詐欺行為ぶりが用意周到で見事としか言いようがない。この作品では別に刑事事件となるものを起こしているからこそ、警察が動くこととなるのであるが、“後妻業”のみの詐欺であれば、ひょっとすると訴えることさえできないのではないかと。
ただ、これ、騙されている側の老齢の男からすれば、実はそんなものは関係がない。ひょっとすると騙されていること自体、気が付いているのではないかと思われる。ようは、自分で稼いだ金を自分がどう使おうと勝手だろうという考え方であり、それはそれでごもっともである。とはいえ、残された親族からすると、残された遺産はきちんと分配してもらいたいし、場合によると住んでいる家が無くなってしまうなどといった事情があるので、黙ってみているわけにはいかないのである。
本書は、単に“後妻業”というものを書き表すだけではなく、きっちりとエンターテイメントとして書き上げているので、物語としても楽しめる。後妻業を行う柏木亨と武内小夜子の行末はどうなることやらと。
この作品、映画化されたようだが武内小夜子の役を大竹しのぶが演じているようである。大竹しのぶといえば似たような役で貴志祐介氏の「黒い家」にも出ていたような。たまたま偶然かもしれないが、この作品を読んで、いの一番に思い出したのは「黒い家」であった。