この作品は私の中でまさしく『暗い』というイメージがあったのですが、この度文庫化されたのを機に読み直したら、案外2人は楽しそうでそんなに暗くはありませんでした(笑)。それにしても、アリスは事件に巻き込まれやすい体質なんですね。火村先生が傍にいてくれてよかったね〜。
 ここでもカレーが登場。しかもアリスは起きぬけに食ってます(昼食って書いてあるけど)。そんなアリスもさすがに風邪のときは食欲が無くなるらしく…羊羹食ってるし。
 私はめったに吸わない煙草を一服つけて気を鎮めてから、講義中かもしれないと思いながら、火村英生の研究室に電話をしてみる。 (P8/P9)
 ここでアリスが吸っている煙草はやはり、助教授が置いていったキャメルですよね?火村が自分の形跡をわざわざ残して行ってるの。そして落ち着くために火村の匂いがするキャメルを吸うアリス…。勝手にしてくれ。
「俺や。今朝の新聞、手元にあるか?」(中略)
「社会面下の方を見てくれ。死亡記事の右隣だ」 (P8/P9)
 私は平気だ。(中略)よくホラー小説のアイディアを練って楽しむ。そして、浴室のバスタブから何かが這い出してくる音を聴こうとしたり、二十階の窓から覗く生首を思い描いたりしては、ああ、本当にこわいホラー小説を書くのは難しいものだな、と嘆息するのだった。  (P24/P25) 
 アリスったら『平気』と強がってます(笑)。
 妄想壁を発揮している彼ですが、あなたはホラーを書かないほうがいいと思うわ。有栖川先生が書かれたのなら見てみたい。
「勝手な理屈をつける奴やなぁ。特権意識を持ってないか?」
 そういう私も、いつの間にかテープの内側に立っていた。 (P35/P37)
 あら不思議。いつの間にやらテープが私の外側に!ってあんた。 瞬間移動も出来る推理作家・有栖川有栖。
暗い宿
 あんたたちは取ってる新聞まで一緒なのか? 何新聞だろう?2人とも何誌か取っていると思っていたんだけど…。 アリスはデイリースポーツ取ってるよね?
 この後のアリスのセリフ、『最初から言うよ』が新鮮で好きvv
テキスト:ハードカバー('01.7 角川書店)/角川文庫('03.10)
「奈良の山奥でベイスターズのファンというのは珍しくありませんか?」 (P45/P47)
 大きなお世話です(笑)。それって偏見じゃん! どこにだってファンはいるんだぞ。(私の周りにもベイスターズファンはいる)  両親が下関出身だからファンっていう返事も強引だな。
「そんな温情があるんやったら、人を殺したりはせんやろう」
「する。するんだよ、人間は。それはまた別なんだ」 (P57/P60)
 確信に満ちた助教授の答え。痛いです。
 私は人を殺したいと思ったことが無いので火村の気持ちはわかりませんが、言わんとしていることは少しでも理解できたら、と思っています。 
 私一人ならば〈星のくに〉にある今度は明るい宿に投宿したいところであったが、何時になっても今日は家に帰るのだ、と火村が強く要望したので、大阪に向けて出発した。京都行きの最終電車に遅れては大変なので、私は疲れた体に鞭打って車を飛ばす。 (P61/P64)
 ざ〜んねん! 火村先生が帰るって駄々こねなければお泊りだったのに〜。
 それより、『疲れた体に鞭打って』とか恩着せずに京都まで送ってやれよ! と思っていたら↓
「このまま北白川まで送ってやるよ。そうしないと、大阪で最終電車をつかまえるのは無理や。俺が巻き込まれた事件にお前を巻き込んで、こんな遠くまで引っ張ってきたんやしな」 (P64/P67)
 あぁ、良かった。 『巻き込んだ』という意識があるのなら初めから送ってあげましょう。しかしまだ『送ってやる』という高飛車な態度(笑)。
 それにしても、天丼だけでは足りない助教授の胃もアリスに負けていません。