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レディー・モリーの事件簿   Lady Molly of Scotland Yard (Baroness Orczy)

1910年 出版
2006年03月 論創社 論創海外ミステリ45

<内容>
 「ナインスコアの謎」
 「フルーウィンの細密画」
 「アイリッシュ・ツイードのコート」
 「フォードウィッチ館の秘密」
 「とある日の過ち」
 「ブルターニュの城」
 「クリスマスの惨劇」
 「砂 嚢」
 「インバネスの男」
 「大きな帽子の女」
 「サー・ジェレマイアの遺言書」
 「終 幕」

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<感想>
 本書の特徴は女性捜査官が登場するというところ。昔の本格推理小説において、女性の探偵というのは有名どころは多くないにしても、ある程度の数は挙げることができる。しかし、それらの多くは安楽椅子探偵などの素人探偵が多いように思われる。そういったなかで、警察機構に属する捜査官というものが語られる作品というのは珍しいのではないだろうか。また、語り手であり、レディ・モリーのパートナーである者が女性であるということも本書の大きな特徴であろう。

 ただ、そういう背景の中で本書が推理小説として満足のいくものかといえば、そうでもない。本書は短編集となっているのだが、そのひとつひとつの作品は25ページ前後となっており、短いほうであると思える。その短いページの中で、まず事件が起こり、レディ・モリーが事件に乗り出し、そして即解決となってしまうのである。つまり、解決にいたるまでの推理や根拠といったものが抜け落ちているのである。唯一の例外といえるのは「」という作品で、これは最後に推理の根拠が語られており、全てをこういう形の作品集にしてくれたらと思わずにはいられなかった。

 とはいえ、推理小説としての完成度が低いからといって本書における見所がないかというとそんなことはない。ここでレディ・モリーが遭遇する事件自体は、よくもこれだけ色々なパターンを考えられるなと感心させられるものであることは間違いない。

 そして、本書のメインとなるのはなんといってもレディ・モリーという存在である。物語が語られるなかで、実はレディ・モリー自身についてはほとんど触れられていない。ゆえに、優秀で活発な女性だということはわかるのだが、それ以外のところは全くといっていいほど不透明に描かれているのである。何ゆえ、このような書き方がなされているかというと、それは最後の作品によって明らかにされている。何故、彼女が女性捜査官となったのか、彼女の目的は何なのか。それらが読者に知らされたとき、本書の幕が引かれることとなる。




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