二つの手
らーぎーさんからのリクは
「三角関係」。
あいたた目指しました。
え?痛くないって?
あいたた…(泣)。
青×室+一×室です。
オレ達のセックスには何の意味もない。
そう言ったのは一倉だ。
ただ溜まった性欲を吐き出すだけの、何も産み出さない無意味な行為。
愛情など微塵もなく。
動物のように本能の渇望を満たすだけ。

「あんたってさあ、オレの事なんとも思ってないよね」
大きな掌が私の性器を握りしめ上下に扱く。
深く身体を繋ぎ、青島は興味の無さそうな声で問いかけて来た。
「別に、どーでもいいけどさ。オレも」
酷く身体は熱いのに、薄茶色の瞳はゾッとする程に、冷たい。
その瞳が私を捕らえる。
薄く笑って、その笑顔は氷のようで。
「カラダだけのカンケイってヤツ?」
私に対してなんの感情も持ち合わせていないのは。
お前の方だ。
「…そうだ」
お前には分からない。
お前には伝わらない。
私の気持ちなど、お前には永遠に分からない。

射精してしまえば、身体の熱など一瞬で引いていく。
セックスが終わると、青島は何事もなかったようにこの部屋から去っていく。
二つの手 「ガキみてえだな」
一倉は意地悪く笑いながらグラスを傾けた。
「そんな拗ねたガキの相手してて楽しいか?」
「別に」
酒の肴に、他の男に抱かれた話をする。
一倉は何とも思わない。
一倉も私に対して興味も執着もないから。
「ただお前に好かれたいだけじゃねえか」
「誰が」
「青島」
「まさか」
お前は本当に残酷だ、と一倉は褐色の液体を喉に流し込んだ。

「必死だな、アイツも」
一倉は私の首筋に顔を埋めて呟いた。
「なあ、アイツに言っとけよ。欲しけりゃ呉れてやるってさ」
「…俺は物じゃない」
昨日青島が付けた紅い痣の上を一倉が舌でなぞる。
無意味な行為。
行きずりの女を抱くよりも意味のないセックス。
ただ差し出された手が暖かくて。
どちらを選ぶ事も出来ず。
両方を望んだのは、欲深いこの私。
二つの手 若い頃、同じ理想を唱えた連中は。
泥水を自ら飲み干し、気が付けば私は一人きりだった。
それでも忘れる事の出来ない情熱。
ニヒリストは鼻で笑いながら手を差し伸べた。
リアリストは私を追い込みながら手を差し伸べた。
私はまるで子供のように。
その二つの手を離す事が出来ない。

「こんばんわ」
官舎に帰る道の途中、人懐っこい笑顔が私を呼び止めた。
セックスの最中には見られなくなってしまった、手放したくない笑顔。
「何か用か」
「…冷たいっすねえ。今晩泊めて下さいよ」
「疲れている。今日は帰ってくれ」
「一倉さんとしてきたから?」
そうだ、それでいい。
お前の優しい笑顔など見たくない。
私を嘲笑え。
「そうだ」
青島の冷ややかな視線を浴びて私は安堵する。
差し出された二つの手。
どちらも選べない私には。
お前を愛する資格などないのだから。
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