<内容>
時代は第2次世界大戦前、アメリカ南部の田舎町にてジェゼフ・カルヴィン・ヴォーン少年は母親と二人で暮らしていた。そんな田舎町にて少女が次々と惨殺体で発見されるという事件が起きる。その事件の被害者にはヴォーンの知り合いの少女も含まれていた。犯人が捕まらない状況の中、ヴォーンは友人たちと共に町を守ろうとガーディアンズを結成するものの、全くうまくいかず被害は増える一方。そうしたなか、ヴォーンの母親が精神のバランスを崩して病院に入院することとなり・・・・・・
<感想>
2年前くらいに少々話題になった作品。積読にしていて、ようやく読むことができたのだが、これがまた凄まじいとしか言いようのない作品。少年の成長を描いた作品というにはあまりにも残酷で無残な内容である。
基本的な内容はヴォーンという少年が住む街に連続幼女殺人犯が現れ、その影におびえて暮らすという内容。こうした内容のものであれば、大人になるにつれてそういった苦悩は消えつつあるはずなのであるが、年を追うにしたがい、ヴォーンの抱える苦悩は増してゆくばかりとなる。
スティーブン・キングの作品であれば、超自然的なものが介在するのであるが、この小説では常に現実のものとして主人公に災いがふりかかってくる。さらに付け加えれば、彼には味方がいなく、孤立無援でその影と闘わなくてはならないのである。
本当に最後の最後まで真相がわからないように描かれているのだが、その真相もなかなか驚かされるものであり、主人公を追いかけ続けてきた理不尽さがいかに大きなものであったかに気づかされることとなる。
本書の欠点はといえば、やや読みづらいというところ。ただ、そのへんは著者の作風というか、意図的に文学的な作調で仕上げようとしていることが感じられ、読みづらさはいたしかたないことなのかもしれない。あとは、内容がどうにも暗すぎるというのもまた欠点といえるかもしれない。
久々に印象的な本を読んだという気がする。読んでいる最中はそうでもなかったのだが、読み終えた後に物語を思い返してみると主人公の生きてきた歳月が非常に重くのしかかってくる。読了後に真の暗さを感じさせられる強烈な作品であった。個人的には物語ながらも主人公がよくぞこの重さを抱えながらここまで生き延びたということに賞賛したい。