この作品を読むと、なぜか千里ニュータウンを思い出します。確かに大阪旅行中に読んだのですが、千里には行っていないはず…。謎。  火村はなかなか出てこないし、なんだか全体的に暗く切ないイメージをずっと持っていたので長いこと手にしていませんでしたが、今回読み返してみて火村の登場シーンに笑ってしまいました。…もう純粋には読めないのね、私(涙)。 あ、でも『私は犯罪の現場を何十と観てきました。警察がくるまでに失われてしまう証拠があるかないか、観察する能力があります』ときっぱり言い放った助教授は、ちょっとカッコいいと思いました。
「ところで、急ぎのお仕事はなかったんですか?—ああ、今さらこんなことを言うのも白々しいですね」
 彼は頭を掻く。
「それは大丈夫です。早くに起きたので、睡眠不足ではありますけれどね」 (P16/P17)
 谷邑くん、悪気はまったくないのにアリスの厭味を受ける。しょっぱなからこれでは先が思いやられます。火村からの物騒な電話は平気らしい。なんて奴だ。
 確かに、私は火村の話を少しばかりした。(中略) それはあくまでも、推理作家に犯罪学者の友人という組合せが面白かっただけであろう。 (P17/P19)
「火村…」
 まだしばらくは到着しないと思っていた男だった。(中略)そしてこちらをにらみつけるようにして尋ねてくる。
「あれは本物の死体だな、アリス?」    (P28/P34) 
 火村颯爽と登場。アリスのためなら風のように駆けつける。しかも周りはてんで無視。アリスにはピンチを救ってくれるヒーローに見えたことでしょう。(もちろんアリスはヒロイン)  『アリス』のあとに『?』をつけているあたりから、その口調が厳しいだけではないことが伺えます。
「俺も変やな、と思うてた」
「だよな? (略)」 (P38/P46)
 はぁ〜?? そんなこと他人が言ったら怪訝な顔するだろう、火村? アリスならいいのか〜? アリスに同意を求めるときの助教授は、どういうわけか可愛い言葉を発する。(『な?』とか) やはりアリスは保護者なのか?
切り裂きジャックを待ちながら
 普通、そんな友達の話をするか〜!?絶対『少しばかり』じゃないぞ。谷邑くんも気の毒に。 組合せが面白かったんじゃなくて、火村の話をする時のアリスが面白かったのに違いない。
テキスト:講談社ノベルス('99.5)/講談社文庫('02.6)
「ならば、何故そんなに興奮する!」
 負けない声で火村が叫んだ。 (P51/P64)
 お前も何故そんなに興奮する!? と思いながらも、直後の冷静さにくらくら…。いや、私はアリスが好きなのよ〜。あぶないあぶない。  このあたりの助教授は、カッコいいんだか気障なんだか…。『思い出しな』ですぜ。
夥しい返り血を浴びた火村が、その体の上にかぶさる。
「しっかりしろ。—畜生、駄目か? 鳴海!」 (P53/P67)
 火村をこんな目に合わせたくありませんでしたねー。火村の最後のセリフも切ないです。助教授、あんたいい男だよ!! 血まみれになった火村さんは、この後どうやって帰ったのでしょうか?(いろいろと妄想)  
 しかし、この作品は火村のカッコよさを見せ付けるためのものだったのか?