<内容>
純愛か裏切りか。結婚式当日の凌辱から、わたしとユウ君の物語は始まった。そして<十三番目の生け贄>という凄絶なAV作品に関わる猟奇殺人。ユウ君と再会したとき、不可解なジグソーパズルは完成した!
<感想>
読んでいるうちになんとなく違和感がわいてきて、トリックについていろいろと夢想させられる。それ自体はなんとなく予想のつくものであるが、本作品はそれだけにとどまらず、ひとつの大きなトリックの周りを他のトリックなどで見事にデコレーションしている。全体的な流れから見て、本格というよりはサスペンスとよんだ方がしっくりくるような気がするが、それが極上のサスペンスとなっている。無駄がなく最終章でさまざまな要素のパズルがピタリとピタリとはまっていく様はお見事。過去のメフィスト賞の中でも一つのエンターテイメント作品として群を抜いているといえよう。
<内容>
作家を志す六人の男女が集う <星の海 チャットルーム>。星の名前をハンドルネームに同人誌を作る彼らに面識はなく、プライベートは隠すことを約束事にしていた。しかし、そのことが、すべのて事件の伏線となり、真の悲劇を招き寄せる。トリックの魔術師が紡ぐ4つの断章は環となって繋がり、衝撃の最終章へ。
<感想>
読み始めてから「フィンガーマジック」でどぎもを抜かれてしまった。ただの軽いミステリーかと思いきや、ちゃんと論理により解決によって犯人の行為をしてきするという結末がまっていたのだ。油断をしていたために、まさに一本とられてしまった。
さらに「殺人ごっご」や「キューピッドは知っている」でも抜群な切れ味を見せてくれる。短編を書かせても非常にうまいのではないかということを今作で存分に見せてくれた。
そして最終章の解決も見事である。計算された伏線を張りかたやラストの繰り返されるどんでん返しも実に見事である。実はちょっと複雑だったので最終章だけ読み返したのだが、読み返すことによって、細かいところもおさえているなと感心させられる。ライトでありつつ、十分に本格があじわえるという逸品に間違いない。
<内容>
生放送のテレビドラマ本番中に、スタジオ内で次々と勃発する事故。毒は本物にすりかえられ、脅迫電話は真実の声音となり、脚本に秘められた真実は、慟哭と贖罪の扉を開く。「完全なる虚構」と「不完全な虚構」という二つの世界が交錯する、入れ子トリックの博覧会。この物語は、著者自らが奏でる鎮魂歌でもある。
<感想>
著者三作めの作品であるが、次々と色々な構成、アイディアを試してくれる。ただ、なんとなく不満に思うのが本格とかミステリーとかいうよりは、ひねりの利いた良質のサスペンスというように思えるところだ。ただし、著者がどのような狙いで書いているかは分からないのでこれはいちがいにはいけない、個人的な意見でしかないのだが・・・・・・
今作を読んで感じたのはフェアではないという気がしたことだ。テレビの中の脚本と脚本の中の作中劇とテレビの外の状景が入り乱れた中で話が進められてゆく。これをはっきりと区分けして話を進めてもらえれば、最後の結末がもっと鮮やかになったのではなかろうか。最後まで読むことによって題名のマトリョーシカという構造に納得がいくだけにもう少しうまく話を進行してもらいたかった。
<内容>
あの嵐の夜、僕は事故にあったらしい。それ以来記憶を蓄積できないからだになってしまった。僕は失われてゆく記憶を少しでも補うために、退院以来、かかさず日記をつけてきたのだ、と妻は説明してくれた。さらに事故に遭ってから半年のあいだに、いちばんの親友が失踪したのだとも。しかし親友が実は殺されていたことを知る。その一瞬、血まみれで死んでいる親友の姿がフラッシュ・バックしてきた。「どうして僕は見ているんだ?」・・・・・・僕の事故と同じ日に死んだ妻の友人、親友の失踪直前に「自殺」した女子高生、さまざまな謎に取り巻かれていく僕。もしかしたら、「僕が殺してしまったのか・・・・・・」
<感想>
これまでの著作の中での最高傑作である。中盤からの徐々に真相が明らかになっていく展開からは目を離すことができなくなった。事故にあった日以来の記憶を蓄積することができない男という主題を用いての力作。傑作サスペンスミステリー。
<内容>
俺−間男(はざまおとこ)は、エロいながらも不安な夢から目を覚ました。そこは人外のモノが跳梁跋扈する絶海の孤島。天下の美人妻・麗華ちゃんと倦怠期解消の船旅に出たはずなのに、待っていたのは謎と怪奇とドタバタだった!? 連続殺人の真犯人とその目的は? 島に隠された神の「のろい」とは? 熱いというより微妙に暑苦しい空の下に展開する、変本格ミステリー。
<感想>
著者名を知らずに読めば石崎幸二氏の作品では? と感じたのではないか。ノリとしてはそんな感じ。しかしながらそれよりも、悪い意味で破天荒な内容となっているのだが・・・・・・
あぁ、なるほど、書きたいことを書いているというのはよくわかる。こういうのを書きたかったんだなぁというのもわかる。バカミスはバカミスでよいのだけれども、やはりそれでも黒田氏の作品を読むというのであれば、読者はどうしてもそれなりのものを求めてしまう。であるからして、もう少し爆発力のあるものを持ってきてもらいたかったなぁとも思う。背景の破天荒さに比べれば、謎自体は結構地味ではないだろうか。殺人事件も連続? といいたくなるようなものでもあるし、“呪い”の謎というのも怨念がこもっているわりには、さほどあっけないというか・・・・・・
こういうのをバカミス? それとも変本格?? あぁこんな言葉はあまりはやってほしくない。
<内容>
北海道の取材を終えた向河原友梨らムック本の取材班は、寝台特急<カシオペア>に乗る。だが友梨は、取材旅行の直前、同僚の笹川耕平が失踪したことに不安を感じていた。彼は、シリアルキラーJに関してある予言をしていたのだ。一方、友梨の婚約者でJを追う刑事・胡田(えびすだ)は、Jに監禁された耕平から連絡を受ける。耕平から、Jの標的が<カシオペア>の友梨たち取材班の中の人物だと伝えられた胡田だが、Jの罠に陥り、意識不明の重体に! そのとき、友梨の体にある異変が・・・・・・
<感想>
よくぞここまでSFチックな設定を持ち出したものだ。さらには度重なるような強引な展開がてんこ盛りである。巷を騒がすシリアルキラー、おたく青年の失踪、人気作家との取材旅行、寝台車の中での連続殺人!? そして婚約者と。
ただ、驚くべきところはそれらを最終的にうまくまとめて一つの作品としているところだろう。しかも、論理的にまとめたり、伏線を張っていたりと十二分に推理小説している。この手腕においてはたいしたものだと言う他はない。
この作家には関しては前作「嘘つきパズル」、前々作「今日を忘れた明日の僕へ」と何を描き、どこへいってしまうのかが全くわからない。
<内容>
「私の笑顔は呪われているんです」。過去の悲劇に囚われたまま、笑顔を封印した一人の女。保母でありながら子供たちに笑みを見せられない彼女にまたしても事件が。<ハーフリース保育園>を舞台にした園児誘拐事件。犯人から現金運搬役に指名された彼女は、幼児図書の営業マン・治郎丸諒、保母の桜澤みどりらの助けを借りて、すべての悲しみの源に突きあたる。
<感想>
ミステリーというよりはドラマという感じ。ユニークな登場人物達と問題を抱えた保母とその保母になつく子供。これらが舞台にそろったとき、誘拐事件が巻き起こる。そしてドタバタ劇と死体発見。そしてラストにはそれなりに伏線を張った論理的な解決劇を持ってくるところはまさに“黒田節”である。
ドラマ仕立てのライトミステリーとして読めば楽しめること請け合い。たぶん続編の構想もすでにできているのではないのだろうか。今後のシリーズでは今作で語られなかった秘密も語られて行くことだろう。
<内容>
すべてが不自然だ。すべtがフィクションに思えてならない。すべてが作り物めいている。しかし・・・・・・。男は、真の闇で満たされた部屋の中、身体を縛られ身動きひとつできずにいた。男を尋問するのは、これまで男が蔑み続けていた友の声。妹の死。元恋人の死。真相は誰の胸の中に? 闇が、心の闇を解き明かす!
<感想>
講談社ノベルスの“密室本”の企画として出版された一冊。今回のこの作品は“密室本”という企画に実に合った内容であると思う。“密室”といっても、推理小説上でいわれる教義のものが使われているわけではない。その閉ざされた部屋というよりも、タイトルの通り、部屋の中に閉じ込められてというような意味の“密室”として扱われている。そしてこの設定を実にうまく生かしきっている。この“闇匣”というものに秘められた意味が明かされたとき、まさに一筋の光が差し込むかのように感じられる。
また、本書では一つの“事故”を巡っての推理が展開されてゆく。四人でいるなかで、そのうちの一人が不可解な事故ともとれるような死を遂げるのであるが、それを追求しての推理がフラッシュバックを繰り返しながら徐々に真相へと近づいて行く。
トリックとしては前例があるといってもいいものなのだが、それが物語や設定とうまく絡み合い、見事なほどきれいにまとめられている。“密室本”の中でも初の快作といってもよいのではないのだろうか。
<内容>
大型スーパー<デイリータウン>のマネージャー袖山剛史は、クレーマー・岬圭祐、万引き常習犯・マンビーという二人の“悪魔”に悩まされていた。ある日岬が、クマ型ペットロボット<テディ・バディ>のケンタを診て欲しいと現われた。治療法を教えて切り抜けたのも束の間、マンビーにデスクトップパソコンを盗まれる。そして岬が再びやってきて「電子レンジでケンタを温めたら死んだ」と。岬の嫌がらせはエスカレートする一方。袖山の心の支えは恋人・美乃の存在だったが・・・・・・
<感想>
クレーマーとはここでは商品に対してクレームをつける消費者のことを指している。本書はそのようなクレーマーと関わることになる店員によって語られるサイコミステリ。
クレーマーや万引きに対して処置をとりながら、鬱屈とストレスがたまっていく店員。その店員の様子が描き続けられる。ただし読んでいきながらも、これは黒田氏の作品であるので当然なんらかの仕掛けをしているはず、このまま終わるわけがないと疑いながら読んでいると大きな事件が起こることになる。
そして、あれが怪しい、これが怪しいと検討を付けながら読んでいったのだが・・・・・・そうきたか。なるほど、見事に物語をひっくり返された。これはサイコ・ミステリーとして、そしてサプライズ・ミステリーとして、非常に面白く仕上がっている。驚天動地といったらおおげさだが、驚かされることは間違いない。
一気に読まされてしまう内容であり、気軽に読める一冊としても仕上がっている。ライト系のサスペンスミステリーを何か今すぐ読みたいという人にお薦め。
<内容>
ルポライター向河原友梨の婚約者の刑事・胡田キョウジは前作にてシリアルキラーJに襲われ、今だ意識不明の重体が続く。しかし今だキョウジに忍び寄る影が。入院中のキョウジが何者かに襲われる。そこに駆けつけた看護婦により一命を取り留めるものの、その病院から小学生の幡野一輝が誘拐される。そんななか、別の事件が社会を騒がせていた。新興宗教の教祖が殺された上に二つに切断され、上半身と下半身が別々のところに遺棄されていた。しかもシリアルキラーJの犯行を示唆するものが・・・・・・。Jの影を追い、教祖殺害の事件を突き止めようとする友梨。そして彼女の行く手には“雪の密室”が待ち構えることに。
<感想>
最近、快調なペースで執筆している黒田氏であるが、内容もそれなりに良くできているのだからたいしたものだ。
本書や、この前に出た「クレイジー・クレイマー」とか、「千年岳の雪密室」もそうであるのだが、黒田氏はサイコ・ミステリーというジャンルを形成していると言ってもよいであろう。しかも、ミステリーとサイコ・ホラーを融合させて、それがあくまでもミステリーよりの作品となっているのが大きな特徴といえよう。そしてその中で、なかなかレベルの高いトリックを用いているのだから本格ミステリーとしても十分に堪能できる。これはこれから黒田氏がどのような本を出していくのかという動向にも注目していきたくなる。
本書の内容は、殺人未遂事件+誘拐事件と教祖死体切断遺棄事件の二つの事件が取り扱われていく。そしてこれに前作でも登場してきた殺人鬼“J”の影が見え隠れし始める。そのなかで謎として大きなものが3つ。
新興宗教の教祖が二つに切断され、なぜそれが別々の場所にて発見されたのか?
誰が病院から幼児を誘拐して、彼らはどこにいるのか?
雪上での犯人の足跡のない殺人トリックとは?
これらの謎について探偵が推理していくというものになっている。トリックにおいては、少々強引な部分もあるものの、うまくできているといえるものである。そしてそれらが物語り上で互いに進行しながら、ひとつの話としてまとめあげられているというのには感心させられる。全体的にミステリーとして完成されているといえよう。
作風としてはシリーズ前作「ふたり探偵」よりも、共作「千年岳の雪密室」に近いものではないだろうか。ひょっとしたら黒田氏はこれらをきっかけにミステリー作家として開眼してきたのではないだろうか。
<内容>
次郎丸の友人が住む古アパート“平和荘”。そのアパートは家賃は安いものの台所とトイレは共同、風呂はなし、しかもドアに鍵がついていない。そんなアパートにて事件が起こった。外から事件を目撃した次郎丸が現場にすぐに駆けつけてきたのだが、事件の痕跡は全くなかった。夢でも見たのかと思いきや、翌日死体はまったく別の場所にて発見された! そして事件はさらなる展開へと・・・・・・
<感想>
黒田氏の今までの作品はどちらかというと本格推理小説にこだわったようなトリック重視のものが主であったと思える。しかし本書は推理小説というものに重点を置きつつも、物語性にも重視した作品として完成されている。社会派作品とまではいわないにしても、“いじめ”や“自殺”というものにあえて向き合った内容には感心させられてしまう。
本書は“ハーフリース保育園シリーズ”の第2弾にあたる。前作が出てから月日が経っているので、登場人物らを思い出しながら読んでいった。地味で気が弱い主人公の次郎丸、探偵役である端正な顔立ちの保育園の園長、まじめながらも言動が奇妙な山添女史。キャラクターとしてはどれもまだ印象が薄い。特に探偵役の印象が薄いのでそういうふうに感じられてしまうのかもしれない。そのへんはシリーズが続くにあたって徐々に印象深いものになっていってもらいたい。せっかくのシリーズものなのだからキャラクター性というものにも期待したいものである。
また本書はミステリーとしての内容はどうであろうか。ミステリーとして、この作品はトリックだけ取り上げれば平凡であるといえるだろう。しかし、舞台となる“平和荘”の特徴や物語全体の流れの中での事件の関連性といった部分は凝った作りになっていると言える。事件のが進行してゆき、さまざまな疑惑が持ち上がってくるのだが、それがラストに一本の糸が伸びていくように謎がほぐれていくのは印象的である。
これは総合的に見るとかなり良くできた作品ではないかと思える。また、黒田氏自身の作風にも幅が出てきて、これからの作品にさらなる期待を寄せたくなってしまう。案外、今年あたりブレイクする作家というのは、この黒田氏あたりなのかもしれない。
<内容>
フリーの作家の来栖は先輩である各務秀則の不可解な死について調べていた。優秀なプログラマーであった各務がなぜ死ななければならなかったのか? どうやらそのヒントは死の直前まで各務が利用していたネットワーク上のヴァーチャル・コミュニティー、<惑星ペルセポネ>に関係があるようなのだ。そんな折、ちょうど来栖に編集者から<惑星ペルセポネ>の記事を書いてもらいたいと依頼され、<惑星ペルセポネ>にログインをすることに。そして来栖は電脳空間上でも不可解な事件に巻き込まれることになり・・・・・・
<感想>
最近、書き方がずいぶん安定してきたかのように感じられた黒田氏であったが、本書は以前の書き方に戻ってしまったかのような印象。この作品の背景のせいでもあるかもしれないが、全体的にごちゃごちゃしていて少々わかりにくく感じられた。
本書の背景はネットワーク・ゲームを題材にしたヴァーチャル・リアリティ・ミステリーとでもいうべきか。現実で起こる事件と仮想世界で起こる事件とが入り乱れてゆくというもの。本作品ではそのヴァーチャルな空間を利用しての仕掛けが満載の作品となっている。
本書を読んで感じたのはネットワーク・ゲームの空間というものはいまひとつミステリーにマッチしないのではということ。それはなぜかというと、ネットワークというもの自体があまりにも“何でもあり”ということが理由である。例をひとつとってみると、本書では他人のパスワードを入手して、別の登場人物に成り代わりゲームの中へ入っていくということが行われている。ただこの、人のパスワードを簡単に取得できるというのをミステリーに当てはめると、密室であるはずの部屋の鍵を手に入れて簡単に出入りできるということと同じ事のように感じられるのだ。実際にネットワークの知識を持った人であれば、他人のパスワードを入手するということは簡単なのかもしれない。しかし、そこに条件をつけなければ、それこそなんでもありという世界になってしまうように思えるのだ。
ネットワーク・ゲームを用いることが悪いとは思わないのだが、もう少し条件付けをきっちりとしなければ、厳密なミステリーとしては受け入れられないのではないかと思われる。
とはいえ、本書ではネットワークの空間を利用してのさまざまなトリックが扱われ、複雑ながらも虚構と現実を生かしたミステリーの世界が彩られている。このような世界が実際にインターネット上で繰り広げられ、こんなミステリーもこれからますます取り入れられてくるだろうということで、その入り口として本書を読んでみてはいかがであろうか。
<内容>
セーフティー・ライフという防犯グッズを売る会社にて働いている僕は、ある日先輩に呼び出されて、人里はなれた所に建てられたシェルターへと向かっていた。しかし、そのシェルター近くで何者かに襲われて、僕は病院へ運び込まれることに。後に知らされたことであるが、そのシェルターの中で僕を呼び出したはずの先輩は殺害されていたという。最近、巷を騒がしている通り魔による犯行なのであろうか・・・・・・。そして僕自身はというと、そのときの事故により動くものを認識できなくなってしまい・・・・・・
<感想>
今作ではなかなか面白い設定を構築し、そしてその設定を生かし、見事に創り上げた世界の中でミステリーを成立させている。昔、西澤氏が書いていたような作品を、まるで黒田氏が引き継いだのではないかと思われるような書きっぷりである。
本書では、護身用のアイテムを売る販売員という設定と、事故によって負ってしまった不可解な脳の異常状態を組み合わせたミステリーとなっている。さらに主人公を取り巻く人間関係もうまく設定することによってミステリーに幅を広げていると感じられた。
また、今回のトリックが暴かれたときには、ちょっと違うバージョンの“姑獲鳥の夏トリック”と思えてしまった。本書では上記に述べた設定により“見えない”トリックを成立させ、うまく密室状況を構築しているというところがなかなか面白かった。
こんな作品を頻繁に書かかれるようになったら西澤氏あたりはうかうかしてられないのでは、と感じてしまうのは余計なことであろうか? とはいえ、黒田氏が今一番何かをやってくれそうな期待の作家であるという事は事実であろう。去年も今年も言い続けているような気がするが、そろそろブレイクする1冊が欲しいところ。
<内容>
女好きのプレイボーイ、二次元の美少女しか愛せないオタク男、女性を愛せない同性愛者、ずっと母親の世話になってきた独身男、恋人と仲が良いのにも関わらず結婚に踏み切れない男。さまざまな男たちの結婚観を描いた長編小説。
<感想>
上記に書いた内容を見ると、一見短編小説のように思えるかもしれないが、多視点で語られる長編小説となっている。5人の男を中心としてそれぞれ別の境遇、それぞれの結婚観を持ちながら悩んでいく様が描かれている。
と言っても、本書がただの恋愛小説かというとそれだけには終わらない。なにしろミステリー作家の黒田氏が書いているわけだから、きちんとミステリーにより味付けされている。ただ、5人という登場人物の数が多い事より、若干書き足りないように思えることと、ミステリーとしても薄味になっているというところは不満な点である。
とても読みやすい小説に仕上がっていると思うのだが、この内容であれば文庫で読んでも十分だったかなという感じである。
<内容>
クラスの中でも目立たない少女、天童玲美は名門私立大学を受験しようと思い立つ。それは事故で死んだ亡き姉の死の真相を探るためであった。とはいうものの、難関の名門私立大学に入る事ができるほど玲美は頭がよくなかった。そこで、玲美の友人達と絶対ばれないカンニング方法を協力して考え出すのであったが・・・・・・
<感想>
うーん、ミステリーというよりは、もはやライトノベルズという内容である。話としてはそこそこ面白く読めたのだけれど、特に強く印象に残るようなものはなかった。
本書ではタイトルどおり、試験中に“カンニング”を行うというのが主題のひとつになっているのだが、それについてもいまひとつ。ここで出てくるカンニング方法のだいたいが既出のものであるか、ハイテクに頼るかなので、とくに感心させられるような手法というのはなかったかなと。
まぁ、いつでもどこでも手軽に読むことのできる一冊という事で。ライトノベルとしては楽しめる作品。
<内容>
クラスメイトが三階の教室から飛び降り自殺をはかり、意識不明で入院している。夏休みに、そのクラスメイトの名前宛てのメールにより6人の男女が教室に呼び寄せられた。いったい何のために誰が? クラスメイトは自殺をはかったのではなく、何らかの原因がそこにあったというのか!?
<感想>
パッと見た感じでは、辻村深月氏が書きそうな作風。ただし、辻村氏のほうがもう少しうまくまとめたのではないかなとも感じられた。6人のクラスメイトが集められ、クラスメイトの自殺未遂の真相を導き出すという話。
この作品を読み終えて一番気になったのは、6人も登場させる必要があったのかなということ。確かに人数が多いほうが、途中の道筋に幅を持たせる事ができるのだろうが、最終的には話の核心に関係のある人物が半分くらいしかいなかったように思える。もう少し、それぞれの個性を真相に生かしてもらいたかったところ。また、ほとんど互いに関りあいのない6人が集まらなければならないという根拠も薄いと感じられた。
まぁ、真相についてはなるほどとは思えたものの、あまり納得したくないような結末ではあった。感動させるような話と、犯人を当てるための推理小説というのは、融合させるのが難しいのではないかと思われる。これくらいのページ数であれば、どちらかに絞ったほうがよかったのではないだろうか。ただし、うまくそれらを融合させる事ができれば、すごい小説になるということは間違いないであろう。
<内容>
ピアニストの新庄篤は車の事故により大けがをし、出場するはずであったピアノコンテストに参加できなくなる。寝たきりの生活をおくっていた篤は、ある日、献身的な介護を続けてくれた妻の浮気現場を目撃してしまう。そして激情のあまり妻を殺し、家を飛び出すことに! 篤はパジャマ姿のままあてもなく外をさまよい歩くのだが、そこでココロという美少女と出会う。このココロという少女は、何故かトラブルに出くわす体質のようなのだが、篤は彼女と共に行動するうちに事件に巻き込まれることとなり・・・・・・
<感想>
妻の運転ミスにより大けがをしたピアニスト。その事故以来、くまのぬいぐるみの幻が彼に語りかけてくる。浮気現場を目撃し、妻を殺害。ココロという女性と出会い、行動を共にする。巷では爆弾魔がはびこる。ココロを襲う奇妙な事件の数々。
と、断片的に書くと、こんな具合に話が展開していく。先が全く読めないなかで、最終的に思いもよらない結末を迎えることに・・・・・・となるはずなのだが、さすがに無理のある結末だったのではないかと。話が矛盾しないように物語を作っているかのようなのだが、結末を知った上で話を思い返して見ても、話がうまく進行していくようには思えなかった。奇抜すぎたという印象のみが強かった。