エッセイ 浜寺水練学校の思い出
文学学校課題 「鬼」についてのエッセイ
鬼ケ島の思い出
渚 水帆
「鬼」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは何だろうか。
まず昔話の中に出てくる鬼から挙げていこう。
昔話で思い浮かぶのは小学校の劇でもよく取り上げられる
「ももたろう」の鬼であろう。
桃から産まれた桃太郎がおじいさんとおばあさんに大切に育てられ、
大きくなってからきじと猿をお供に連れて鬼退治に行く。
この時の鬼は、都にたびたび攻めて来ては、金銀宝物を略奪して、
陣地である鬼ケ島へ戻っていく強盗つまり悪者の象徴の存在である。
私が小さい頃、父と母の田舎が四国だったこともあり、
香川県の女木島(めぎしま)という離れ島に長い夏休み田舎に帰った際に、
祖母が連れて行ってくれた。
この島は四国界隈では俗称鬼ケ島という名前で通っているだけあって、
子どもの足でも登れる高さの山の側壁に、
昔の盗賊が 宝物を埋蔵していたところという説明のたて看板を通り過ぎて、洞窟に入ると、
オモチャのような宝の箱や金銀の誰にでも分かりやすい宝物のイミテーションの前に簡単な柵がしてあり、
昔の盗賊たちはここに宝物を隠していましたと、
まだうら若い綺麗な女性のガイドさんたちが説明する。
子供心に鍾乳洞のような進路を懐中電灯を手に歩いていくのは心が踊った。
その時、小学校の低学年の中でも小さかった私だけが家族の中で、
背をかがまずに俗称鬼ケ島を探検できたのが嬉しくて、
夜も祖母にその話ばかりしていたのを思い出す。
しかし、長い夏休みが終わって、先生の「みなさんどこに行ってきましたか」という質問に、
それとなく自慢気に「鬼ケ島に行ってきた」と答えると、
今でもクラス中からひぇーっというよいからかいの対象を見つけた、
とでもいうような悪ガキ達の嘲笑の声を思い出す。
「バカじゃないの? 鬼ケ島なんか現実にないのに」
その度にあの女木島での心躍る探検は、
一歩一歩遠い夏の思い出に なっていくのである。
終わり