<内容>
出版社社長のマイクル・コステインは、派手な戦略で名声を得たものの、その後は出版社の経営に苦しんでいた。そんなおり、P・Sと名乗る人物から、“私が犯す殺人のてんまつを出版しないか”という趣旨の手紙が届いた。胡散臭い内容ではあるものの、うまくいけば出版社の名を売ることができると考えたコステインは、指定された現場へと赴く。するとそこで待ち受けていたのは、女の惨殺死体であった。すぐさま逃げ出したコステインであったが、やがて警察は彼の存在をかぎつけ、容疑者として扱われることとなり・・・・・・
<感想>
サイコ・サスペンスっぽい内容の小説。読んでいる最中は、通常のサスペンス・ミステリという感じであったが、最後に真相が明かされると、心理的な面を強調したミステリ小説という赴きが強くなった気がする。
内容は、出版社社長が巻き込まれた騒動を描いたもの。事件のネタに目がくらんだ出版社社長が怪しげな手紙に誘われて現場へと行ってみると死体が待ち受けていたというもの。しかもその社長、自分の身の回りに色々なトラブルを抱えており、娘夫婦の不仲、担当弁護士との諍い、うまくいっていない会社経営におけるいざこざ等。今回起こった事件は、自分の身辺の諍いと関係があるのかというところも注目点となる。
物語が進行するうえで、視点が変わり過ぎるのが気になったところ。中心となる人物がいなく、後半になってからフレンドリー警部の捜査によって安定するかと思いきや、また色々な視点へと移り変わりながら、物語が進行していく。
最終的に犯人が明かされても、特にサプライズ的なものは感じられなかった。むしろ犯人が明かされた後に、心理的な部分があらわにされたところの方が見どころであったかなと。よって、全体的に男女のもつれを描いたサスペンス小説であったかなと。著者のリチャード・ニーリイにとってはこれが処女作であるので、これが原点なのかということが読み取れる作品。
<内容>
広告代理店の副社長、ポール・セヴランスは家に置きっぱなしとなっていた古い大型のトランクを何の気なしに開けてみることとした。そのトランクから20年前に死亡した妻による、発送されなかったままの手紙が見つかった。その内容から、かつて自殺したと思っていた妻が、ひょっとすると誰かに殺されたのではないかという疑いが芽生え始める。ポールは苦心しながら20年以上前に起きたことを突き止めようと調査し始める。すると、今の広告代理店に勤務している者達のなかに怪しげな人物の存在が・・・・・・
<感想>
初読であるのだが、意外と結構面白かったなと。訳されたのが40年経ってからであるのだが、決して古臭さを感じさせることなく、近代的なサスペンス・ミステリという感覚で読むことができる。
男が20年前に自殺したとみられた妻の死の真相に迫るという話。その20年前は戦争が終わったばかりの混乱期であり、主人公自身も妻の死の現実に直視することができず、事件は自殺ということでそのまま放っておかれてしまったのである。しかし、その事件を調べてゆくと、怪しげな事実がいくつも浮かび上がってくることとなる。
主人公は広告代理店に勤めており、事件を追うのみならず、会社での出世争いも交えながら物語が展開していく。さらには、過去の事件が広告代理店に勤務する者達にも関連しており、主人公は疑心暗鬼を交えながら、仕事をしつつ、事件の調査を進めていくことに。
会社の社長が怪しいのか、それとも出世争いをしている男が何かを隠しているのか、さらには弟の言動にも怪しいものが・・・・・・というなかでやがて核心に触れることとなる。その真相が思っていたよりも単純なものではなく、物語上の伏線を回収し、うまい具合に捻ったものとなっているので、何気に驚かされてしまった。これは、なかなかあなどれない作品だと感嘆させられた。
<内容>
資産家の夫を亡くした未亡人のダイアン・リッジウェイ。彼女は悠悠自適に絵を描いて暮らしていたが、その絵の価値を認めてくれた退役空軍大佐のクリストファー・ウォーレンと恋に落ちる。やがて二人は結婚することとなるのだが、ダイアンにはある心残りがあった。それは、娘であるジェニファーとの仲。とある過去の事件により、二人はよそよそしい関係となり、離れて暮らしていた。そんなジェニファーから連絡があり、ダイアンはジェニファーとその恋人と共に暮らすこととなるのだが・・・・・・
<感想>
物語はリッジウェイ家の女性、ダイアンとその娘のジェニファーの視点(ただし交互ではなくランダム)で話が進められてゆく。
序盤は、リッジウェイ家の過去、そして男と女のなれそめが語られ、あまりミステリっぽくないと感じられた。しかし、途中からジェニファーの視点が加わり、さらにはダイアンとジェニファーが共に暮らすこととなり、そこから物語は一気に加速していく。
誰の手で、どのような陰謀がなされようとしているのか? 登場人物が少ないことから、ある程度話を見通せるかと思いきや、後半はさまざまな転換点が用意されており、それぞれの展開で意外と驚かされてしまう。
文庫で400ページの作品なのだが、読んでいる途中、300ページくらいのところで、話が一通り終わってしまうのではないかと思わされる場面があった。これ以後、どうやって話を続けていくのかと思いきや、さらなる意外な展開が待ち受けていて、最後まで読者を惹きつけることに成功している。
中盤くらいから展開がスピーディーになり、楽しめたかなと。満足のいくサスペンス・ミステリに仕上げられている作品。