白昼夢
瀬名亜梨西さんからの御題は「多大な愛故に空回りして拗ねて苦悩する青島君」。
何処が多大な愛なんでしょう。空回りは私がしています。
ホントに…それってどうなの? |
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膨れ上がった黄色い太陽は僕を照らして。
貴方は僕をおいて消えてしまった。
空を被い尽くす太陽は全てを蒸発させてしまって。
かさかさに乾いてしまった大地はひび割れていた。
辺りを見渡してもなんにもなくて。
ただ、とても暑くて。
喉はカラカラに乾いちゃうし、汗はすぐに蒸発して身体中ベトベトで。
僕はぼんやりと歩いていたんだ。
室井さんは頬杖をついて僕の夢の話を聞いている。
僕をおいて消えてしまったのに。
僕は貴方になれなかったのに。
「西日が射していたからな」
どうして僕は貴方になれなかったんだろう。
暫く歩いて、僕は貴方を見付けたんだ。
太陽はあいかわらず手を伸ばせば届きそうに近くて。
僕はただ、足元に横たわる貴方を見てた。
「…死んでたのか?」
とても綺麗な顔だったんだ。
まるで眠っているかのように。
少し微笑んでいたんだよ。
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暫く僕は貴方を見てた。
そうしたらね、貴方が少しずつ溶け始めてしまったんだ。
「溶けた?」
暑かったからね。
腐乱して溶けたっていうんじゃなくて、アイスキャンディみたいに。
ゆっくりと、でも確実に。
貴方はドロドロになって溶けていっちゃったんだ。
「君は見てただけなのか」
室井さんはそう言って、少し口を尖らせた。
僕がうん、と頷くと、ほんの少しだけ悲しそうな顔になる。
太陽が僕の後ろにあってよかったよ。
正面にあったら、眩しくて見ていられないだろうし。
それに貴方は僕の影でゆっくりと溶けていたから。
影がなかったらすぐに溶けちゃったかもしれないしね。
暫くすると、ホントに貴方は全て溶けてしまって。
僕はなんだか急に寂しくなった。
眠れる森の美女の話を思い出して、溶けてしまった貴方にキスをした。
そうすれば、きっと貴方が元通りの姿になるんじゃないかと思って。
それでも貴方は溶けたまま。
もう貴方は元に戻らない。
太陽は僕をじりじりと照らしている。 |
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「それで君は起きてからふて腐れているのか」
君をおいて、私が溶けてなくなってしまったから、君はふて腐れているんだろう?
僕はううん、と首を横に振る。
あんまりにも太陽が暑いから、僕も溶けるかも知れないと思ったんだ。
だから僕は貴方の上に寝そべって。
目を閉じて貴方みたいに溶けていくのを待っていた。
溶けてしまった貴方の上で、僕が溶けてしまえば。
僕と貴方は交ざりあって一つになれるかも知れない。
そう思ったんだ。
だけど、どんなに太陽が僕を照らしても、僕はちっとも溶けていかなくて。
その代わりに地面がフライパンみたいに熱くなって。
貴方が蒸発してしまったんだ。
もう貴方の姿はどこにもなくて。
僕は悲しくて悲しくて泣いてしまった。
ポタポタ落ちる涙が蒸発していくのを見ながら僕はようやく目を覚ました。
「どうしてオレは室井さんになれなかったんだろうね」
室井さんはふわりと笑って僕を見た。
「君も蒸発して元素になれば良かったのにな」
僕と貴方が元素になって交ざりあって大気の中を飛び回る。
「もう一度眠れば、夢の続きが見れるかな」
僕が蒸発して元素になって、貴方と交ざり合う白昼夢を。
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