2000hitキリリク  「雨でよかった・・。」ハリ−+チョウ


苺子さんが「雨の日好きな人と楽しい時間」で ハリチョウでは?
とリクエストくださいました。

今日もまた雨・・・。

“もう一週間は止んでないな・・”
窓の外を見ながら ハリーはため息をつく。

この長雨のせいで ハリーの生きがいと言うべき“クィディッチ”の練習が思うようにできない。
雨はハリーの武器であるスピードを鈍らせる。

フレッドたちが叫ぶ。 
「あー!もうテンション上がらないぜ!」
「おいオリバー! 雨でバッドが滑ってブラッジャーをたたき損ねてちまう!
チェイサーに当っちまうよ!」

「もう 体が冷えてきて・・・。寒いわ。」
アリシアたちも やる気を無くす。

でもウッドは
「あのフォーメーションが 試せなきゃ次の試合には勝てないぞ!
ハリー、君は雨よりもはやく落ちてスニッチをつかめ!」
なんて もうほとんどおかしくなってる。

しかし とうとう寮長からウッドに”禁止命令”がでた。

「ウッド!大事な選手に風邪をひかせたらどうするんですか!
いいかげんにしなさい!」

ウッドはしぶしぶ従った。しかし
「おい!頭の中でイメージトレーニングを怠るなよ!」
というのを忘れなかった。


でも・・・。

“なんにもしないのって 気が落ち着かないな。”
ハリーは横でチェスをしているロンとハーマイオニーを虚ろに見ていた。

「ハリー 退屈なの?」
ハーマイオニーが聞く。

「かわろうか?」
ロンが優勢なのをいいことにハーマイオニーをみて二ヤっとして言った。

「何よ!勝ち逃げはずるいわよ!」
「じゃ、負けるのをみとめるんだ!」
「まだ わかからないじゃない!」

ハリーは この言い合いにあまり関心なさそうだ。

「うーん・・いいや。 !! そうだ!ちょっと 競技場のロッカーにいってくる!」
急に立ち上がり 駆け出した。

「何しに!」
ロンが叫ぶ。
「箒を・・・」
後は聞こえなかった。


ロッカールームにつくとハリーは自分のロッカーから箒を取り出した。

「雨で随分 艶をなくしたからな。少し手入れをしないと。それに箒を触ってるだけで
断然落ち着くし。」
ハリーは「箒磨きセット」を取り出し ベンチに腰掛け箒を磨き始めた。

柄を磨きだし 艶だしワックスを塗ろうと床に手をのばし屈んだハリーの目線の先に 
ロッカールームの少し開いたドアの隙間から 靴先が見えた。

それも どうも足の大きさから見て女の子だ。

「誰? アンジェリーナ?」

靴先は 明らかにビクッとして ゆっくりこちらを向いた。
隙間から彼女が姿を表した。

「!!! チョウ!」

そう言ってしまってから ハリーは全身が熱くなって口が利けなくなってしまった。

チョウはほわんと恥ずかしそうに笑いかけた。

「ごめんなさい。ロッカールームに来たら、獅子寮のドアから明かりがもれてて・・
のぞいたら あなたがいたの。声をかけようか どうしようかと迷ってて・・・。」
ドアの外からチョウが言った。

「・・・・・・・あの、やっぱり迷惑だった?」
チョウがすまなそうに呟く。

ハリーはやっと 我に帰り 彼女にそう言わせたことを悔やんだ。
「違うよ! 全然!迷惑じゃないよ!あー、その、それ チームメイトだと思ったから・・。」

「ごめんなさい。びっくりさせて・・・。」

ハリーは立ち上がり 大げさなほど手を左右にふり
「全然全然! ・・・よかったら 中へ・・。」
近づいてドアを開けた。

側で見るチョウはものすごく可愛い。
だからハリーは思わず目を逸らした。

胸が高鳴る。

「いいの?」
「うん・・・。」
どうぞと手を部屋の中に差し出し チョウを招きいれた。

ゆっくりとチョウが中へ歩いてく。
ハリーはドアを開けたまま 後に続いた。

チョウは ハリーの箒を見て クルっと振り向いた。
ハリーは思わず ドキッとして後ずさりした。
顔が赤くなったはずだ。ヤバイ・・・!

「箒の手入れをしてたの?」
「うん。 雨の中で乗ったから・・。」
「えーっ! すごい!獅子寮はそんなに雨での試合を想定して練習してるの?」
チョウは すごく関心したように素直に驚いてる。

「ち、違うよ! そのオリバーが熱心というか、がむしゃらというか、じっとしてられないっていうか・・。」

ハリーがチョウをチラッと見ると チョウは真っ直ぐな瞳でこっちを見てる。
ハリーはドキドキして 思わず箒を掴みベンチにドカっと座り、ワックスを掴み塗りだした。

そして あっと気が付き
「横 座る?」
と 自分をスライドさせていった。

「うん。」
チョウはちょこんと腰掛けた。

チョウは黙ってハリーの手先を見てる。

沈黙に耐えかねたハリーが
「チョウは どうしてここへ来たの?」
箒を見たまま尋ねた。

「ああ、あのね、雨ばかりでまともに箒に乗れないじゃない。練習もつまらないし。
だからなんだか箒が恋しいっていうか 触りたいっていうか 変でしょ?」
と恥ずかしそうに笑った。

「へぇ。そうなんだ。」

ハリーはなんだか 二人になってはじめてまともにチョウを見た。

それは すごくチョウが身近に感じたから・・。

ハリーも同じ気持ちだったから・・。

クィデッィチが好きで 飛ぶことが大好きだということ。

「チョウ、箒の手入れは済んだの?」

ハリーはこの距離を保ちたくて 
「よかったら ここでいっしょにしない?」
と誘った。

「いいの?」
「うん。」
「じゃ、待ってて、取ってくる!」
チョウはふわっと舞うように駆け出した。

それから チョウが戻り 二人はいろんな話をたくさんした。

チームメイトのこと。
シーカーというポジションの楽しさ、難しさ。
スニッチを見つけたときの興奮 相手との駆け引き。
ぐんぐんとスピードにのって相手をかわす瞬間の嬉しさ。
そして 高く飛んだとき 空から見る 競技場の壮観。

笑い合い、驚き合い、共感し合う。

「こんなにも 共通点があったなんて!」
チョウが楽しそうに言った。

「ほんと!びっくりしたよ!」
ハリーも嬉しそうに答える。

「「楽しかった!」」
二人同時にいって また笑い転げる。

「じゃ、今度は私の知ってる取って置きの空中散歩のコースを教えるわ。」
「ほんと!ぜひお願いするよ。」

「じゃ、約束。」

チョウは小指を差し出した。
ハリーはそっと 小指を絡ませる。
繋いだ小指が温かかった。


それは 雨がくれた楽しい時間の出来事。





続けて キリ番踏んで下さった苺子さんありがとうございます。
初めてのハリチョウいかがでしたか?
また 私の心の扉を開けてしまいましたね?(開いたのか?)
でも 書き出したら止まらず、(毎回言ってないか?)
すごく楽しかったです。
チョウは私の中では天然的な可愛さがある子なんですね。
だからなんでもさらっと言わせてしまいました。
お気に召しましたか?

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