Ellery Queen  作品別 内容・感想

エジプト十字架の謎   7点

1932年 出版
1959年09月 東京創元社 創元推理文庫
2009年01月 東京創元社 創元推理文庫<新版>

<内容>
 ウエスト・ヴァージニアの田舎町で奇妙な殺人事件が発生した。T字路にて、T字型の道標に首無し死体がはりつけにされていたのである。事件に興味を抱いたエラリーはさっそく現地に赴き、検死審問に出席したのだが、具体的な手掛かりは何も得られなかった。その事件後から半年後、別の場所で似たような首なし死体が発見されることとなり・・・・・・

<感想>
 クイーンの作品の中で再読を避けていた作品。何故かというと、あまりにも明快で論理的な謎解きにより犯人が指摘されており、未だにその記憶に残っているからである。ゆえに、読み始めたらすぐに、あぁ、あれが犯人だったなと気づいてしまった。とはいえ、その途上の物語については、すっかり忘れていたので、このような内容だったのかと中身についてしっかりと確認することができた。

 読んでみて思ったのは、全体的に長い話になっているなと。T字にはりつけされた首無し死体というショッキングな事件が連続して起こるものの、その背景には謎の裸体主義者の集団や、男女の三角関係などといった物語が挿入されている。これらについては、改めて読んでみると、あえて犯人の存在を隠すためのレッドヘリングとして扱われていたのかなと感じられる。ただ、もう少しシンプルにスッキリさせた物語にしても良かったようにも思える。

 エラリー・クイーンも警察も、姿が見えぬ復讐鬼の存在に振り回されつつ、結局のところ警察らの努力もむなしく復讐は成就されてしまう・・・・・・といったところで、最後に発見された死体と現場の状況からクイーンが全ての真相を看破してしまう。最初にも書いた通り、この論理が明快で実にうまくできていると感心させらるものとなっている。全体的な物語の流れはどうかと思うところもあるのだが、驚くべき真犯人の正体が明らかになるところと、その解決への導きについては、文句なしのミステリと言わざるを得ないであろう。まさに本格ミステリの代表作たる一冊。


ギリシャ棺の秘密   7点

1932年 出版
1979年12月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 富豪のハルキス氏が心不全にて亡くなり葬儀が執り行われた。するとその葬儀の最中に厳重に保管されていたはずの遺言状が無くなるという事件が起きた。葬儀に参加していた者の誰かが盗んだと思われるが屋敷の中はおろか、個別に身体検査をしても遺言状は発見されなかった。エラリー・クイーンはこの状況から遺言状はハルキス氏の棺の中にあると断言し、墓を掘り起こし棺の中を暴いてみたのであるが・・・・・・

<感想>
 十何年かぶりに本書「ギリシャ棺」を再読。憶えている部分もあったのだが、大部分は忘れていたのでそれなりに新鮮に読むことができた。

 本書は若き日のエラリイの事件を描いたものという設定になっている。そしてそれだけではなく、本書はクイーンの作品のみならず、ミステリにおいて重要な取り決めを提示している作品といえよう。それは何かというと

 「探偵は事件の真相が完全にわかるまでは、途中でその考えを述べなくてもよい」

ということである。この事を本書ではエラリイ自身が身を持って失敗することによって提言しているといってよいであろう。本書があるからこそ、エラリイが事件の途中で意見を求められても「まだお話しすることはできません」と自信を持って突っぱねることができるわけである。

 本書「ギリシア棺」ではエラリイが失敗を重ねることによって事件の真相は二転三転していくようになっている。その分だんだんと複雑になってゆき、最後の最後の真の解答は少々わかりづらかったという印象を受けた。また、どちらかといえば最初のほうの解答のほうがミステリとしては良く出来ているのではないかと感じられ、その真相が変るたびに事件のスケールがダウンしていくようにも感じられた。にしても良く練られた作品だということは十分に感じさせられる作品であることは間違いない。本書は国名シリーズの中においても上位に位置する作品であるといいきってもよい傑作である。


アメリカ銃の秘密   6.5点

1933年 出版
2014年06月 角川書店 角川文庫

<内容>
 ニューヨークでのロデオショーの出来事。かつてのスター、バック・ホーンが久々に登場するとあって、会場は盛り上がっていた。ハリウッド女優や有名ボクサーのみならず、クイーン親子もショーに訪れていた。彼らが見守る前で、颯爽と馬に乗って登場してきたバック・ホーンであったが、銃声の後に落馬し、死亡するという事態が起きてしまった。クイーン警視は、直ちに現場の指揮をとり、会場を封鎖し、凶器を捜すのだが、バック・ホーンを殺害したのに用いられたと思われる拳銃は見つからなかった。いったい誰が、どのようにして犯行を行ったのか? 現場の状況、活動写真などを駆使してエラリーは証拠となるものを集めるのであったが・・・・・・

<感想>
 遠い昔に創元推理文庫で一度読んだっきり。内容も全く覚えていなかったので、角川文庫から新版が出たのをきっかけに、改めて読んでみた。ほとんど印象に残っていない作品なので、地味な内容なのかと思いきや、ラストにおける真相はアクロバティックと言ってもよいほど。思いのほか真相に驚かされてしまった。

 起こる事件は、ロデオショーの現場における衆人環視の状況での銃殺事件。ロデオショーゆえに、ショーに携わっている者たちは皆、拳銃を持っている。しかし、犯行に使われた銃は25口径と小ぶりなもので、捜査をするも該当する拳銃が見つからないという状況。さらには動機もなかなか見えてこない。

 事件が起きてから、捜査が行われる場面へと移行するのだが、その捜査に関しては、地味で長いと感じられた。なかなか事件に対する核心が見えてこず、捜査に対してもやや退屈と感じられてしまう。ただし、主人公のエラリー・クイーンは、序盤からしっかりと核心となる証拠を見極めており、ある程度全体像を見通していたようである。

 なんとなく事件のポイントになるのではと思えたものが、序盤ロデオ場に、後の被害者となるバック・ホーンの知り合いという事で、仕事を得ることとなる男が登場すること。物語の一連の流れに関係しない故に、なんとなく気になったのだが、実際にそれがひとつのポイントとして取り上げられることとなる。

 最後の真相は、予想だにしないもので、これは騙されたなと感嘆させられた。一見、アンフェアのようにも捉えられるのだが、そこはエラリーが論理的にしっかりと証明してくれている。ただ、拳銃の隠し場所については、やや拍子抜けしたかなと。さほど期待せずに読んだものの、思ったよりも派手な真相が用意されていたので、読みがいがあった作品。


チャイナ橙の謎   7点

1934年 出版
1960年01月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 宝石と切手収集家として著名な出版業者の待合室で、身元不明の男が殺されていた。しかも驚くべきことには、被害者の着衣をはじめ、その部屋の家具もなにもかも、動かせるものはすべて“さかさま”にひっくり返してあった。この“あべこべ”殺人の謎は何を意味するのか? 犯人はなんの必要があって、すべてのものを、あべこべにしたのだろうか?

<感想>
 実に奇妙な作品である。まずは衝撃的な“さかさま”の殺人が起こる。そしてその後の捜査なのであるが、これが他の作品などと比べて実に奇妙に感じる。登場人物らの関係などが暴かれてはいくものの、いっこうに犯人に言及するような直接的証拠が出てこない。そしてそのままラストへと・・・・・・

 しかし、そこで暴かれるものが非常に見事である。この奇妙な“あべこべ”殺人が何を隠していたのかという点が実にうまく書かれている。実はこの“あべこべ”によって二つの事象の隠蔽を犯人が図っており、それを暴くことによって犯人がおのずと決定付けられる。これは実に見事であり、また予想だにさせない犯罪トリックには脱帽してしまった。本書はある種の“奇妙な密室”とでも表現すればいいのだろうか。


スペイン岬の謎   6点

1935年 出版
1959年10月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 事件は不可解な人間違いによる誘拐事件から始まる。ローザ・ゴッドフリーとその伯父のデーヴィッド・カマーとが二人でいたところ、突然巨漢が現れ、彼らを拉致してしまう。しかし、その大男はカマーをジョン・マーコという男と間違えているらしいのだ。ローザは小屋に閉じ込められ、カマーは巨漢によって連れ去られてしまう。
 次の日、エラリー・クイーンらによって、無事に発見されるローザ。しかし家に帰ると、スペイン岬と呼ばれる花崗岩塊の突端にある別荘の海辺で発見されたのはジョン・マーコの全裸の死体。しかも事件の発生当時に、スペイン岬の所有者ゴッドフリー家には、いずれも一癖ありげな客が招待されていたうえに、さらに三人の未知の人物が加わっていたらしい。その理由はなにか?そして殺人犯は、なぜ被害者を裸にする必要があったのか?

<感想>
 読者への挑戦が付き、犯人あての妙はいつもどおり。しかも、死体がなぜ裸なのかという謎を提示し、そのことにより犯人をずばり当てることができるといいきるところは、まさにクイーンらしい正々堂々さ。

 ただそれでも、「ふーん、そう」というような感じでもあり、劇的感などは希薄であった。たぶんそのへんのところは、意外性に乏しかったせいなのかもしれない。また、誘拐事件、全裸の死体、ゴドフリー家に集まった客人たちといった事件上のパーツが一つの事件としてはバラバラな感があったのもひとつの原因だろう。


中途の家   6.5点

1936年 出版
2015年07月 角川書店 角川文庫

<内容>
 エラリーは旧友のビル・エンジェルと出くわした。ビルが言うには、妹の夫ジョーゼフの事で悩んでいるのだが、その夫から会いたいという連絡があり、これから出向くところだと。ビルが義弟から指定された場所へ行ってみると、そこで待ち受けていたのは死体となった義弟の姿であった。妻であるルーシー・エンジェルが呼ばれたのだが、もう一組呼ばれた者たちがいた。それは、その死亡した男の妻だと名乗る資産家のギンポール家の者であった。どうやらジョーゼフは二重生活を送っていたらしく、彼が発見された家は衣類や乗り物などを取り換える二重生活の“中途の家”であったのだ。その後、容疑者としてルーシー・エンジェルが逮捕されることとなり、弁護士である兄のビルが法廷へと乗り出すことに。エラリー・クイーンはエンジェル兄妹を助けようと捜査に乗り出すのであったが・・・・・・

<感想>
 久々に再読となった作品。角川文庫から新訳が出たので、これを機に購入して読んでみた次第。内容はほとんど忘れていたので、新鮮な気持ちで読書に取り組むことができた。

 本書は、なんといってもタイトルの“中途の家”というのが良い! 「途中の家」として出版された本もあるのだが、やはり「中途の家」のほうが合っていると思われる。

 この作品では、二重生活を送っていたものが殺害されるという事件が起こる。その真相を探るべくエラリー・クイーンが乗り出すのであるが、本書において面白いと思えたのは、被害者に対する言及がほとんどなされないということ。何故彼がこのような生活を送っていたのかとか、過去の人生において何があったのかなど、そういったことが一切掘り下げられない。被害者の何故? は一切問わずに、犯罪を犯したのは誰? ということと、それを指摘する根拠は? という点のみにスポットを当てた本格推理小説となっているのである。

 社会派ミステリ的な要素を一切排除し、パズルミステリとして貫き通している作風に好感が持てる。また、途中では法廷場面までが設けられていたりと、見どころは満載である。ただ、若干冗長のように思えるところと、アンドレア・ギンポールに関する謎を引っ張り過ぎているなど、少々余計なところもあったように思えないことはない。しかし、マッチの残された本数や、その他さまざまな点から犯人を指摘する論理的な推理が披露されるところは、さすがクイーンといったところである。


日本庭園の秘密   6点

1936年 出版
2003年04月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 マクルーア博士の娘のエヴァは博士と婚約している女流作家のカレン・リースの元を訪れた。そしてエヴァがカレンの部屋で見たものとは血を流して死んでいるカレンの死体であった。エヴァは驚きのあまり、凶器と思われるはさみに触れてしまったり、血に触れてしまったりと現場を荒らしてしまう。またその部屋は外部から人が入ってくることは不可能であり、エヴァ以外のものが殺人を犯すことができないような状況であった!

<感想>
 国名シリーズの最後を飾る本でありながら、国名シリーズとしてのタイトルを付けることができなかった本。それが本書「日本庭園の秘密」である(詳細については解説に書いてあるので読まれたし)。

 密室殺人という不可能犯罪を取り扱った作品。これにはとあるトリックが使われており、本書がそのもとになっているのかと関心したりもする。ただ、どちらが先かはわからないが、有名な某短編で似たようなトリックを読んだ覚えがある。

 全体的に地味というようにも感じられたが解答によってすべてが明かされると物語としてもよく練られているのがわかる。またエラリーによる解決で“三つの小さな事実と二つの大きな事実”というものによって論理的に解答がなされていくのは圧巻である。読む前は話題には上らない作品であるのであまり期待していなかったのだが、なかなか良い作品であることにびっくり。


ハートの4   6点

1938年 出版
2004年02月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 エラリイ・クイーンは映画の脚本を描くためにハリウッドを訪れていた。彼が脚本に取り組む映画とは、仲たがいしている事で有名なジョン・ロイルとブライズ・スチュアートという男女のスターを主演とする自伝的な作品であった。ロイルとスチュアートは昔から犬猿の仲であり、同じく映画スターである息子タイ・ロイルと娘ボニー・スチュアート同士も仲が悪い。しかし、その映画を撮ることが決まった後日、ジョンとブライズが仲直りをし、突然結婚することになる。そして飛行機にて新婚旅行に向かう日、その飛行機に乗った二人が何者かに誘拐され、二人は死体となって発見される。生前ブライズはトランプの札による脅迫状を受け取っていたようなのであるが・・・・・

<感想>
 昔に創元推理文庫版で読んだことがあるのだが、今回ハヤカワ文庫版の新訳で再読。

“ハートの4”と言うよりは、「エラリー・クイーン、ハリウッドに行く」とでも言った方が内容からするとしっくりいくかもしれない。要するにエラリーがハリウッドという、ちょっと特殊な世界にて殺人事件に巻き込まれるというお話。

 クイーンが書いた中期の作品としてはそこそこのレベルではないかと思うのだが、いかんせん事件の概要よりはハリウッドという特殊な世界とそこに出てくる登場人物らのほうにスポットが多く当たっているように感じられた。内容がミステリー版“ロミオとジュリエット”というようなものだから、恋愛沙汰にページが多く割かれるのはしょうがないことなのであるが。

 そういった中でエラリーはきっちりと論理的に事件を看破している。今回の事件のポイントとなるところは“動機”について。とはいうものの、主要登場人物が少ないので犯人を指摘できる読者も多いのではないかと思う(私ははずれてしまったのだが)。

 ただ、事件自体が全体的に行き当たりばったりで幼稚な感じもしたのだが、それを作品の中では犯人の人間性という事ですましてしまっているのはどうかと感じられた。ただし、こういったものがハリウッド的であると言われればそれまでなのだが。

 とはいうものの、それなりに佳作とはいえる作品であった。


ドラゴンの歯   6点

1939年 出版
1979年09月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 共同で探偵事務所を経営することになったエラリイとボー・ラムメル。さっそく来た仕事は、キャドマス・コールという富豪からの遺言についての相談であった。さらにキャドマス自分がもし死ぬような事になったら、その事件を調査してもらいたいとも依頼してきた。
 その後キャドマスは航海の途中で心不全により死亡してしまう。エラリイとボーはまず彼の財産を継ぐことになるはずの者を捜すことから始めるのであったが・・・・・・

<感想>
 うーん、これも何かクイーンが実際に書いたのかどうか疑わしい(年代からすれば本人が書いたのかな?)。推理小説というよりも、ハードボイルドのように思える作品であった。

 謎となるべきものは二つ。富豪の生前の奇妙な言動とその生死について、そして遺産を巡ることにより起きた殺人事件。一応二つの事件はリンクしてはいるものの、途中から後半の事件が起きたことにより、微妙に主題がずれてしまったかのようにも感じられた。

 とはいうものの、ミステリーとして抑えるべきところは抑えているように感じられたので、さほど評価は低くはない。ただ、その主となるべき謎の部分が少々わかりやすすぎたかなと思えなくもない。

 というわけで、全体的な感想としては微妙なところなのであるが、終わりよければ全て良し、というところで。


生者と死者と   6点

1943年 出版
1959年09月 東京創元社 創元推理文庫

<内容>
 エラリー・クイーンは、知り合いの弁護士から、コーネリア・ポッツという女傑に紹介される。そのコーネリアは靴の販売で富豪となった伝説的な女であり、さらには変わった子供たちを持つことでも知られていた。前夫との間に生まれた3人の子供は精神異常の気が見られ、後夫との間に生まれた3人の子供はいたって普通の子供であった。そして、そのポッツ家で、惨劇が起こることとなる。連続して家族のなかから死者が出ることとなり・・・・・・

<感想>
 後に改題されて「靴に棲む老婆」というタイトルとなっている。靴販売で富豪となった女傑が当主である一族のなかで起こる連続殺人を描いた作品。

 私はタイトルに表したとおり、だいぶ昔に出版された書籍を持っているのだが、今の世となっては表現が微妙で今後復刊されないかもしれない。ポッツ家の当主である女傑には子供が6人いて、3人は精神異常、残りの3人は普通。その精神異常とされる3人に対する描写がちょっと微妙かも。

 倫理的にはどうかはわからないが、だからといって小説として微妙だということはない。意外とユーモアにあふれていて、楽しく読める作品である。クイーン作品としては論理的な面はやや弱いような気がするが、それでもしっかりと見せ場を設けていて、最後の最後まで目の離せないミステリとなっている。そしてクイーン読者として一番驚かされるのは、最後にあの人物が表舞台に現れることであろう。


帝王死す   6点

1952年 出版
1977年06月 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫

<内容>
 第二次大戦当時の機密島を買い取り、施設の陸海空軍を持つペンディゴ帝国に君臨する軍需工業界の怪物キング・ベンディゴ。彼の許に舞い込んだ脅迫上の調査を求められ、クイーン父子は突然ニューヨークから拉致された。
 彼らはその閉ざされた島でしばらくの間暮らすことになる。そしてその島に住む主要な人物はペンディゴ家長男であり、島に君臨する脅迫の主であるキング・ペンディゴ。そしてその妻カーラ。実質的にペンディゴ帝国を切り盛りする三男のエーベル。そしてただ、飲んだくれいているだけの次男ジュダ。
 その後も舞い込んでくる脅迫状からクイーンは脅迫の主を捜し当てるのだが、当の本人は悪びれたふうもなく脅迫状に書いてある時間にキング殺害するといい放つ。また、それを一笑にふすキング。キングは皆の説得にも応じずに、殺害予告がなされた時間にいつもどおり決まった習慣として機密室での仕事を行うと。その狭い部屋に妻とともに入り鍵をかけ、外には見張りを置くという厳重な警戒のなかで予告の時間が過ぎる! そしてクイーンらがその部屋を覗くと、そこには血まみれのキングの姿が!!

<感想>
 以外にもクイーンには珍しい密室物。まさに異様な空間で起こる密室劇であり、その不可能性は多大なものである。さらにはクイーンはその謎を解くためにライツヴィルにまで出向くサービスを!

 またこの作品では事件のみやらず、登場人物の三人兄弟の生き様も主題となっている。彼らの名前に込められたかのような皮肉な人生劇と失敗と成功譚。エラリーはそこに事件の活路を見つけ出そうとする。

 そして事件は終局へと向かうのであるが、なんか「へっ?」いいたくなるようなトリック。原理的には納得できるんだけど、心情的にはなんとなく納得したくないような。人物劇は結構おもしろいんだけどね。


緋文字   5点

1953年 出版
1976年04月 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫

<内容>
 探偵小説家ローレンスと女流演出家のマーサは、誰もが羨む幸福な夫婦だった。しかし、結婚三年目から二人の仲が悪くなり、やがて凄じいトラブルが毎日起こるようになった。エラリイと秘書のニッキーは何度か仲裁に入りなんとか原因を突き止めようとする。一見、嫉妬の激しいローレンスのほうが作家活動がうまくいかないことからの乱心かと思い、クイーンはニッキーをローレンスの秘書として働かせてみることに。しかしニッキーが彼らを探ることによってわかってきたことは、マーサがローレンスに隠れて秘密の手紙を受け取り、とある俳優と逢引していることだった。クイーンとニッキーはなんとかこれを食い止め、彼らを仲直りさせようとするが・・・・・・。
 そしてやがてその騒動は“緋文字殺人事件”とよばれる姦通事件に発展して行くのであった。死者の残したダイイング・メッセージ、XYの謎とは?

<感想>
 クイーンの作品の中では異色作であろう。“フーダニット”や“ハウダニット”ではなく、どちらかというとサスペンス作のような体裁になっている。といっても作品半ばでは、仲たがいした夫婦をエラリーが必死に彼らの仲を取り持とうとする、というだけの話しにしかみえない。そして後半になりようやくサスペンスの要素が・・・・・・といった具合。

 というわけで、クイーンの作品に期待する内容ではなかった。それなりにどんでん返しは用意されているのだが、クイーンの作品でなければ日本で日の目を見たかどうか。


ガラスの村   6点

1954年 出版
1976年08月 早川書房 ハヤカワミステリ文庫

<内容>
 独立記念日の翌日、<シンの辻>と呼ばれるニュー・イングランドの寒村で、老女流画家が撲殺された。容疑者として逮捕された男は金を盗んだ事実は認めても、殺人い関しては頑強に否定した。女流画家の家に行ったのは薪割を頼まれたからだというのだ。肝心の証拠となるべき薪は煙のように消え失せていた・・・・・・

<感想>
 前半部を乗り越えて、事件が起きてからの後半部の法廷における展開までたどり着くと物語りは面白くなってくる。

 一つの閉塞的な村の中での殺人を描き、その村の中での村人達の手による“法廷”によって物語が進んでいく。ちょっとニュアンス的には違うかもしれないが、なにとはなしに“社会派”めいた様相を感じてしまう。結局のところミステリにおける謎解きよりも、その裏になにか教訓めいたものが見え隠れしているようでならない。

 ミステリとして論理的といえるかどうかはわからないが、少なくともその伏線たるものの扱い方はうまいと思う。読者の前に大きく提示されたものが犯人を指摘する鍵となるという部分は見事である。また、人口の少ない村ゆえの消去法にて裁判中に犯人を捜そうという試みも面白かった。


クイーン警視自身の事件   6点

1956年 出版
1976年05月 早川書房 ハヤカワミステリ文庫

<内容>
 夜ふけ、不吉な胸騒ぎを覚えて、飛ぶように帰ってきた看護婦のジェシイ・シャーウッドは、育児室に飛び込むなり思わずそこに立ちつくした。大富豪ハンフリイ氏の養子の赤ん坊が、顔の上に枕をのせたまま冷たくなっていたのだ!たまたま現場に立ちあう事になった退職したばかりのクイーン警視は、殺人を主張するジェシイを助けて、エラリイの手を借りずに単独で大胆不敵な犯人に立ち向かう。

<感想>
 ハードボイルド風にクイーン(元)警視が恋に事件に活躍する。気の利いた言葉が出てくるわけではないのだが、これはハードボイルドといってもいいだろう。

 内容は次から次へと事件の関係者が殺されていくというサスペンスチックな展開となっている。しかし、このような内容に合わせたからなのか、どうもクイーン警視の捜査活動が乱雑であるような気がしてならない。エラリー・クイーンシリーズにおいてのクイーン警視の位置付けは着実な捜査活動を行う謹厳実直な警官というイメージであったが、本書においては忍び込んだり罠をかけたりと今までのイメージとは異なったものとなっている。

 また、事件においての焦点は“消えた枕カバーの謎”と“誰が犯行を犯したか”という2点である。しかしながらこれらも、パンチ力にかけている気がしてならなかった。“誰が”におよんではクイーンの読者であればほぼ想像通りの結末を思い浮かべることができるだろう。“枕カバー”においても論理的というよりは、行動的展開によって明かされるといったものとなってしまっている。

 警察の仕事を終え、やり場のない心持ちから老警視が事件に取り掛かるというスタンスにおいては見るべきところがあるのだが、やはりエラリー・クイーンの作品としては物足りなく感じてしまうのは事実。


最後の一撃   6点

1958年 出版
1977年07月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 エラリイはクリスマスパーティに招待され、ジョン・セバスチアンの家へと向かう。そこに招待された12人の人々。しかし、12人しかいないはずの家から13人目の人物の姿が見え隠れする。そして、ある日家の中に見知らぬ男の死体が発見された! その事件をかわきりに毎日どこからともなく届く、おもちゃの家のパーツの数々。その最後のプレゼントが届いたとき、それは最後の一撃となり・・・・・・

<感想>
 一風変った展開のミステリー。冒頭にて、一組の夫婦が双子の赤ん坊を生むのだが、一人は正式に息子と認め、もうひとりは自分の子とは認知しないと宣言したまま、その夫婦は命を落としてしまう。そのような過去の物語があって、本題の事件へと入っていくものとなっている。

 ゆえに、話の中で気にせざるをえないのは、その双子のかたわれの存在。それがどのような形で関わってくるのかという事を読者に考えさせながら物語が進んでいくようになっている。

 と、そこまでの展開はよいのだが、今作ではエラリイが手をこまねきすぎていると思えなくもない。なにしろ最後の最後にプレゼントが届くまで何も事件が伸展しないのである。そういった部分には少々不満と退屈さが感じられた。

 そして事件の真相はといえば・・・・・・これも微妙といえば微妙。確かに事件の真相は意外なものの、それが最初からの物語を通して意味を持つものになっているとは思えなかった。その辺を納得させなくては、いくら犯人が意外だからといって、良い作品であるとは言えないと思うのだが。


盤面の敵   6点

1963年 出版
1977年11月 早川書房 ハヤカワミステリ文庫

<内容>
 四つの奇怪な城と庭園から成るヨーク館で発生した残虐な殺人。富豪の莫大な遺産の相続権を持つ甥のロバートが、花崗岩のブロックで殺害されたのだ。エラリイは父親から事件の詳細を聞くや、俄然気負いたった。殺人の方法も奇抜ではあるが、以前からヨーク館には犯人からとおぼしき奇妙なカードが送られてきていたのだ。果たして犯人の真の目的は?

<感想>
 趣向は非常に面白い。何者かによってその理性をくすぐられ、操られるかのように行動を起こす下男。その何者かは自分の手を汚すことなく、着々と富豪邸の遺産相続人たちを予告のカードを送りながら亡き者にしていく。

 登場人物はそれほど多くない。動機は? 誰か得をする者はいるのか? 犯人は誰か? 人を影から操るような知能犯に適合する人物は誰か?? 謎を解かずにはいられなってしまう。

 ただし、登場人物が少ないせいもあり、ある程度の結論には達する人もいるだろう。ただ、その結末を評価するとなるとどうだろうか。この趣向からいって、うまくまとめることができれば代表作の一つとなったのであろうが、あまりすっきりするほどのものでもない。後期になってから「十日間の不思議」以来、どうも神ががったかのような部分のある作品がちらほらとしているように思える。もう少し、強烈な何かが欲しかった。


三角形の第四辺   5点

1965年 出版
1979年09月 早川書房 ハヤカワミステリ文庫

<内容>
 売り出し中の作家デイン・マッケルは、厳格勤勉な大実業家の父に女ができたという母の打ち明け話にわが耳を疑った。デインは父の浮気をやめさせるため、問題の女シーラに近づいた。ところが、デートを重ねるうちに、彼の心はシーラの魅力の虜となってしまう。そんな矢先、シーラが自宅で何者かに射殺された! 男女の愛憎のもつれが引き起こした難事件に挑んだクイーンが、苦慮熟考ののちに探りあてた意外な手がかりとは?

<感想>
 エラリー・クインの名を冠するのであれば、もっと論理に、いやせめて推理くらいにはこだわってもらいたいものである。本作ではエラリーが安楽椅子探偵をするものの、ただよくよく思い返してみれば作中でなにか推理らしきものを行っていたのだろうかと首を傾げたくなる。最初のバーにおける父親のアリバイについては、なんで気が付かないのかと逆に問いたくなったし、母親のアリバイについてはただ単に証言がでてきただけである。法廷場面が出てくるものの特に緊迫感というほどのものもない。

 書きたいと思われる構成や流れについては理解できる。それだからこそ、中味のミステリの部分をしっかりしてもらいのである。エラリー・クイン名義の不倫もののサスペンス小説なんていうのは読みたくなるものではない。


恐怖の研究   5点

1966年 出版
1976年11月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 エラリーの元に、ある原稿が届けられた。読んでみるとそれは、ワトソン博士による手記でありシャーロック・ホームズが切り裂きジャックを追求していた一部始終が書かれたものであった! エラリーはその手記を読んでいくのだが・・・・・・

<感想>
 エラリー・クイーンによる“切り裂きジャック”を扱った作品。しかも、シャーロック・ホームズまでもを登場させた豪華な内容となっている・・・・・・のだが、決してできの良い内容とはいえないものであった。

 本書もエラリー・クイーン名義で別の作家が書いたものであろう。たぶんその作家はシャーロキアンでホームズの研究をし、そこに“切り裂きジャック”を含めた小説を書いてみたかったのだろうと思われる。しかしその濃い内容のものを中編というような少ないページで書き表すことは難しかったようである。“切り裂きジャック”の設定もいいかげんのように思えたし、史実からはずれた部分もあったように思えた。かえって豪華にしすぎてしまったために肝心の部分がおろそかになってしまったように思える(なにしろホームズの兄のマイクロフトまで登場させているのだから)。

 そして最後にそのワトソン博士による手記からエラリー・クイーンが真実を読み取るというものなのだが、それも取ってつけたような感じであった。まぁ豪華な顔ぶれの共演ということは認めるが、内容がそれに追いついていかなかったかなというところ。


真鍮の家   6点

1968年 出版
1987年01月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 ハネムーンから帰ってきたクイーン警視夫妻に奇妙な招待状が届く。クイーン夫人となったジェシイに資産家を名乗るブラスが自分の屋敷へ招待したいというのである。不穏なものを感じつつも、クイーン夫妻はその招待にのることに。ブラス邸へと行ってみると、そこにはクイーン夫妻を含めて集められた6組8人の人々。ブラスは彼らに資産を譲りたいと告げるのであるが・・・・・・その後ブラスが何者かから命を狙われることに・・・・・・

<感想>
 クイーン長編、未読作品残り数作というところで今回手にしたのはリチャード・クイーン警視が主に活躍する「真鍮の家」。これが思っていたよりも楽しめる作品となっている。ただし、ミステリ小説としてよりは、エンターテイメント小説として楽しめるという内容である。

 この作品では主たる内容は“宝探し”である。大富豪を名乗る男のもとに集められた8人の人々。彼らに多くの遺産を残したいというのだが、その遺産が何なのか、もしくはどのような条件で残すのか、はっきりしないまま話はすこしずつ引っ張られてゆく。そして待ち構えていたかのように殺人事件も起きて、その謎も解きつつ、この“真鍮の家”に隠された謎をクイーン警視が解き明かそうとする内容。

 今作ではやたらとクイーン警視が張り切る様子が描かれている。しかし、その張り切りようのほとんどが報われないのが警視らしいといえば警視らしい。しかも最後には、ちょこっと出てきたエラリイに肝心要の解決部分を譲ってしまうのである。

 でもそうした苦難もなんのその。新婚で甘い生活を送っている警視にとっては、これほどの苦難はたいしたことではないのである。


孤独の島   6点

1969年 出版
1979年09月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 内部からの導きによって、製紙会社の現金を強奪した男二人、女一人の三人組の強盗。彼らは現金は奪えたものの逃げあぐねていた。そこで彼らは警官夫婦の子供を人質にとって、一旦夫婦に金を預けて、その場を離れる事に。子供を自分の目の前でさらわれた警官は自らの手で子供を救い出そうとするのだが・・・・・・

<感想>
 うーん、クイーンらしい作品ではないなぁ。これも別の人が書いたのではないだろうか。この作品に関しては、特に他の誰が書いたというような説はなく、マンフレッド・リー自身の作品のように言われているのだが、本書を読んだ限りでは決してうなずけない。

 ただ、この作品を単独のものとして見ると、なかなか面白い作品であるといえる。本書はサスペンス・ミステリーというのがしっくりくるであろう。三人組の強盗と警察官の家族とによって繰り広げられるサスペンスなのであるが、これがなかなか一筋縄ではいかない。強盗が奪った現金の行方が、あちらこちらへと移動し、それによって度々強盗と警察官の家族との状況が変化してゆく。このような展開により、読んでいるほうは次の予測が不可能になり、どんどん物語りに引き込まれていく事になる。

 さらには、このタイトルの「孤独の島」。原題は「COP OUT」というものでかけ離れているのだが、邦題のほうがよくできているのではないかと思う。この作品の主人公である警察官マローンは組織の中にいても、また今回の犯罪の渦中にいても、常に自身の孤独を感じており、その葛藤と闘いながら自分の子供を救い出そうと考える。この主人公のスタンスこそが物語に厚みを出す効果をあげていると思われる。

 後期クイーンの数々の異色作のうちの良作という事で読んでみてはいかがだろうか。案外、映像化すると面白いかもしれない。


最後の女   5点

1970年 出版
1976年04月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 クイーン親子が知人から休暇を薦められた土地はなんとライツヴィルだった。その彼らを待ち構えていたように事件は起こる。その発端は富豪ジョン・ベネディクトが別れた3人の妻を同じ場所に呼び寄せたこと。最初は彼女達のそれぞれの持ち物が何者かに盗まれる事から始まった。それぞれ、“ドレス”に“かつら”に“手袋”といった、たわいもないもの。そしてそれをきっかけとするがごとく殺人事件が起こる! ジョン・ベネディクトが何者かに撲殺されたのだ。現場には盗まれた、ドレス、かつら、手袋の3点が何故か残されていた。いったい犯人は何の目的で・・・・・・

<感想>
 注目すべき点は殺害現場に残されたドレス、かつら、手袋という物品。さらにエラリーは現場を見て、なにか違和感を感じ、その違和感が全てを解く鍵となっている。そして、なぜこのような不可思議な犯行模様になったのかということに説明が付けられ、犯人が明かされたときには、確かにそれしかないと納得させられるものとなっている。

 しかし、本作品に付きまとう印象は“ナンセンス”というものであり、終始それをぬぐうことができないのである。

 話の展開としても事件が起きた後はグダグダという印象がある。話の本筋に関わる出来事も起こるのだが、大半はあまり直接的ではないことにしか思えなく、少々飽きが感じられてしまう。また、話の中に張り巡らされている伏線も、“伏線”というよりは“兆候”とでもいったほうがいいような程度である。

 贔屓目に見ているのかもしれないが、本書もエラリー・クイーン本人が書いたのかどうかは疑わしく感じられた。特にダイイング・メッセージのできは本当にナンセンスと言いたくなるものであった。


心地よく秘密めいた場所   5.5点

1971年 出版
1984年04月 早川書房 ハヤカワ文庫

<内容>
 インポーチュナ産業の経営者ニーノ・インポーチュナ。彼は若い妻をめとり、その妻にある約束をした。結婚後5年経ったら、遺言書により財産の全てを譲ることにすると。その期日が近づきつつあるとき、ニーノの弟が殺害されるという事件が! そして、さらなる犯罪計画が進められようと・・・・・・。事件捜査に乗り出すこととなったエラリー・クイーンが導き出す真相とは!?

<感想>
 エラリー・クイーン最後の作品と位置づけられるもの。後期の作品ゆえに、あまり期待していなかったのだが、思っていたよりもクイーンらしい作品だと感じられた。

 物語の構造は単純。資産家の男と、その若い妻。遺産を巡っての事件が繰り広げられるというもの。資産家に弟が二人いて、その弟らにも魔の手がおよぶというのは予想外であったが、それ以外はだいたい予想通りに話が進む。ただし、登場人物があまりにも少ないので、犯人の条件を備える者は限られてしまうところが、ミステリとしてはやや弱い。

 面白く読めるのは、被害者自身と、犯人らしき者が犯行後に警察に送り付けてくる書状にも表れる9という数字へのこだわり。エラリー・クイーンは、これらが何を指し示しているのかを考え、そこから犯人を推理しようと試みる。

 ひとつ不満に思ったのだが、終盤においてのエラリーによる推理の失敗。これは余分というか、いらなかったというか、エラリーらしからぬ失敗ではなかろうか。いきなり、その場面で真犯人を指摘してもよかったと思われる。ただ、その真犯人についても、十分に予想はできるものの、決め手がなかったというのが残念なところ。雰囲気は十分にクイーンらしさが出ていた作品であっただけに、細かいところがいろいろと惜しまれる作品であった。




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