根津愛代理探偵事務所
「カレーライスは知っていた」 (『創元推理』1995年秋号・冬号)
根津愛六歳。父、根津信三(43)が解決した奇怪な事件。
宿直の桐野刑事は夜に女性が助けを求める電話を受ける。それは110番通報でなく、直接署に掛かってきた電話なので逆探知はできなかった。桐野は課長に相談し、電話から分かったことを元に女性を特定しようとしたがさすがに不可能であった。そして次の日・・・・・・
午後にマンションの一室で絞殺された女性が発見された。死亡推定時刻より桐野が昨日電話を受けた女性ではないかと思われた! 最初は単なる殺人事件かと思われたが、そこには不可解な謎が隠されていたのだった!! 現場には食事のカレーを食べ終えた形跡があったのだが、解剖の結果被害者の胃の中にはカレーが発見されなかったのだ。しかも昨晩彼女と電話で話したものの形跡により推測すると、犯人は料理中の被害者を殺害し、料理途中のカレーを調理して、その後カレーを食べて現場を後にしたのではないかと思われるのだった。なぜ犯人はそんな不可解なことを??
非番の旅行から帰ってきた根津信三は現場に残っていたカレーを味見してみたとたん、「ああ、犯人がわかりました。」と・・・・・・
残ったカレーに残された秘密とは? 犯人とはいったい!?
「だって、冷え性なんだモン!」 (『創元推理』1996年秋号・冬号)
現場に残されていた死体は奇妙な格好をしていた。彼女はロングガウンを着ていて、両手に互い違いの手袋をしていた。さらに互い違いのスリッパを履いており、互い違いのイヤリングをしていたのだった。これは犯人のしわざに違いないはずなのだが、なぜ犯人はこんなことをしたのだろうか?
容疑者となった人物は三人。それぞれの者達が、被害者と愛人関係にあったのだった。彼らには皆、殺人動機があった。彼らの中に犯人が・・・・・・
桐野から容疑者三人の様子を聞いた根津愛は被害者が奇妙な格好をしている理由により、犯人を名指しする!いったい犯人は!?
「スケートおじさん」 (書き下ろし)
その男はブランド物のスーツを着ているものの、この寒さの中コートは着ていなかった。半分白髪混じりのオールバックの髪。その老紳士は突然、疾走しはじめ凍った路面の上でスケートごっこでもするようにスーイスーイと滑り始めたのだった。誰もがあっけにとられる中、スケートおじさんは疾走してゆく。
「コロッケの密室」 (書き下ろし)
彼女は借金をしていた裕福な友人のものである高価な宝石を奪おうとしていた。ところが盗もうと策略をめぐらせていたときに手違いで宝石がコロッケの中に紛れ込んでいたのであった。そしてパーティのためにその友人と一緒に食事の準備をしていたとき(宝石が入っているはずのコロッケは目の前にあるのだが・・・・・・)その友人が婚約者と電話でやり取りを始めた。友人は料理の準備を一人でやったことにしようとしていたため婚約者に今一人でコロッケを作っていると電話でしゃべっていた。それを聞き彼女は、これが機だと思い、電話している最中に彼女を殺害した! そしてコロッケを全てビニールに突っ込み、現場から逃走した。
その後、パーティに自分も参加することになっていたためコロッケを隠してから彼女は現場にもどってきた。だが、その現場には桐野と共にパーティに呼ばれていた根津愛もやってきており、愛は現場から犯人を探し、現場からなくなったと思われる高価な宝石の行方までも探し当てるのであった! そしてその真相は犯人でさえも驚愕するものであった!!
「死への密室」 (『密室殺人大百科(下巻)』2000年7月)
桐野と愛の前でその男は壁をすり抜けるという。彼が新築したその奇妙な場所に建つ、ちょっと奇妙な自分の家で皆が目隠しをして、“シェー”のポーズをとったとき、60秒以内に彼は壁をすり抜けて隣の部屋へと写るのだという。そして実際彼は言葉通り、皆の前で、密室から抜け出したのであった!
しかし、愛はすでにこの家に来たときからこの脱出劇の謎を解いていたのだった。その謎とはいったい!?
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