<内容>
ケンブリッジ大学構内で殺人事件が起きた。殺害されたのは警備員であり、夜の巡回中に何者かに拳銃で撃たれたものと思われる。この警備員には若い娘がおり、その娘と付き合っている大学生とトラブルを起こしていた。それにより、容疑は学生にかけられることになるのだが・・・・・・また、別の学生のトランクの中から大学教員のひとりが死体で発見されたことにより、事件は複雑な様相を見せることに・・・・・・
<感想>
これまた良い作品を掘り出してくれたなと。この著者は考古学が専門でミステリ長編は2作しか書いていないようなので、さほど有名ではないと思われるが、本書は本格ミステリファンを充分に納得させる作品である。
この作品では大学構内で事件が起き、その謎を大学教授であり、実質この大学の切り盛りをしている副学寮長のチェリントンがなんとか事件に収拾をつけようとする。ただし、チェリントンだけではなくスコットランド・ヤードから来たマクドナルド警視も事件に取り組むことになり、この両者によってそれぞれの推理が展開されてゆくこととなる。
本書の特徴としては、ただ単に推理をするだけではなく、非常に丁寧に証言の裏づけがなされるという点。そういったところは、推理小説というよりは警察小説といってもよいような内容になっている。
こうしたひとつひとつの事象を丁寧に取り扱うというところは著者の性格があらわれているような気がする。
そして終盤では先の展開が読めないまま、チェリントンとマクドナルド警視による推理と捜査の競争が行われる。そうして結末はいかなるものになるのか!? 読者の予想を上回る展開が待つことになる。
結末は少々脱力気味という感もあるのだが、全体的に見てうまくできた推理小説だということは間違いない。海外の推理小説ファンの人は、最近多くの翻訳作品が紹介されることによって充実の日々を送っていることと思われるが、真に読みたい作品というのは、このような作品なのではないかと思われる。本書は今年度の大きな収穫のひとつと言えよう。
<内容>
雪に埋もれた山荘で、今しも奇妙な降霊会が行われようとしていた。十四年前に雪山で行方不明になった伐採業者デザナの霊を呼び出して遺志を聞き、伐採事業を巡る争いに決着をつけようというのだ。集まった関係者が半信半疑の面持ちでテーブルにつくと、突如デザナの亡霊が出現。未亡人のアイリーンを口汚く罵ると、何処ともなく消え去った。さらにその晩、アイリーンが密室状態の部屋で頭を斧で割られて死んでいるのが発見され、事件は混迷の様相を・・・・・・
<感想>
名作と銘うって出版された本書であるが、どうだろう・・・・・・。内容うんぬんというよりも、読みにくい! 理解しづらい! 登場人物達がやたらとあっちにいったりこっちにいったり不規則に移動する。それでなくても、個性のない登場人物たちをひとりひとり作中で彼らの行動を追っていくのは大変なことである。とりあえずは、訳からなんとかしてもらいたかったのだが・・・・・・
<内容>
(本文中のセリフより)
「いいこと、部長刑事さん、この事件をいい表わすのには文章ふたつでことたりるのよ。ふたりの男が口論し、片方の男が相手に呪いをかけた。呪いをかけられたほうは死に、二時間たらずのあいだに腐敗した。ほら、簡単そのものじゃない」
<感想>
作中で起こる事件の謎については興味深いものであった。ちょっとの時間の間に腐乱する死体の謎と、密室トリックについて。
しかし、その全体を取り巻くはずのストーリーについては非常につまらなく、読みとおすのに過剰に時間がかかってしまった。
話がつまらないうえに話の展開もどうかと感じられた。序盤は不可解な事件が起きたものの、その事象についてきちんと説明せずに、やたらともったいつけて先へ先へと伸ばしてゆく。そしてある程度話がすぎてから事件について語られるものの、中盤で警察が到着してからはまた同じような捜査が繰り返されることとなる。
本書の中では事件に対して呪いという存在を押し出しているようなのだが、その怪奇性についても、あまりにもわかりづらくて魅力的には感じられなかった。もう少し話を解りやすくして、捜査に至る展開を早めてくれたら、多少は面白く感じられたのではないかと思える。
さらには興味深かったはずの謎についても、かなり小さくまとまったもので終わってしまったし・・・・・・
<内容>
2年前、夫を事故で亡くし、二人の子供を残されたジュリア。そのジュリアの周辺で、妙な事故が続く。まるで何者かが彼女の幼い娘と息子の命を狙っているかのような・・・・・・。それぞれがちょっとした事故ゆえに、周囲の者たちからはジュリアが気をまわし過ぎだと思われる始末。しかしジュリアはかつて夫と結婚する前に付き合っていたロジャーが自分を付け狙っているのではないかと考え始める。そうして、さらなる事件がジュリアを追い込むこととなり・・・・・・
<感想>
著者のロイス・ダンカンは、名前からはわかりにくいが女流作家。本書は女流作家ならではのサスペンス小説という感じである。
幼い息子と娘を持つ母親が、徐々に迫りくる恐怖におびえるという内容。主人公のジュリアは昔の彼氏の幻影におびえつつ、自分の母親と義父、妹とその主人らの協力を得て、脅威から乗り越えようとする。しかし、徐々に彼女の周囲にいる者たちに対しても疑惑を抱くことになり・・・・・・という展開。
序盤は主人公が過剰に怯え過ぎではないかとさえ、感じられてしまう。さらには、さほど接触のない昔の彼氏に対して、あまりにも怯え過ぎのような。しかし、段々とそれらの恐怖が具体的になり、色々な角度から主人公を脅かし始める。そうして、最後の最後に全ての真相が明らかとなる。
サスペンス小説としてうまく出来ている作品。分量も230ページ弱と非常に読みやすい。タイトルや物語のテーマにしてもうまく出来ているのだが、端正にまとまり過ぎて、ややインパクトに欠けてしまうかなと。その時代に、結構同じような内容のサスペンス小説が書かれていたのではないかと感じられる作品。