<内容>
ロンドンの貴金属店でダイヤモンドの盗難事件が起こった。容疑者として逮捕されたのは、その貴金属店の経営者の甥、ルーベン・ホーンビイ。彼自身にやましいところはないものの、現場の金庫からルーベンの指紋が発見された事により逮捕される事となった。無実を訴えるルーベンは、それを証明してもらおうとソーンダイク博士に依頼することに。ソーンダイクが科学的捜査法により導き出した真実とはいったい!?
<感想>
ソーンダイク博士初登場の長編小説であるが、その登場のしかたはシャーロック・ホームズとだぶるように感じられた。ソーンダイク博士とその友人ジャーヴィスは、まさにホームズとワトソンという関係(ジャーヴィスの職業は医者であるし)。
ただ、ホームズものと大きく異なるところはソーンダイク博士の事件に対しての捜査法。それは科学的捜査を重視したものとなっている。現代であれば、こういったものは珍しくもないかもしれないが、当時であれば画期的にとらえられたのではないだろうか。ある意味、理系ミステリーのはしりと言えるのかもしれない。
全体的な話の印象としては、やや冗長だったと思えた。このネタは長編というよりは中編向きのものであろう。本書の肝心な部分は、序盤の発端と後半の裁判の部分につきる。その他はジャーヴィスの恋愛模様やら、ソーンダイク博士をつけ狙うサスペンスタッチな場面などと、少々ソーンダイク博士の作風にはそぐわないようなものと感じられた。
しかし、そういう点を差しい引いた上でも、本書は名作と言えると思う。この作品の山場は裁判にてソーンダイク博士が容疑者の無実を訴えるところである。そこで博士の科学的捜査法による結果が明かされることとなる。
<若干ネタバレ>↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
本書の特徴は裁判の場面で、あくまでも容疑者の無実を訴えるのみであるという事。つまり、そこで真犯人については全く言及していないのである。これはカーター・ディクスンの「ユダの窓」にも通ずるところがある。さらには、そこですっぱりと真犯人については触れずに物語を終わらせてしまうという潔さが他の小説とは異なるところではないだろうか。ちなみに物語上、真犯人の正体はわかるようになっているが、動機などについてはいっさい触れていない。
<ここまで>↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
と、内容については満足しているのだが、やはりフリーマンは短編のほうがおもしろいかなと思わないでもない。ただ、ソーンダイク博士の短編を読んでいくうえでは、まず最初はこの長編から手を付け始めるのがよいと思われる。
<内容>
2年前にジョン・ベリンガムというエジプト学者が失踪した事件。現在医師となったポール・バークリーは、その事件の事を学生だった時にソーンダイク博士の講義で聞いたことを覚えていた。ポールはそのベリンガムの弟であるゴドフリーの診察をすることとなり、ベリンガム家と懇意になり、しだいにゴドフリーの娘であるルースに惹かれてゆく。しかし、ベリンガム家はジョンの失踪により財政的な問題を抱えており、しかも彼が残した奇妙な遺言により窮地に立たされていた。ポールはその件をソーンダイク博士に相談してみた矢先、ジョン・ベリンガムのものと思われる遺骨が発見され・・・・・・
<感想>
フリーマンの2作目の長編となる本書。1951年に早川書房版が出ているものの、どうやらそちらは完訳ではなかったもよう。それが、ようやくにして、ちくま文庫から完全版といってもよいものが翻訳された。
内容は、フリーマンの作品としてはお馴染みともいえるかもしれない“失踪もの”。この作品では2年前に失踪した人物についての真相に迫る内容となっている。途中、失踪した人物の骨とおぼしきものが見つかり、法医学者でもあるソーンダイク博士シリーズらしい展開となってゆく。
そうして、後半には驚くべき真相が明かされることとなるのだが、実は本書の注目すべき点はそこだけではない。実は事件が起きたとされる2年前の失踪の様子を新聞などで情報を得たソーンダイク博士は、その時点でおおまかな真相を既に推理していたのである。その論理的な考察こそが本書一番の焦点ではないかと考えられる。
全体的に序盤と後半は面白いものの、基本的にひとつの事件を追うというものなので、中盤はややだれ気味な感じは否めない。ただ、最後に至って真相が明かされることにより、そうした雰囲気をふっとばし、名作を読み通したという気にさせられる。本書では、このシリーズ作品が単に法医学による科学的な探偵ものというだけではなく、推理小説としても完成されているという事を証明したというように印象付けられた。
<内容>
医師のジョン・ストレンジウェイズは依頼を受け、往診にでかける。そこで見たのは、ショック状態に陥った美しい婦人と、あきらかに薬物中毒と思われる異形の夫。家族のことに干渉はしまいと往診の後、その場を去るが、ジョンにとっては非常に印象に残る二人であった。1年後、ジョンは別天地で診療所を開くこととなったのだが、そこでかつて出会った婦人、アンジェリーナ・フルードと再会する。なんでも夫から逃れ、今は親類を頼って過ごしているというのである。ジョンはアンジェリーナと仲良くなっていくのだが、ある日突然、アンジェリーナが失踪し・・・・・・
<感想>
最後まで読むと、意外なサプライズがあり、なかなか楽しませてくれる作品であった。また、科学分析を用いて活躍する、ソーンダイク博士シリーズらしさも存分に発揮されていた。
ただ、中盤は非常に退屈。というのも、ひとりの女性が失踪し、その行方や痕跡を捜すという描写が延々と続くのである。ゆえに、“事件性”というものは皆無であり、ある意味刑事事件を扱ったミステリではないという感じもした。
とはいえ、後半になるとそれなりに話も盛り上がってゆく。特に法廷でソーンダイク博士が科学的な知識を用いて証言するところは圧巻といえよう。そしてさらにソーンダイク博士の口からサプライズがもたらされるのだが・・・・・・驚きはしたものの、ちょっと納得し難かったような。それでも一発ネタとしては悪くないのかもしれない。読了後も印象に残る作品であることは間違いない。
<内容>
医師のスティーヴン・グレイは森で一人の女性と出会った後、男の死体を発見する。出会った女性はマリオン・ダーブレイといい、父親が一晩帰ってこなかったので、心配になり探しに来たのだという。亡くなったジュリアス・ダーブレイは彫刻家であり、その死因に不可解なものを感じたグレイはソーンダイク博士に相談する。すると、ジュリアスは毒によって殺害されたことが判明する。その後、なぜかマリオンのみならず、犯人の魔の手はグレイの身にまでおよぶことに。いったい事件の発端は何なのか。ソーンダイク博士が謎を解く。
<感想>
事件が起きた後、そこから中盤にいたるまでの展開がやや地味。その中盤で、実は物語上重要な事柄が起きてはいるものの、その時点では真相をくみ取るのは難しい。しかし、中盤の登り坂を超えてしまえば、物語に動きが出てきて、あっという間に終幕までひた走ることとなる。
今作では、ソーンダイク博士の活躍がやや少なかったかなと。もちろん、それなりに登場するものの、いつもながらの博士というよりは、物わかりの良いおじさんというような印象。ただし、最後の最後では事件全体を詳しく説明し、きちんと謎を解き明かしている。
この事件、最初に起こる殺人事件に関しても、何故殺害されたのかという動機がなかなか判明しない。さらに途中の展開も何が起きていて、犯人がいったい何をしようとしているのかが見えてこない。それが最後のソーンダイク博士の説明により、もつれた糸の全てが完全にほどけ、すっきりすることとなる。
ある種、犯人の行おうとしたことは単純なのだが、それ以外に当の犯人が事件隠ぺいのために、色々と行動したためにややこしくなったという一風変わった事件であった。
<内容>
メイフィールドの友人のハロルド・モンクハウスが突然死亡した。突然といっても、もともとハロルドは体が弱く、寝たきりの生活を送っていた。とはいえ、すぐに死亡するようなことはないはずなのだが・・・・・・。ハロルドの死を知った兄の発言により、検視が行われ、その結果ハロルドは砒素で死亡したのだということが明かされた。その検視のせいで、ハロルドの家族に疑いがかかる。ハロルドの妻と幼なじみであるメイフィールドは友人達の疑いをはらすべく、ソーンダイク博士に事件の依頼をするのであったが・・・・・・
<感想>
地味ではあるものの、なかなか印象深い作品であった。
内容は毒殺事件を扱ったもの。ある男が毒殺されたのだが、誰がどのように行ったのか? というところがポイントとなる。この事件では具体的に“誰”に容疑がかけられるということはなく、屋敷に住む誰にでも毒殺が可能という状況におかれている。そういう中から、ソーンダイク博士がどのようにして犯人を指摘するのかがポイントとなっている。
ソーンダイク博士ものといえば、“科学捜査”にポイントが置かれるというのが有名なところであり、本書でもそれらの捜査が色々と行われている。しかし、本書においてソーンダイク博士が犯人に検討をつけるときには、動機の面、心理的な面から推理を始めている。その推理によって犯人を確定した後に、科学捜査によって証拠を裏付けるという手法がとられている。そういう意味では本書はソーンダイク博士ものとしては異色であるのかもしれない(といっても長編2冊、短編1冊しか読んでいないのだが)。
なかなか見るべき点が多い内容の小説ではあったが、本書はどちらかといえば中編くらいに収まるべき小説だと思われる。その内容を長編にしたために全体的に冗長かなと思われた。どうしても一つの事件だけで引っ張るのは苦しいかなと。とはいえ、書かれた年代を考えればこのくらいの内容が普通であるのかもしれないが。
ただし、なんだかんだと言っても物語としての完成度も高く、充実の内容となっているので、今年必ず読んでおいてもらいたい小説であることは間違いない。
<内容>
田舎に住む紳士、ポッターマックス氏は彼が抱えている、とある秘密のためにルーソンという男から度重なるゆすりを受けていた。ある日、ポッターマックス氏は自分の家の敷地内に古井戸を発見する。それを見て、彼はルーソンを殺害し、古井戸に隠すという計画を立てる。そして、実際にルーソンを殺害し、古井戸へと落とすことに。ポッターマックス氏の計画はうまくいったと思われたのだが・・・・・・
<感想>
はっきり言ってしまえば、“失策”といっても、ソーンダイク博士の観点からすれば、ポッターマックス氏による計画は完全にバレバレになってしまっている。ゆえに“失策”という言葉に焦点を当てるような繊細な作品というわけではない。
本書ではポッターマックス氏がとある殺人を犯し、その犯罪を一生懸命隠蔽しようとする。ただ、その隠ぺい工作を謀れば謀るほど、彼が事件を犯したという証拠を広めているようにしか見えないのである。
とはいえ、本書の重要な点はそれのみではない。このポッターマックス氏が何ゆえに、そのような事件を犯さなければならなかったのかという壮大なドラマが秘められているからである。そのポッターマックス氏が送ってきた生涯こそが本書における一番の見所ではないかと思われる。
残念ながら、倒叙ミステリとしてはさほど完成されているとは思えないのだが、一冊の小説としては読み応え充分な作品といえよう。
<内容>
秘密主義で、変わったコレクションを持つ男が突然失踪した。どうやら自動車事故を起こした後に、病院から姿を消したらしいという事はわかったのだが、その後の足取りがつかめない。ソーンダイク博士は現場に残された数少ない証拠と、その状況から、ひとつの結論を導き出す。この失踪事件の真相はいったい!?
<感想>
男が失踪しただけという、雲をつかむかのような漠然とした事件。ただし、失踪後に自動車事故を起こしているようであったり、高価だと思われるコレクションを持っていたりと(これらも漠然とした事実なのだが)謎を呼ぶ状況は残されている。遺産の執行の関係もあり、ソーンダイクン博士は事件に乗り出すこととなる。
ソーンダイク博士といえばなんといっても物証を科学的に解明するというところがポイント。今作でも、そのへんは抜かりがないのだが、どちらかというと印象に残るのは論理的な推理のほう。最後の最後になるまで事件の解明はなされないものの、ソーンダイク博士の頭の中では既に失踪事件に対する大まかな流れというものが序盤でできあがっていたのである。その解釈はなかなか説得力のあるものとなっている。
今作は登場人物が少なく、最終的に誰が犯人となるのだろうと考えながら読んでいると、こちらの考えを上回るような展開が用意されていた。また、そのアクロバット的に思える真相に関しても、既に序盤から伏線が張られており、丹念なミステリ小説の作り方がうかがえるものとなっている。
未訳作品が多い、ソーンダイク博士のシリーズ。まだまだミステリファン垂涎のお宝が眠っているように思われる。長崎出版からは、別の作品も訳される予定であるようなので、そちらも楽しみである。どんどん国内に紹介してもらいたいシリーズのひとつ。
<内容>
オールフィールド医師は、とある患者をかかえることになった。その患者はガネットという名の自称芸術家であり、妻と二人で暮らし、何故か仲が悪そうなボールズという職人と二人で実入りのなさそうな仕事をしている。ガネットがある日、突然体調が悪くなったとオールフィールドに訴えてきた。その症状に不審なものを感じ、オールフィールドは師であるソーンダイク博士に相談を持ちかける。博士に相談を持ちかけたことにより病状が判明し、ガネットは命をとりとめる。一見、これで問題は全て解決したかに見られたが、実はこの出来事がこれから起こる事件の発端だったのである。また、この事件は以前にオールフィールド医師が巻き込まれた宝石盗難事件にも関連し・・・・・・
<感想>
話の流れが面白い。最初は、宝石強盗による巡査殺害事件。それから毒を盛られるという事件へと流れ、そして本書のメインともいえる失踪事件へと流れてゆく。
本書は犯人の策略による誘導が見事にできている作品といえよう。それをソーンダイク博士が小さな矛盾点を見つけ、そこから真相への糸口を紐解いていくことになる。
ただし、登場人物が少ないゆえに、ミステリを読みなれている人であれば真相に気づく人も多いのではないかと思える。とはいえ、書かれた年代からして、推理小説の創世記の作品だと考えれば、かなりうまく描かれたミステリであるといってよいであろう。
オーソドックスながらも緻密な論理と検証で謎が解かれてゆく作品。これは間違いなく読み応えのある本格ミステリ作品である。
<内容>
「計画殺人事件」
「歌う白骨」
「おちぶれた紳士のロマンス」
「前科者」
「青いスパンコール」
「モアブ語の暗号」
「アルミニウムの短剣」
「砂丘の秘密」
<感想>
既読であったのだが、感想をきちんと書いていなかったので再読。
こうした短編作品のシリーズもので“シャーロック・ホームズのライヴァルたち”と銘を打たれた作品群があるのだが、その名に一番ふさわしいのはこの「ソンダイク博士」のシリーズではないだろうか。何よりも探偵と助手というスタイルと事件を依頼される形式が、ホームズのシリーズとかなり似たものとなっている。ただし、その事件をどのように解くのかは異なっており、ソーンダイク博士の方は科学捜査一辺倒である。ゆえに、強烈なひらめきとかはなく、かなり地道なもの。とはいえ、ホームズシリーズと違って、スパイもののような冒険作品はなく、全編事件を取り扱っているので、安定感はあると言えよう。
また、このソーンダイク博士と言えば、犯行の詳細が最初に語られるという“倒叙小説”の走りとしても有名。ただし、全ての作品を倒叙形式で書いていたわけではなく、あくまでも一部である。本書に掲載されている作品のうち、最初の3作品が倒叙小説となっている。
「計画殺人事件」はまさにソーンダイク博士シリーズの基本的作品といってよい内容。計画殺人を暴くソーンダイク博士の科学的捜査がいかんなく発揮されている。また、事件を起こした犯人の逃げっぷりも見事である。
「歌う白骨」は印象的なタイトルのわりには、内容をすっかり忘れてしまっていた。実はこのタイトルは内容にはそれほど密接しておらず、昔話のなかの歌で出てくる一文を取り上げたもの。内容は、灯台で起きた小競り合いから発展した殺人事件の謎を解くというもの。
「おちぶれた紳士のロマンス」は“ロマンス”というだけあって、一風変わった面白い展開を見せる作品となっている。悪い話になっていないところが味が出ていて良い。
「前科者」は指紋による証拠を逆手に取った事件を描いている。ソーンダイク博士の推理が光る作品。
「青いスパンコール」と「アルミニウムの短剣」はどちらも密室殺人事件を描いている。これらは両者とも探偵史に残るトリックと言えるであろう。現代的ではないのだが、その時代には先鋭的だったと思われる。このシリーズにしては珍しい内容ではないだろうか。
「モアブ語の暗号」はホームズの「踊る人形」のようなものを期待していたのだが、期待に反し普通の内容。ソーンダイク博士らしい地道な解き方。
「砂丘の秘密」はひとつの失踪事件が三段階くらいにわけられて解決されてゆくというなんともじれったいもの。最初に事件が明らかになったところから一気にもっていってもよかったと思われるのだが。
<内容>
「パーシヴァル・ブランドの替玉」
「消えた金融業者」
「ポンティング氏のアリバイ」
「パンドラの箱」
「フィリス・アネズリーの受難」
「バラバラ死体は語る」
「青い甲虫」
「焼死体の謎」
「ニュージャージー・スフィンクス」
<感想>
ソーンダイク博士が取り組む9つの事件。いかにもこのシリーズらしく安定性のある内容。謎を解くというよりも、事件に取り組むという言い方の方が合っているように思えるのもまた、検死探偵の走りといえるソーンダイク博士らしいところである。
今回の作品集では死体のすり替えというものが多かったように思えた。そういった謎を博士が検死により看破するのだが、科学的な知識のみで終わってしまうものが多かったのが残念なところ。犯人を指摘するためのロジックが欠けていた作品がちらほらと見られた。
「パーシヴァル・ブランドの替玉」は倒叙作品でもある。なんとなくバリンジャーの「歯と爪」を思い起こさせる内容。
「消えた金融業者」も倒叙作品。これまた検死のみで、結末に不満を覚える。
「パンドラの箱」は箱の中から死体の一部が見つかり、その体にある刺青について言及する内容。これまた検死ネタのひとつと言えよう。
「バラバラ死体は語る」はバラバラ死体を検証し、真実を解き明かすという内容。
「青い甲虫」は暗号もの。まさか「踊る人形」を意識した作品?
「焼死体の謎」も焼死体から見出した真相が語られるに過ぎないのであるが、法廷場面を効果的に用いて真相を明かしている。
「ニュージャージー・スフィンクス」は宝石泥棒の正体を暴く内容であるが、ソーンダイク博士が体を張って犯人逮捕に乗り出している。このシリーズでは珍しいタイプの作品か。
「ポンティング氏のアリバイ」はタイトルの通り、アリバイトリックを扱ったもの。実はこのトリック、古典本格ミステリ作品ではよく見かけるもの。しかし、年代からするとこれが一番最初に扱われた作品なのかもしれない。興味深い一品
「フィリス・アネズリーの受難」がこのなかでは一番の傑作か。「ポンティング氏〜」に対して、これもある種の機械トリックを用いたものであるが、実際にこういうものが扱われた古典本格ミステリは読んだことがない。図入りの解説を用いて、検証されている。また、法廷にて謎が解かれる場面とラストも劇的で良い。