<内容>
ひとりの男が家族を連れ、車で逃亡していた。やがて車は田舎町のガソリンスタンドで止まるが、乗っていた妻と子供は既に死亡し、男も瀕死の状態であった。男は軍事施設で研究されていた強力なウイルスに感染しており、やがてそれらは空気感染し、次から次へと人々へと移り、アメリカ国民の全てが謎の病気に感染してゆくことに。
最初にガソリンスタンドでの出来事に遭遇しながらも病気が発症しないスチュー・レッドマン、学生ながら妊娠してしまい今後の人生に悩むフラニー・ゴールドスミス、聾唖ながら独り旅を続けていた青年ニック・アンドロス、流行歌手でありながら借金取りから逃げ回るラリー・アンダーウッド、彼らの人生には今後何が待ち受けているのか!?
そして、ついにアメリカが荒廃しはじめ・・・・・・
<感想>
文庫版で読んでいるので5巻まで全部読み終えてから感想を書けばよいと思っていたのだが、思いの他すごい内容であったので、各巻ごとに感想を書いてゆくことにした。
どのような内容なのか、あらすじも見ずに読み始めたため、その内容のすさまじさに驚かされる。人類の滅亡とか、地球の破滅などを描いた作品はSF小説などで多々あるのではないだろうか。ただ、それを戦争や核兵器などではなく、ウイルスによる感染からその様相を刻々と描きつづった作品というのは類を見ないように思える。
本書の内容はひたすら恐ろしく、謎のウイルスが何の前触れもなく、出会った人に、どんどん鼠算式に空気感染して行き、あっという間に拡大してゆくこととなる。しかもそれが見た目は普通のインフルエンザと変わらなく、発症した人はただの風邪であるとしか感じない。それがいっこうに治らず、数日のうちにそのまま死に絶えてしまうという病気なのである。
政府や軍はそれらのウイルス発症者を隔離しようとするのだが、あっという間に空気感染するがゆえに、想像を超えてウイルスがアメリカ中に広がって行くこととなり、その拡大を抑える事ができず、崩壊の一途をたどるのみとなる。
という状況の中で物語の中心となりそうな何人かの人物が出てきており、彼らが今後それぞれこの荒廃しつつあるなかでどのように生き延びてゆくかが書かれていくのだろうと考えている。1巻では、まだ世界が完全に滅びきったというわけではないので、2巻あたりからこの状況は加速し始めるのではないかと思える。これはとにかく先の見えない話である。これは1巻を読み終えたらすぐに続きが読みたくなってしまったので早めに読んでゆきたいと思っている(目標では今年2009年中に全て読み終える予定)。
<内容>
新型インフルエンザ<スーパー・フルー>はアメリカだけでななく世界中を侵食してゆく。アメリカではインフルエンザの影響によりほとんどの人間が死んでいった。しかし、そのなかに病気が発症しない若干名の生き残った者たちがいた。彼らはそれぞれ異なる街で孤立していたが、他に生き残ったもの同士で力を合わせようとそれぞれが旅立ちはじめる。
<感想>
この感想を書いているのが2009年5月10日であり、ニュースではメキシコで発症したと思われるインフルエンザについて大々的に報じており、そんなときにこの「ザ・スタンド」を読んでいると恐怖心がさらに増してくる。
この第2巻ではインフルエンザの猛威により滅びた世界が描かれている。新型インフルエンザによって、少なくともアメリカのほとんどの人は死に絶えたようで、若干名の生き残った者達が孤独になんとか生活を続けている。
そして今回のポイントは何といっても生き残った者達が合流しようと行動を起こし始めたことである。それは種の保存として必然であるのかもしれないが、そこには超自然的な力も介在している。
本書はバイオハザードにより人類が滅亡の危機を迎えたときに、いかにして残った者達が生き延びてゆくかということがテーマのひとつであろう。ただ、これはノンフィクションであり、ジャンルとしてファンタジー的な面も備えているゆえにそれだけでは終わらない。
ザ・スタンドという作品はどうやら善と悪の対決の物語でもあるようなのだ。今回生き残った者達が合流しつつあるのだが、善のものに引き寄せられるものと、悪に引き込まれるものとの2手に分かれつつあるようだ。
そしてその大いなる目的が第3巻で語られ前半が終了となり、後半戦へと突入していく模様。だが、合流していく人たちも決して一枚岩になるとも思えない。今後どのように展開していくことやら。続きを読むのが楽しみである。
<内容>
荒廃した世界のなかで、人々は夢に引かれて一つの場所へと導かれることとなる。黒人の老女マザー・アバゲイルのもとへと向かう人々。そして一方では、ランドル・フラッグと称する男のもとへ悪の軍勢が集まり始めていた。マザー・アバゲイルのもとへと集まってきた人々は、組織だったコミュニティを作り、さらには悪の軍勢に対する準備を始めることに。
<感想>
3巻目に来て、また思い描いていた展開と異なる方向へと進んでいくことに。1、2巻を読んでいたときは、善と悪との対決といっても個人的な対決というか数人規模の対決に終始するのだろうというくらいに思っていた。しかし、それぞれの善と悪の元に集まり始めた人々の数は千人近くという規模へと膨らんでゆく。
今まで1、2巻で登場してきた名前のある人々はそれらコミュニティの主要人物となって動き始める。そしていよいよそのコミュニティをまとめ始めようとするところで3巻は終わる。また、この巻では今まで以上に悪の軍勢の描写にも多く割かれることとなり、その様相がいよいよ垣間見え始めてゆく。ただ、悪の軍勢に関してはランドル・フラッグという核となる人物以外は、本当に主要と言える人物が誰なのかわかりづらいというか、疑い深い悪の首領がそういう人物を作らないというか、今後どのような行動に出てゆくのかは全くわからない。
3巻の最後で4巻以降へと続きそうな展開としては、善の軍勢が悪の軍勢に対してスパイを送り込んで内情視察をしようということと、善の軍勢の中に芽生え始める悪の軍勢のためへの行動。こういったものを経て、これから大団円へと続くのであろう。
正直のところ、ここまで読んだ限りではどちらが有利でどちらが不利とも全く考えられない状況。とりあえずは悪の側のほうが、善の側へと攻撃をしかけてきそうな気配がするといったところ。
物語はどんどんと予想だにしない展開を続け、ページをめくる手もどんどん進んでゆくこととなる。この「ザ・スタンド」に対しては、読み始める前はかなり時間がかかりそうだと思っていたのだが、読み始めてみるとそんなことはなく、かなりのハイペースで読み上げることとなっている。意外と、今読んでいる本のなかで一番先が楽しみな作品といえるかもしれない。
<内容>
マザー・アバゲイルのもとへと次々と集まってくる人々。しかしその最中、マザー・アバゲイルが一枚のメモを残し、突如失踪してしまう。そうしたなか、コミュニティの中の者達は膨れ上がる人々をまとめようと、議会、そしてその代表者となる代議員を選出してゆく。順調にコミュニティがまとまり始めようとしている中、ハロルドが暗躍し始め・・・・・・
<感想>
4巻へ来てもまだ、こちらの予想をうらぎる(良い意味で)ような展開で物語が進んでゆく。とうとう正義の軍団と悪の軍団がぶつかりはじめるのかと思いきや、話はそういった方向では進まない。今回は、マザー・アバゲイル不在のもと、コミュニティの成長と混乱が描かれた内容となっている。
4巻では悪の軍勢については全く語られず、善の軍勢のみの話となっている。コミュニティは人が膨れ上がり、徐々に問題が置き始めようとしているものの、主要メンバーらの力によって何とか良い方向へと導かれてゆくことに。しかし、それをそのままにしないのが、最初から登場していた不確定要素であるハロルド・ローダーの存在である。ただ彼自身が善の方向へと進むのか、悪の方向へと進むのか迷う部分もあり、余談は許さない状況。ただし、この巻で彼自身が進む方向を決めることとなるのだが。
そうして後半は予想だにしない展開が待ち受ける。4巻まで来て、この進み具合で善と悪の決着が果たして付けられるのか? と疑問に思っていたのだが、それがこの巻の最後で大きな展開を迎えることとなる。
この文庫版の第1巻の帯に“巨匠がすべてを注ぎ込んだ新たなる『指輪物語』”という文章が書かれていた。しかし、この“指輪物語”という単語がピンとこなく、どこが? と思っていたのだが、4巻の最後に来てこの“指輪物語”という言葉に納得がいくこととなる。
そうして大団円が描かれるはずの5巻、最終巻が待ち受けているわけだが、もうあとは読む以外に残されている道はない。正直なところこの作品を読む前は一年まるまるかかるのかと思っていたのだが、あまりの面白さにかなりのハイペースで読み進めることとなった。今となっては最終巻に手を付けるのがもったいないくらいである。
<内容>
マザー・アバゲイルに対抗すべく、ラスヴェガスに拠点を構え、街を大きくしてゆくランドル・フラッグの軍勢。彼らは今、街に入り込もうとしているスパイの摘発を始めていた。しかし全能に見えたフラッグの目にも映し出すことの出来ない何かが街に侵入しており・・・・・・。そうしたなか、ラスヴェガスの街に新たな問題が!!
<感想>
5巻の最初は、悪の象徴たるフラッグが築きあげた街の様子が描かれている。こちらはマザー・アバゲイルが作り上げたコミュニティよりも、近代的であり、敵地へと攻め込む準備が着々となされている様子が見て取れる。さらには、フラッグの魔力により街に忍び込もうとするスパイたちも捕らえられ、善の軍勢の未来は風前の灯火となりつつある。
と、思っていたらなんとフラッグの街が自然と瓦解しはじめる。この様相については、独裁政治の限界を表しているようでもあり、風刺的にさえとらえることができる。対して、マザー・アバゲイル側は民主主義の繁栄を表しているということが言えるのだろう。
そうこうしているうちに決着が付いてしまうのだが、この善と悪の闘争に関しては、予想とは異なるものであった。この闘争により、主要人物の何人かが亡くなるのだが、あまりその存在自体が生かされていなかったように思え、最後は少々なし崩し的になってしまったなという印象。
この作品についてはほとんどが満足できる内容であるのだが、この部分だけは期待したものとは違っていた。
そうして終盤は一連の話に始末が付けられてゆき、幕が引かれることとなる。上記において民主主義の繁栄と書いたのだが、これについても最終的には皮肉な感じで描かれており、決して民主主義というものが完全ではないというように描かれている。アメリカ人気質としては、ひとところに収まるよりはフロンティア精神により、それぞれの場所へと旅立ってゆくということが普通であるのかもしれない。
と、そんなこんなで物語も終わりを告げるのだが、私が今まで読んだキング作品のなかでは、これはもう最高傑作と言ってよいであろう。むしろ、今まで読まずに取って置かれていたのがもったいないくらいである。
私は本書を読む前に「ダーク・タワー」の物語を読んだのだが、今更になって「ダーク・タワー」のような物語を既にキングが書き上げていたということをようやく知らされることとなった。
後半にあまりにも多くの登場人物が出てき過ぎてしまって、話に収拾がつけづらくなった「ザ・スタンド」に対して、主人公をより明確にした「ダーク・タワー」を書いてみたくなったのであろうか。ただ、「ザ・スタンド」のほうが物語としてはより明確でわかりやすい内容であったと感じられ、どちらも甲乙つけがたいところ。
とにかく、今まで長い作品であるから読むのをつい、敬遠してしまっていたが、それを一生読みそびれるようなことがなくてホッとしていところである。これは一生のうちに一度は読んでおきたい作品のひとつとしても過言ではないであろう。