田園が美しいある地方都市。
窒息しそうな毎日を送る十四歳の少年にとって、
カリスマ的歌姫リリイ・シュシュだけがリアルに存在する。
「十四歳」を演じるのは、
岩井演出によってその魅力を最大限に引き出された原石の少年少女たち。
小林武史によるリリイ・シュシュのサウンドと、
田園風景を包み込むドビッシューのピアノ曲が流れるなか、
物語はインターネット、少年犯罪、イジメなど、
現代的なテーマを内包しながら、
少年の痛みと焦燥、そして内面に隠されたイノセンスを強烈に描き出す。
岩井俊二監督作品です。初めてこの監督の作品を観ました
が、いや、日本にもこんな人がいたんですねぇ。いままで「Undo」とか、「スワロウ テイル」とか、観てみたいと思うのはあったんですが、どうもいまいち踏ん切りがつか なかったというか。映画って基本的にめったに観ない人間だから「2時間半かぁ、長 いなぁ」とか思ったり。それでもこれは強烈でしたね〜。まず色彩感覚がすごい。こ の監督は絵描きだなぁと思いましたね。田園の撮り方なんかびっくりするくらい上手 い。最近「HERO」というジェット・リー主演の映画を観て、確かに週刊誌なんかでも 書かれているように、あの映画も色彩が上手く使われているのですが、あれはあくまで 物語と何らかの連動が見られるんです。「この色をどう効果的に使おうか」という監督 の(チャン・イーモウでしたっけ?)こだわりが感じられますが、これはそれとはちょ っと違うように思います。まぁ比べるのも非常に乱暴なのでこのくらいにしておきまし ょう。繊細という言葉は、ほんとうに脆くて僕はあまり使わないのですが、これは本当 に繊細。剃刀のような、鋭くて、それでいて欠けやすい、そういったものが感じられま す。そこが主人公他、14歳という少年少女の心を余すとこなく描ききってるのでしょ う。
いささか情緒的な書き方ですが、本当にそんな感じです。また演技もいいんですね。
これが。大根が一人もいない。この監督、演出、というか人を見る目の才能もたいした もんです。つい最近「バトルロワイヤルⅡ」もやってましたが、押成修吾をはじめ、 岩井俊二作品に出ていた役者たちがかなりいることもそれを物語っていますね。
ただ、僕の場合はこれ、好きだけど強烈過ぎてあまり何度も観たくない作品、という
のも否定できません。娯楽作品ではありませんが、芸術性は抜群です。心を揺さぶられ たい人にお薦め。
衝撃 ☆☆☆☆☆
独創 ☆☆☆☆
洗練 ☆☆☆☆
感性 ☆☆☆☆☆
残留 ☆☆☆☆☆
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