<内容>
パーカー達7人は、フットボール・スタジアムからの現金の強奪に成功した。その金をパーカーが預かっていたのだが、部屋を10分くらいあけていた隙に、一緒に住んでいた女が殺され、現金までもが盗まれていた。パーカーは現金を盗んだ者を見つけ出し、復讐しようとするのであったが・・・・・・
<感想>
これは章立てといい、構成といい、パーカー作品らしいといえよう。この作品を機に他のものも復刊してもらいたいものである。
本書は“パーカーの失敗”とも言えるような内容。自分が預かっていた金を何者かに盗まれてしまう。ふと、思ったのは、パーカー以外の者が金を盗まれていたのであれば、パーカーはどのような行動をとったのだろうということ。今回の件に関しては、ほとんどパーカーは反省していなかったようだが、結末まで読むと、もう少し仲間に対して謙虚になってもよいと思えたのだが。
短い作品ながらも、多くの登場人物の気持ちが整理して書かれ、実にわかりやすい内容となっている。このページ数で多視点による作品を描いて、よくうまく書けるなと感心してしまう。また、結末でパーカーが遭遇する場面は、痛烈な皮肉が利いていて実によいと思えた。
<内容>
あたりに見えるのは遊園地だけだった。逃げ道を選ぶ余裕はない。背後にはパトカーのサイレンが容赦なく迫っている。パーカーは銀行の装甲車を襲撃して奪った金とともに人影のない遊園地に一人で身を隠した。が、その姿を街のギャング、カリアートと彼の息のかかった警官達が見ていたのだ。一計を案じたカリアートは、警察が知る前に仲間たちと遊園地に乗り込み、金を横取りする計画を立てた。しかし、敵の企みを察知したパーカーは、遊戯物に罠をしかけて襲撃を待ち受けていた!
<内容>
キャスマンと名乗る男がパーカーにヤマを持ちかけてきた。試験興行中のカジノ船を襲撃し、溢れるばかりの現金を強奪する計画だ。電話で“仕事”を依頼するその男に不信の念を抱きつつ、パーカーは仲間達を集めて計画を進める。襲撃の夜、州議員とその護衛を装ってパーカーたちはカジノ船に乗り込むが、彼らを監視する一人の男の姿が!
<内容>
新しい仲間三人と組んで銀行を襲撃したパーカーは、見事千二百万ドルの強奪に成功する。しかし三人組はパーカーの分け前を奪って逃走。どうやら次の大掛かりな襲撃の資金にしようとしているらしい。復讐に燃えたパーカーは大胆不敵な報復計画を企てるが、その矢先、正体不明の刺客に襲われ瀕死の重傷を負い・・・・・・
<内容>
パーカーは強盗仲間に誘われて、別荘の隠し部屋の中の絵画を強奪する計画に乗ることに。しかし、その家は最新鋭のハイテク機器で護られているのであった。仲間に保護観察中のIT機器に詳しい犯罪者を加えて、なんとか強奪計画を練ろうとするパーカー達。ただそのとき、パーカーは別の事件で恨みをかった者から命を狙われている真っ最中であったのだが・・・・・・
<感想>
展開としてはパーカーのシリーズというよりも、むしろドートマンダーのシリーズに近いものがあったと思える。できればもう少しスマートにハイテク機器に護られたお宝に挑んでもらいたかったところである。こういう結末の付け方では、結局IT機器にはかなわなかったという見方になってしまうので、是非ともパーカー達には“電子の要塞”を正面から打ち破ってもらいたかった。別の作品でまたこういった獲物にリベンジしてはもらえないだろうか。
ただし、全編にまとわれている非情さに関してはパーカー・シリーズそのものである。必要であれば殺人でさえもためらわないパーカー、そしてその強盗仲間達との関係はいかにもこのシリーズらしく描かれている。強盗仲間であるとはいえ、その関係は常に微妙なバランスの上に建っているというスタンスでの書き方は絶妙と感じられた。
<内容>
刑事ミッチ・トビンは、愛人と会っていた間に、相棒が単独で犯人逮捕に行き射殺され件により警察を追われる羽目に。妻に許され、親子3人で暮らし続けるものの、金に困り始めた矢先、彼のもとに地元の犯罪組織から仕事の依頼が舞い込んでくる。犯罪組織のニューヨーク支部長である男の愛人が、彼の元から金を持ち逃げし、その後死体で発見されたのだ。その愛人を殺害したものを探し出してもらいたいという依頼。金のためにタッカー・コウは依頼を受けることを決める。そして、関係者に対し聞き込みを始めてゆき・・・・・・
<感想>
タッカー・コウとはドナルド・E・ウェストレイクの別名義。ウェストレイクはリチャード・スターク名義で悪党パーカー・シリーズを書いていたが、このタッカー・コウ名義では元刑事ミッチ・トビンのシリーズを書いている。
主人公ミッチ・トビンは、警察を追われることになった元刑事。なんとか家庭の崩壊はまぬがれたものの、今後は妻の稼ぎで生活していかなければならない羽目となる。そんなときに、犯罪組織の支部長から事件の依頼があり、金を目当てに事件を引き受けることとなる。
主人公は、警察から追われることとなったものの、今でも刑事の魂は秘めており、なおかつ刑事の仕事に未練を感じてもいる。そして結局自分は刑事の仕事しかできないと実感しながら、いやいやながら受けた犯罪組織の仕事に対しても、どこかやりがいを感じつつ没頭してゆくこととなる。
事件捜査は、容疑者に対する尋問がほとんどであるが、派手な展開も含みつつ物語が進行してゆくので飽きずに読みすすめることができる。微妙な立場での、まっとうな事件ともいえない捜査を行う主人公の様相がうまく描かれた作品と言えよう。最後にはどんでん返しというほどではないかもしれないが、ちょっとした見せ場を作っているので、ミステリとしてもなかなかのもの。
このシリーズは、ほぼ絶版となっているので入手しづらいのが残念なところ。手に入れば、シリーズの続編も読んでみたいところなのだが。
<内容>
夫婦である、バリーとローラの二人はとうとう持ち金を使い果たし、困り果てる事に。そこで二人が思いついたのは、夫のバリーを死んだ事にして保険会社から金をせしめようというものであった。さっそく計画を実行するために、ローラの生まれ故郷で彼女の兄弟達がいる南米へと向かうのであったが・・・・・・
<感想>
日本ではウェストレイク名義で発表されているが、アメリカでは複雑な契約内容により、ウェストレイクの名前では出版する事ができず、ジャドスン・ジャック・カーマイクルという名義で発表された本。ちなみにイギリスで出版された際には、そのような制約はなく、そのままウェストレイク名義で発表されたという。
本書は夫を死んだ事にして保険金を得ようとする夫婦のてん末がコメディタッチで描かれた作品。アイディアとしては、どこかで聞いた事のあるようなものではあるが、それなりに楽しむ事ができた。
その計画がなされ、夫のバリーが潜伏している中、色々な邪魔が入り、バリーはさまざまな選択に迫られる事になる。それを読んでいるときに感じたのは、「あぁ、この先ノワール風の展開になるのかな」という事。しかし、バリーはその気の弱さからか、思い切った行動に出るようなことはなく、ずるずると運命に導かれるがまま時を過ごしていく事になる。その結果、ノワール風の展開になる事はなかったのだが、これは結果的によかったのではないかと思っている。
本書はあくまでもコメディ・タッチの作品であって、それを貫き通す事により、平凡ながらもしっかりと筋の通った作品となっていたと思われる。まさに“弱気な死人”がもたらした効果といえよう。