群衆の悪魔 デュパン第四の事件


 フランスで革命によるデモが頻繁に起きはじめた。そのさなか、学生によるデモ隊と銃をかまえた警官隊が緊張のなか向かい合う。そのとき、学生側から放たれた一発の銃声がきっかけとなり、警官隊による銃の乱射が起き大惨事となる。そのとき、無名の詩人であるシャルルはその瞬間を目撃していた。その引き金となった一発の銃声は、学生側に紛れ込んでいた男の手によってデモの前衛に立ち取材をしていた記者のヴァランスを打ち抜いたのだった。シャルルはその光景に事件性を感じ、過去にいくつかの事件を解決し、現在は隠遁しているオーギュスト・デュパンに相談をする。話を聞いて事件の裏に何か隠されているのを感じたデュパンはシャルルと共に捜査に乗り出すことにする。


 デュパンらは、まずヴァランスが何の事件を追っていたのかを調べることから始めることに。まず、<プレス>で働いていたヴァランスの雇い主であり、社主であるジラルダンに話を聞きにいく。そこでジラルダンから彼の妻でデュパンの知人でもあるデルフィーヌがデュパンに会いたがっているとの伝言を受け取る。デルフィーヌの元へ行くと、デルフィーヌからジュスティーヌ・ド・モンテルランという子爵夫人のことで相談に乗ってほしいと頼まれる。ジュスティーヌには何か心配事があるようだという。彼女は一年前に押し込み強盗によって主人を亡くしており、その事によるものなのか、最近<プレス>の記者のヴァランスにつきまとわれていたというのだ。


 事件に関係ありとみてデュパンらはジュスティーヌの下へと訪ねてゆく。彼女は何者かから彼女の育ての親であったベルトラン夫人からとある手紙が来たという内容の手紙を受け取ったという。しかもそれきりベルトラン夫人とは連絡がとれなくなっていると。ジュスティーヌはベルトラン夫人を探してもらいたいとデュパンに頼むのだった。
 彼らが話しているさなか窓に人影が見え、デュパンとシャルルはその人物を追いかけるが、見つけたのは足跡のみ。そとのき部屋から悲鳴が聞こえてあわてて取って返すと・・・・・・そこには倒れているジュスティーヌとおびえた小間使いのクリスティーヌが立ちつくしていた。クリスティーヌがいうには、ジュスティーヌのワイングラスの中に突然空中からしずくが落ちてきて、ジュスティーヌがそれを飲み干すとそのまま倒れたのだという。ジュスティーヌは毒殺された! デュパンが人を呼びにいったさいに、シャルルは何者かに襲われる羽目に合う。そしてクリスティーヌは姿をくらましてしまった。
 後日、シャルルをジュスティーヌの邸で襲った男をデュパンの知人の老刑事ヴィドックが捕まえたという。その男はヴィクトールといい、クリスティーヌの兄であった。彼ら兄妹はジュスティーヌとルイ・ナポレオンの義弟であるモルニー伯爵との恋文を奪い、金儲けをしようと計画していたのだという。


 デュパンとシャルルは消え去ったクリスティーヌの行方を追うことに。聞き込みにより、クリスティーヌの友人である高級娼婦のジェニー・パンゲの元に身を寄せていることを知る。デュパン、ヴィドック、シャルルの三人で訪ねてみると、空の浴槽の中で全裸のクリスティーヌが刺殺体で発見された。その殺害の状況をみると密室での殺人のように・・・・・・
 その後のヴィドックの調査により行方知れずとなっていたベルトラン夫人がすでに殺されていたことを突き止める。しかもベルトラン夫人はヴァランスが殺されるよりも前に死んでいたことが明らかになる。どうもそのベルトラン夫人は生活に困ってジュスティーヌを脅迫していた疑いがもたれるのだった。その脅迫の内容に関わる手紙をクリスティーヌが持ち出し、さらにジェニー・パンゲが持ち出し行方をくらませているという状況になったということだ。


 捜査が進められつつもシャルルは財産難から生活苦に陥り、酒におぼれてゆく。また彼はクリスティーヌが殺された日に麻薬におぼれ記憶がなく、自分が殺害したのではという幻想を抱くようになる。そんな折、彼は酒場でヴァランス事件で目撃した犯人の男を発見する。彼の身元を突き止めようと男の後をつけていくことに。男は建設中のさる邸に入っていき、シャルルもその後を追って邸の中へと入っていく。するとその邸の一室で黒ミサが行われるかのような舞台に全裸の女が横たわっていた。そこでシャルルは何者かに襲われて昏倒する。
 シャルルは自分が襲われたその部屋でふと意識をもどす。鏡で傷の具合を確かめてみようとすると、鏡の中の自分が勝手に動き出し、自分と違う行動をし始める。硬直して鏡を見入る彼の前で鏡の中の彼は後ずさり、背後の全裸の女を刺し殺す。はっとして後ろを振り向くと、ナイフで刺された女性が横たわっていた。シャルルは恐ろしさのあまりその場から逃げ出す。
 翌日セーヌ川でジェニー・パンゲの死体が発見される。それはシャルルが刺し殺したと思われる女性であった。


 第一の殺人 ベルトラン夫人殺害
 第二の殺人 ヴァランスの銃殺
 第三の殺人 ジュスティーヌの毒殺
 第四の殺人 クリスティーヌの密室での刺殺
 第五の殺人 ジェニー・パンゲの刺殺


 デュパンはこれらの一連の事件が同一犯によるものだという。容疑者はジュスティーヌの愛人と噂されるモルニー伯爵、新聞王ジラルダン、革命家オーギュスト・ブランキ、作家バルザック。彼らのうちのなかで犯人はいったい誰なのか? そしてそれぞれの殺害方法は!?



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