青風緑濫’S ROOM


バームクーヘン

投稿日: 5月30日(水)12時10分14秒
わたしの心は
バームクーヘン
甘い思い出だけが
層をなしてる

もちろんそんなの
ウソにきまってる

でも
あなたに食べてほしいの

甘さばかりじゃないけど
きっとおいしいと思うよ



ブルー・サンセット

投稿日: 5月23日(水)16時45分12秒
火星の夕焼けは青いという
その青い夕焼けのさびしさを
荒れ果てた第4惑星の大地の上で
きみとふたりきりで
見ることができたら
ぼくは
もういちど
力強く生きられるような
気がする

荒地に生まれた
ぼくだから
砂漠で涙を飲み水に育った
ぼくだから
氷原に憎しみを食べて
生きてきた
ぼくだから

その薄い火星の大気が
夕焼けで青く染まる頃
穴だらけの赤い岩のかけらを
くだけるほどに握りしめ
きみとふたりで
これまでの人生の苦しみと
怒りと恨みと憎しみの
ありったけをこめて
青い夕焼けに向かって
獣のように吼(ほ)えるんだ
吼えるんだ


「マーズパスファインダー」の撮影した写真

http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/image/marspath_ss24_1.jpg

http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/marspath_images.html



木の実


投稿日: 5月14日(月)13時17分02秒
梅の木に梅の花咲く
栗の木に栗の花咲く

わが心にわが花の咲く
きみが心にきみの花咲く

梅の木に梅の実のなる
栗の木に栗の実のなる

わが心にわが実のなる
きみが心にきみの実のなる

季節がめぐれば
きっとそうなる

地に足つけて
待っていれば
花はほころび
実も熟す



イルカになりたい

投稿日: 5月10日(木)00時03分57秒
イルカはいいな
服を着なくてもいいから
海ぜんぶが
イルカの服だ



小鳥

投稿日: 5月 8日(火)02時32分36秒
小鳥のように
可愛いきみだった

そして
小鳥のように
飛び去って
しまった

ときどき
遠くで
さえずっている

その声に耳を
そばだてるけれど
きみの姿はない

きこえるのは
きみの声だけで
あとは空と街と森だけ



ひとすくいの泥

 投稿日: 5月 8日(火)02時21分32秒
ねえ、きみ
知ってるよね
人間は神さまが手にとった
ひとすくいの泥だって

そうさ、ぼくもきみも
手にとられた泥のかたまり

もしかしたら
ぼくもきみも昔
この青々とした水田の
稲を育てる泥だった
かもしれない

もしかしたら
このぬかるみの道を
車にひかれてとびはね散る
泥水だった
かもしれない

だけどそのとき
ぼくたちはきっと
幸せだった

大地から上を見上げ
トンボやイナゴや
稲を刈る人たちを
心から祝福していた
にちがいない

晴れた日には
泥水の水たまりも
空の青を限りなく
忠実に映して
喜んでいた
にちがいない



花の雨

投稿日: 5月 8日(火)02時09分13秒
どうか
私の涙に濡れた眼を
あなたのてのひらからまく
美しい花びらで覆ってください

どうか
うつむいて泣く私の頭に
野の花をふりまいてください
嗚咽にふるえる肩から
沢となって流れるほど

ただなにもいわず
私のからだじゅうに
雪のように花びらを
降りしきらせてください

なぐさめの言葉などいりません
いまは
流したりない涙の分を
花びらの雨にして
流し続けたいのです


ぼくは死んだことがない

投稿日: 5月 8日(火)01時57分39秒
死の誘惑が
心臓の裏側にある
先祖の霊達の居場所から
愉しげに呼ばう

「おいでおいでおいで」

でもぼくは耳をふさぐ
ぼくはまだ生きている
それに死んだことがない
祖先が呼ぶ理由も知らない
ほんとに呼んでいるかどうか
それすらわからない

死ねばこの現実
過去のものになる
すくなくとも
まだ生きてあとに残された
きみたちにとっては

だけどぼくは
死んだことがない
呼ばれても
下駄をつっかけて
外に出るように死ぬことは
できないよ

死ねば楽になるかもしれない
でもそれを証明してくれた人はいない
ひとりもいない
生き返って
「自殺はいいもんだよ」と
にっこり笑って教えてくれた人も
ひとりもいない

死んだ人間くらい
勝手なことをいえる奴等はいない
そのくせ
死がいいものか悪いものかさえ
ちゃんと教えてくれた人はいない
だからずるずると
ぼくみたいに
生きることになる

死者の国にいる先祖たちが
うそつきや詐欺師や
悪い奴等でないという保証もない

ぼくは死んだことがない
生きている実感をなくす事は
しょっちゅうだが
死んだことがない

おかしなことだ
ときどき
死がとても身近な
ともだちのように感じられるのに
一度も逢ったことがないのだ