—完璧なる三角形—
何故、生まれてきてしまったのだろう。
幼い頃はそんなことばかり考えていた。
物心がつくと共に鮮明になってゆく融機人としての記憶。
それによって蝕まれてゆく心。
気がつくと自分の周りには誰もいなくなっていた。
実際、誰かと馴れ合うつもりはなかったし、その必要も無かった。
そういった意味で、先輩は接しやすい人であったし、目標とするには充分だった。
当然、自分を実の息子として育ててくれた義父さんには今でも本当に感謝している。
だけど幼い僕にとってその優しさは、他人に自分の弱い部分を晒け出してしまうものであったし、
それこそが幼かった僕にとって最大の恐怖でもあったのだと思う。
そうして僕の心は、成長していくと共に閉ざされていった。
そんな時、義父さんが一人の女の子を連れて来た。
年齢こそれほど離れていなかったが、色々な感情に押し潰されていた少女はとても小さく見えた。
その時まだ幼かった僕は、本来なら関らないはずの少女を精一杯の笑顔で迎えた。
恐らく、心の何処かで感じていたのだろう。
彼女こそが、自分にとって唯一対等な存在なのだということを。
今になって考える。
『もしあの時君が僕の前現れなかったら』、と。
恐らく、そんな事はなかったのだろう。
これだけは自信をもって言える。
きっとどんな人生を歩んでいても僕たちは何処かで出会っていただろう。
゛不変なる三角形゛
僕は信じたい。
僕達がいつかそうなれることを。
今、君がこの戦いの先に何を見ているのか、正直僕にはわからない。
それでも僕は、最後まで君に付いて行こうと思う。
何故なら—
「僕は君の兄弟子であり、監視役なのだからな。」
END
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罪人氏から頂いたネストリ。
穏やかに歌い上げるような文体がネスの深い愛を感じさせます。
兄弟子であり、監視役であり、家族であり…そして。
調律者が、天使が、融機人が、長い長い螺旋の時を越えて
本当の意味で出会った今こそ。
最後の台詞は優しく胸に沁みます。
罪人さん、どうもありがとうございました♪
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